自分にフォーカスした楽曲「ORTUS」のMV撮影を通して変化

――グループの核にあるのは「コンプレックス」。YUIさんのコンプレックスとは?

YUI 男らしさを求められることに、抵抗があります。僕の育った地元では、強くてヤンチャな男を望む環境で、僕のおじいちゃんもそうだったんです。男らしい強さがない僕を見てガッカリされたこともあったし、幼いながらにショックでしたね。「今いる環境に、自分はどうしてもなじめない」と悩んだし、僕もそうありたいと思っていた時期もありましたけど、そうではないと痛感して情けなさも感じていました。加入のきっかけとなったスカウト時は「華奢でか弱い見た目の人を求めていた」と言われました。

――中性的なキャラクターを、自身ではどう受け止めていらっしゃるのでしょうか?

YUI 言われたときは「それはそうだよな」と思いました。大学入学と共に地元から上京したんですけど、男性として求められる要素では勝てないので、振り切って中性的に振る舞おうと切り替えたんです。そこが、大きく自分が変わったターニングポイントでした。

――自身のコンプレックスを受け入れてくれたグループへの加入を決めた理由は?

YUI スカウトされた当初は大学に通っていて、やっていける自信があったわけではなく、地に足も付いておらず話に飛びついてしまった感じなんです。就活はすでに終わっていて社会人として働き始める一歩手前で、一般的な選択肢からそれることができると、モラトリアムの延長線上のような気持ちで、飛び込みました。

――デビューからは1年半ほど。自身で変化したことは?

YUI 1stアルバム『ONE BY ONE』に収録された楽曲「ORTUS」で、自分をフォーカスしていただいたMVを制作したのはメンバーとしてのターニングポイントでした。アルバムでは全員それぞれフォーカスしていただいた楽曲がありますが、自分をメインに据えていただけるのはありえないぐらいの幸せだし、一度完成すれば半永久的に消えないので。1本のMVで自分の魅力をいかに詰め込めるかを考えて、実際の撮影でも、僕だけのシーンが多かったんです。加入当初に想像していたことが現実化して、夢見心地でもありました。それまでは、芸能経験もなく“素人が異業種の中でやらせてもらっている”と引け目がちな気持ちもあったんですけど、芸能界へ入ったと実感できたし、撮影した“あの日”の感覚をこれからも忘れないようにしたいです。

――最後、この先への目標も教えてください。

YUI 本をよく読むし、ラジオも昔から好きなので、小規模でも1人で言葉を発信する活動はしてみたいです。あと最近、人生で初めてトラックを作ったんですよ。音楽を作る楽しさが分かり、自分で披露するものを「自分で作れれば」と感じるようになって。他の方が作ってくださる楽曲とは歌にしても感情が違ってくるでしょうし、言葉だけではなく、音楽でも本音を伝えていければと思います。

Information

1st ALBUM「ONE BY ONE」
2023年8月16日リリース

公式サイト

ODDLORE

“俺は俺のままで最高だ。なんて、いつか本気で言ってみたい”。ひとりと繋がる、音楽的私小説 ODDLORE(オッドロア)。見た目、性格、家庭環境、学歴、出自、性など異なるコンプレックスを抱えたKOYA、RION、RYUICHIRO、RIKITO、JOSH、YUIの6名がスカウトによって集められ結成。音楽・MV・ドキュメンタリーなど、発表したその作品すべてが〝音楽的私小説〟として描かれ、私小説で綴られるメンバーそれぞれの想いがリスナーひとりひとりの心にも寄り添い、リンクしていく新感覚のボーイズグループ。2022年2月、EVIL LINE RECORDSよりデビュー。2023年8月16日にはメジャー1st ALBUMのリリース。

PHOTOGRAPHER:TOMO TAMURA,INTERVIEWER:SYUHEI KANKO