私が行き詰っているときに菅田将暉さんが役者目線でアドバイスをしてくださった

――現場の雰囲気はいかがでしたか。

原 皆さんで話し合って作り上げていく、すごくチーム感があって愛のある現場だったなと思います。一つひとつの証拠や出来事が枝分かれして、複雑に絡まって結末に繋がっていくストーリーだったので、誰が何をどこまで知っているのかを整理することが大切で。「今は、このキャラの心情的に喋るのは違うよね」とか、「このキャラに対して、立ち位置はここじゃないとよね」とか、お芝居をしていく中での小さい違和感を潰す作業を、みんなで話し合いながら進めていきました。

――撮影中に印象的だったことを教えてください。

原 狩集家が全員集まって、おじいちゃんの遺言書の内容を聞くシーンがあるんですけど、撮影は12月に岡山で行われて。外は吹雪いていたんですけど、重要文化財みたいな場所で撮影していたので暖房がなくて、とにかく寒くて、スタッフさんに20枚近くカイロを貼っていただいて、カットがかかるたびに、ダウンや毛布、レッグウォーマーなどを着させていただいて、何とか乗り切ったんです。本番でも寒くて口が回らないぐらい、寒さが印象に残っていますね(笑)。

あと整くんと一緒に階段を駆け上がるシーンがあって、ドローンで撮影したんですけど、一連で撮らなきゃいけないから結構な距離があって。汐路のほうが元気に駆け上がらなきゃいけないのに、元気さやスピードが足りなくて、何度かやり直ししたんですけど、地味に大変でした(笑)。

――先ほど汐路が分からないというお話がありましたが、理解できた瞬間はあったんですか?

原 実は最後まで分からなくて、撮影が終わった後も、ずっと「これで合っていたんだろうか……」と考えていました。初めて試写を観たときに、ちゃんと汐路に見えていたと安心したんですが、それまでは毎日そわそわしていました。

――撮影中は、ずっと悩まれていたんですね。

原 後半に汐路の感情が溢れるシーンがあるんですけど、テストの段階で押さえきれなくなって、感情を出し尽くしてしまったんです。その後、何度やっても感情が出てこなくて、トイレに駆け込んで泣いてしまいました。監督に「申し訳ないです。もう1回できる機会があったらやらせていただけたらうれしいです」とお願いしたら、スタッフの皆さんと話し合ってくださって、後日、もう1回やらせていただくことができたんです。キャストの皆さんも再び集まってくださって本当に感謝しかないんですが、そのときに主演の菅田将暉さんが「これがトラウマになったらよくないから、やりましょう」と言ってくださったんです。後日、撮影したものが本編でも使われていて。本当にキャストとスタッフの皆さんに支えていただいて、何とか汐路を演じ切ることができましたし、素晴らしい現場に入ることができて幸せでした。

――菅田将暉さんの印象はいかがでしたか。

原 まず「整くんがいる!」って思いました(笑)。二人でのやり取りが多かったので、ずっと間近でお芝居を見させていただいて、勉強させていただきました。私が行き詰っているときは、菅田さんが役者目線でアドバイスをしてくださって。現場を俯瞰して見てくださっているんだなと感じました。

――改めて映画の見どころをお聞かせください。

原 ドラマを観ていたときから、物事の多角的な見方や、当たり前に受け入れていたことに対して「なぜ?」と考えるきっかけをくれる作品だなと思っていて。整くんの押し付けがましくない言葉がすっと心に入ってきて、すごく救われた気持ちになるところが大好きで、その久能節が存分に堪能できます。原作でも人気の広島編ということで、ドラマ以上にスケールも大きくなって、豪華な映像も楽しんで観ていただけたらうれしいです。

――今後こういう仕事にチャレンジしたいみたいな目標はありますか。

原 具体的にこういうものがやりたいというよりは、目の前の作品に向き合って、自分にできることを一つ一つ丁寧にやって、気づいたらおばあちゃんになっていた、みたいなのが理想ですね。

Information

『ミステリと言う勿れ』
大ヒット上映中!

出演:菅田将暉
松下洸平 町田啓太 原菜乃華 萩原利久 柴咲コウ

原作:田村由美「ミステリと言う勿れ」(小学館「月刊フラワーズ」連載中)
監督:松山博昭
脚本:相沢友子
音楽:Ken Arai
製作:フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

Ⓒ田村由美/小学館 Ⓒ2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

天然パーマでおしゃべりな大学生・久能整(くのうととのう/菅田将暉)は、美術展のために広島を訪れていた。そこで、犬堂我路(いぬどうガロ/永山瑛太)の知り合いだという一人の女子高生・狩集汐路(かりあつまりしおじ/原菜乃華)と出会う。「バイトしませんか。お金と命がかかっている。マジです。」そう言って汐路は、とあるバイトを整に持ちかける。それは、狩集家の莫大な遺産相続を巡るものだった。当主の孫にあたる、汐路、狩集理紀之助(かりあつまりりきのすけ/町田啓太)、波々壁新音(ははかべねお/萩原利久)、赤峰ゆら(柴咲コウ)の4人の相続候補者たちと狩集家の顧問弁護士の孫・車坂朝晴(くるまざかあさはる/松下洸平)は、遺言書に書かれた「それぞれの蔵においてあるべきものをあるべき所へ過不足なくせよ」というお題に従い、遺産を手にすべく、謎を解いていく。ただし先祖代々続く、この遺産相続はいわくつきで、その度に死人が出ている。汐路の父親も8年前に、他の候補者たちと自動車事故で死亡していたのだった……。次第に紐解かれていく遺産相続に隠された<真実>。そしてそこには世代を超えて受け継がれる一族の<闇と秘密>があった。

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原菜乃華

2003年8月26日生まれ。東京都出身。子役としてキャリアをスタート。ドラマ、映画、バラエティなど幅広く活躍。2022年、アニメ映画『すずめの戸締まり』で声優初挑戦にして主演の岩戸鈴芽を演じて話題を呼ぶ。10月30日、ファースト写真集『はなのいろ』(KADOKAWA)を発売予定。主な映画出演作に『罪の声』(2020)、『胸が鳴るのは君のせい』(2021、『ヘルドッグス』(2022)など。

PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:馬場麻子,STYLIST:山田安莉沙