自分の性格を考えて、給料制ではなく歩合制の仕事をしようと思った

――体育の教員を諦めた後は、どういう進路を考えていたんですか。

三浦 大学の専攻に精神保健福祉というのがあったので、精神保健福祉士になる方向に進路変更しました。ただ精神保健福祉士も、いつも相談していたゼミの先生に「そのやり方をやってしまうと続かないし体も壊すから、おそらく向いていないね」と言われたんです。

――向いていないというと?

三浦 仕事として精神保健福祉士をやるなら、心の病や悩みを抱えた人に対して、一つ壁を置かなきゃいけないんです。たとえば「電話番号を教えるから、いつでも困ったらかけてよ」みたいなことをしてしまうと、仕事としてしては成り立たないですよね。精神保健福祉士になるための実習にも行ったんですけど、その壁を置くのが本当に難しくて、どこを壁にしていいのかすら分からない。ゼミの先生自身が精神保健福祉士で、僕みたいに壁を置くことができずに体調を崩して辞めていった人たちをたくさん見てきたので、その経験からアドバイスしてくれたんですよね。仕事にしなくても別の形で関わることもできるから、一旦就職は考えようと思って、大学を卒業してニートになりました(笑)。

――就職しないことの不安はいかがでしたか?

三浦 大きかったですね。うちの大学は就職率がめちゃくちゃ高くて、99%とかなんですよ。僕は1%側だから不安でしたね。みんなは就職しているのに、自分は一体何をするんだろうと……。趣味が写真を撮ることだったので、カメラの専門学校に行こうかなとか、それとも就職しようかなとか、いろいろな選択肢を考えたんです。ただ自分の性格を考えて、給料制じゃないところにしたいと思ったんです。やるんだったら歩合の仕事だろうと。

――どうして給料制だとダメだと思ったんですか。

三浦 自分の性格上、頑張らなくても給料をもらえるなら、クビにならないギリギリ程度の仕事しかしないだろうなと(笑)。僕は危機感がないといけないんだ、仕事をしないと1円ももらえないみたいな状況じゃないと続かないなと思って、歩合の仕事を探し始めたんです。それで俳優という選択肢が浮かびました。

――学生時代から、お芝居に興味はあったんですか?

三浦 全くなかったです。ただ父親が俳優なので、選択肢としては近いところにあったんですよね。それに僕は始めると、めっちゃ一生懸命やるんですよ。その辺の性格も自覚していたので、この世界に飛び込みました。

――お父様と同じ仕事をするプレッシャーはなかったですか?

三浦 学生のときに比べたら全然ですね。学生のときはお芝居をやっていないのに、「あいつの息子なんだろう」みたいな目で見られることもありましたから。俳優を始めたら、比べられるのは当たり前ですし、「同じ仕事だからしょうがないよね」と割り切ることができました。

――最後に改めて「東京貧困女子。-貧困なんて他人事だと思ってた-」の見どころをお聞かせください。

三浦 僕が初めて本を読んだときに思ったように、貧困は身近にあるんだというのを感じてほしいですし、ドラマを観て、そういう問題を考えるきっかけになってほしいです。そればかりだと重苦しい見方になってしまいますし、みなさんの演技は素晴らしいので、まずは先入観なしで観てください。

Information

連続ドラマW-30
「東京貧困女子。-貧困なんて他人事だと思ってた-」
11月17日(金)午後11:00放送・配信スタート

【放送】毎週金曜午後11:00[第一話無料放送]【WOWOWプライム】
【配信】各月の初回放送終了後、同月放送分を一挙配信
【WOWOWオンデマンド】

<スタッフ・キャスト>
原作:中村淳彦『東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか』(東洋経済新報社刊)
脚本:高羽彩 監督:青木達也 遠藤光貴 音楽:田渕夏海
主題歌: THE YELLOW MONKEY 「ホテルニュートリノ」(ワーナーミュージック・ジャパン)

出演:趣里 三浦貴大
霧島れいか 宮澤エマ 田辺桃子 安斉星来 東風万智子
金澤美穂 高田夏帆 樋井明日香 三浦獠太 梅舟惟永 川島潤哉 柿丸美智恵
淵上泰史/高橋ひとみ

企画・プロデュース:大木綾子
プロデューサー:小髙史織 遠藤光貴
制作協力:ザ・ワークス
製作著作:WOWOW

雁矢摩子(趣里)は離婚を機に復職し、経済誌の契約編集者に。編集長からPVを稼ぐために“女性の貧困”がテーマの連載担当を命じられる。風俗ライターの﨑田祐二(三浦貴大)を紹介されるが、彼の貧困当事者への姿勢に苛立ち、取材方針をめぐって衝突する。そんな中、国立大学医学部に通うため風俗で食いつないでいる広田優花(田辺桃子)へのインタビュー記事が炎上。一見すると矛盾をはらむ優花の記事。摩子は祐二の反対を押し切り、謝罪と記事の削除を優花に伝えるが、本人の思わぬ言葉に、自身の浅はかさと偏見を痛感する。そしてライターとしての祐二の覚悟を感じた摩子は、肉親の介護、親からの性的虐待、苛烈なパワハラ・モラハラ被害、再雇用の実情、戸籍と就学の問題など、生きることへの困難さを抱える様々な境遇の当事者への取材を共に重ねていく。それは同時に、不安定雇用のもと子育てに奮闘する摩子自身も、“貧困”が他人事ではないという自覚につながっていき……。

公式サイト

三浦貴大

1985年11月10日生まれ。東京都出身。2010年、映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』で俳優デビュー。近年では映画『流浪の月』(22)、『キングダム 運命の炎』(23)、『Winny』(23)。ドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』(22)、『CODE-願いの代償-』(23)等に出演。

PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:KEN TANAKA(RIM),STYLIST:Hiromi Wakui(091 Style Office)