前回のツアーでは憧れのサンボマスターをカバー。ギターを抱きしめたくなる感覚に
――続いて、3曲目『涙の国』。この曲は、ドラマ「瓜を破る~一線を越えた、その先には」のエンディングテーマですね。
吉澤 ドラマのお話をいただいて、原作の漫画を読みました。夜に、何気なく第1巻を手に取ったんですけど、本当に面白くて朝までかけて、最新巻まで読破しちゃって…。ちょうど製作期間だったこともあって、新しい作品のインプットっていうのがなかなか出来ていなかったんですけど、久しぶりに物語に夢中になる喜びを感じながら読みました。本当に一番最近出来た曲で、勢いよく書けた1曲です。
――4曲目の『オートバイ』では、どのような青春を描いていますか?
吉澤 このEPの中でも、特に物語性の強い曲で、私の中で物語が映像として浮かんでいる曲なんですけど、イメージ的には映画「耳をすませば」のようなニュータウンに住んでいる15歳ぐらいの女の子が、2歳ぐらい年上の不良の先輩のバイクの後ろに乗って夜の街を走って、その一夜のドキドキした気持ちを持ち帰るみたいな曲です。主人公達がすごく若いので、中二的な、ちょっとかっこつけた言葉選びをしてみました。
――5曲目の『魔法はまだ』は、YUKIさんに提供した曲のセルフカバーですね。
吉澤 私のメロディにYUKIさんが歌詞を乗せてくださった曲なんですけど、YUKIさんのライナーノーツに「女子高校生同士の恋の物語です」って書かれていたので、今回の『六花』に入れたいなって思いました。青春感が溢れている曲なので、歌うなら今だ!と思ってセルフカバーさせていただきました。とてもお気に入りの曲で、自分には書けない歌詞だなと思って、うっとりしてしまう曲だったので、いつかセルフカバーしたいと思っていました。
――そして、『六花』の最後を飾るのが『ゆとり』という曲です。
吉澤 これは、大学を卒業する時に書いた曲です。私が通っていた大学は、入学した時のクラス単位で授業を受けることが多かったので、クラスメイト感っていうのを初めて感じたのが大学生だったんです。それで、すごく楽しかった学生生活の最後の最後に、名残惜しくて、そんな私達を結び付けていた共通点って「ゆとり世代」だなと思ったりもして、『ゆとり』っていう曲を書こうと思ったんです。
――実際に、友達に向けて書いた曲だったんですね。
吉澤 そうですね。そう言えば、前作『若草』に『夢はアパート』っていう曲を入れたんですけど、「生のお魚が食べられないあなたが旅立つ」っていう歌詞の旅立った友達が一時帰国で日本に帰って来て、みんなで集まった時に「大学を卒業した時に書いた『ゆとり』って曲をレコーディングしたんだ」って言って、みんなに聴かせたら、1人でボロ泣きしちゃって…。そしたら、生のお魚を食べられなかった友達も一緒に泣いてくれて、なんかすごくエモーショナルでしたね。みんなで「これがエモいってやつだよ」とか言って…。こうして、改めて考えると、『若草』にも『六花』にも個人的なエピソードがいっぱい入って来ていました。
――では、ここからは、ライブについて聞かせてください。前半でも出ましたが、同世代のバンドメンバーと回った『若草』のツアー、改めていかがでしたか?
吉澤 もう、楽しいことしかなかった感じでしたね。高校生の頃に先輩から3万円で買ったギターで、憧れのサンボマスターをコピーするっていう…なんか文化祭みたい感じもありました。ギターを抱きしめたくなるような感覚というか。
――中でも、特に印象に残っている会場はどこですか?
吉澤 やっぱり、ファイナルの福岡ですかね。一番楽しかったかもしれないです。なんか、天井が無かったというか、楽しさに。どんどんどんどん楽しくなっていって怖いぐらいでした。
――でも、一方で、ツアーが終わってしまうという寂しさもあったのではないですか?
吉澤 そうですね。でも、その時はまだ『六花』の制作が終わっていなかったので、ツアーが終わったら割とドライでした(笑)。すぐに、締め切りに向かってレコーディングをやっていましたね。もうちょっと浸りたかったんですけど…。