もともと俳優業には向いていない性格だった
――原さんは子役としてキャリアをスタートさせていますが、いつ頃からお芝居にやりがいを感じましたか。
原 小さい頃から、ちょくちょくお芝居のオーディションを受けて、作品にも出させていただいたんですが、小学1年生のときに短編映画で主演を務めさせていただいて。初めてセリフがたくさんある役をいただいて、そのときに楽しいなって思いました。
――もともと舞台度胸はあったほうですか?
原 どうですかね……目立ちたがり屋でもないですし。ただ昔は、もっと元気で活発だったかもしれないです(笑)。学校の授業でも、積極的に手を挙げるタイプでした。
――学業とお仕事の両立はいかがでしたか。
原 小さい頃からお仕事をやっていたので、習い事みたいな感覚で。学校が終わって、オーディションに行って、帰ってきて、みたいな。だから両立に悩んだことはないです。ただお仕事で迷惑をかける可能性があるので、部活は入らなかったです。本当は入りたかったんですけどね。修学旅行や林間学校など学校行事に参加できないことも多くて、それは悲しかったです(笑)。
――子役からやっていて良かったことは何でしょうか。
原 私は人よりも飲み込みが遅いので、本当に小さい頃からやっていて良かったなと思いますし、性格的にも、物心つく前から始めて良かったです。自我が芽生えてからだと、このお仕事は絶対にやってなかったでしょうね。
――どうしてですか?
原 お芝居自体は大好きなんですけど、一番になりたいとか、強い競争心みたいなのが、まるでない子どもでしたからね。芸能界に入って、少し貪欲になったとは思いますけど、もともと向いてない性格なんです。
――今は競争心みたいなものはあるんですか。
原 競争心というよりも、このお仕事でご飯を食べていかなきゃいけないので、役がもらえないことが怖いという感覚で。キャスティングしていただいたからには落胆されないように頑張らなきゃいけない、期待してもらったからには、それを裏切らないようにしなきゃいけない、次に繋げないといけないみたいな気持ちが大きくて。「負けたくない!」みたいなポジティブな感じよりかは、自分に失望しないように頑張ろうっていう感じですね。
――この世界でやっていこうと決断したのはいつ頃ですか。
原 大学進学しないことを決めて、このお仕事一本でやっていくというタイミングで、改めて覚悟が決まったというか。「これしか自分にはない!」と、よりお仕事に貪欲になりました。
――大学進学も視野に入れていた時期はあったんですか。
原 あまり私は要領がいいほうではないので、大学を一生懸命頑張りながら、お仕事も100%というのは絶対にできないだろうと思ったんです。ギリギリまで悩んだんですけど、どちらも中途半端になるなら、お仕事一本でやろうと。
――ターニングポイントになった作品は何でしょうか。
原 2020年に出演した映画『罪の声』です。今の事務所に移籍してから決まったお仕事だったので、ここで頑張らなきゃ! みたいな気持ちが強くて。感情があふれ出る役どころだったのでやりがいもありましたし、この作品でいろんな方に知ってもらえたという実感もあって、大きな転機になりました。
――この仕事でやりがいを感じる瞬間はどんなときですか。
原 出演した作品を観てくださった方と直接顔を合わせてお話できる機会が少なくて。でも『すずめの戸締まり』で全国各地の劇場を回らせていただいて、作品を観てくださった方と直にお話しして、お顔を見る機会をいただけて。「すごく勇気をもらいました」「本当に素晴らしかったです」といった言葉をかけていただいて、それが本当にうれしかったんです。ドラマや映画って、たくさんの人の心を救えるものだし、時には人生の決断を左右するようなきっかけになることもあります。私自身がそうでしたからね。だから、少しでも誰かの大切な一部になれたのかな、少しでも前向きな気持ちになってくれたのかなというのが分かったときは、すごくやりがいを感じます。