バレエをやっていたので自分の考えていることと体が連動しやすい
――ナオキを演じる上で特に苦労した点は何でしょうか。
倉沢 普段の私とナオキでは、人と会話するときの感じが全く違うんです。私は人と話すことに楽しさや喜びを感じるんですが、ナオキはなるべく人との関りを避けてきて、人と目も合わせられないタイプ。全く自分と違うからこそ役に入り込みやすい部分もあれば、上手く役に落とし込めない難しさもありました。ただ私も心の内をさらけ出した生身の状態でコミュニケーションを取るのは緊張するので、そこはナオキに似ているのかなと思って。私も本心を出すとか、悩みやつらいことを誰かに相談することは、あまり得意ではなくて。そういった共通点を意識してナオキと向き合いながら台本を読んでいくうちに、いつの間にか自分と向き合うような感覚に陥りました。そういう意味でも成長させていただいた作品です。
――撮影期間はどれぐらいだったんですか。
倉沢 約3ヶ月ぐらいです。こんなに長く撮影したのは初めての経験で、クランクアップで初めて泣きました。クランクインする前にマネージャーさんから、「途中でしんどくなるだろうから、あんまり気負わずにやったほうがいい」という言葉をいただいたんです。だから、壁にぶつかる覚悟で現場に入ったんですけど、たくさんの方に支えていただいて、温かく受け入れてくださったので、そういう瞬間がなくて。何事もなく終われたのが自分でもびっくりでしたし、それだけ恵まれた環境で撮影させていただいたんだなと、ひしひしと感じました。
――壁にぶつかることは一切なかったんですか?
倉沢 大きな壁というよりかは、シーンごとに壁みたいなものもありました。たとえば泣きのお芝居を初めてカメラの前でやったんですけど、ついつい感情を出し過ぎちゃうんですよね。ただ納得のいかないシーンがあったときは、吉田さんを始めスタッフの方々が寄り添ってくださって、もう一回やらせていただけたんです。壁にぶつかりそうになったときは、常に導いてくださる方たちが周りにいてくださったのも大きかったですね。
――ここからはキャリアについてもお伺いしたいんですが、5歳からクラシックバレエをやっていたそうですね。
倉沢 中学生までやっていました。始めたきっかけは母がバレエの体験レッスンに連れて行ってくれたことで、それを見て自分から「やりたい」と言って、始めさせてもらいました。
――小さい頃から踊ることが好きだったんですか?
倉沢 体を動かすのは好きでしたね。あと幼稚園のときに、母が『ハイスクール・ミュージカル』(06)というアメリカのミュージカル映画を見せてくれて、そこから大きな影響を受けたんです。踊りもそうですし、歌もそうですし、あと英語にも興味が湧いて。よく妹と車で『ハイスクール・ミュージカル』のサウンドトラックを流しながら大熱唱していました(笑)。英語を学ぶ前から、そういう遊びをやっていたおかげか、成長してから英語の発音を褒めていただくことが多いんです。
――映画もお好きだったんですか?
倉沢 ディズニー作品を中心に、映画は大好きです。『ハイスクール・ミュージカル』と同じケニー・オルテガ監督の『ディセンダント』(15)も大好きで、自分を解放するような作品に感銘を受けます。バレエも舞台の上に立って、大きく体で表現するので、そこに楽しさを感じましたし、それを見て喜んでくれている家族や周りの方たちの反応を見るのも大好きでした。
――相当バレエに打ち込んでいたんですね。
倉沢 中学生まで8年間やっていて、ほぼ毎日、週6,7でバレエに通っていました。ちっちゃい頃の夢はバレリーナだったんですけど、途中で挫折してしまって。それでバレエから離れたタイミングで、学校の生徒会に入ることになりました。
――自分から入ったんですか?
倉沢 同じクラスで仲の良いお友達と、小学生の頃からクラスの役員をやっていて、「中学の生徒会に入っちゃう?」みたいなノリで入りました。
――学校で壇上に立つこともあったんですか?
倉沢 朝会でみんなの前に立って挨拶をしていました(笑)。生徒会は会議が楽しくて、何もないところから形にしていく作業が面白かったんです。卒業式のときは、3年生を送り出すために、みんなで遅くまで残って会議をして、廊下を飾り付けして。そういう作業にやりがいを感じていました。
――中学時代から、みんなでもの作りをするのが好きだったんですね。バレエをやっていて、お芝居で活きていることはありますか。
倉沢 自分の考えていることと体が連動しやすいので、「上手く体が動くね」と褒めていただきますし、自分でもそう感じることがあります。あと思いきり感情を出すことって抵抗があると思うんでけど、割と私は最初から平気で。バレエもストーリー性があるので、物語にどっぷり浸かって、その世界に入るというのは、ちっちゃい頃からやっていました。そこは過去の自分に感謝ですね。