普通だからこそ見えない感情が多くて、気持ちを汲み取るのが難しかった

――『札束と温泉』は沢口さんにとって映画初主演となりますが、オファーがあったときのお気持ちはいかがでしたか。

沢口愛華(以下、沢口) 最初に聞いたときは、「お仕事で別府に行けるんだ!」「年末に撮影ということはバケーションだ」という楽しみな気持ちが先走りました(笑)。でも、よくよく考えたら主演か……と。ほとんど演技経験もなかったので、どうして私が選ばれたんだろうというのが率直な気持ちでした。

――高校の修学旅行で訪れた温泉宿に来た女子高生たちが、札束の詰まったバッグを発見したことをきっかけに、様々な事件が巻き起こるコメディですが、初めて脚本を読んだときの印象はいかがでしたか。

沢口 予測不可能な展開が続くのが面白かったんですけど、どういう映像になるのか想像がつかなかったです。あと普通の登場人物が一人もいないなと思って読み進めていたら、「いや、一人だけいるな」と。それが自分の演じる⾼梨リサで、普通だからこそ見えない感情が多くて、気持ちを汲み取るのが難しかったです。

――リサを演じる上でどういうことを意識しましたか。

沢口 監督から、「主役だから観客を惹きつける人にならなきゃいけない。そのためには魅力も必要だし、普通の感性を持っていることも必要だよね」というお話をされて、難しいなと思いつつ、リサはお姉さんで面倒見が良くて、ちゃんと正義を持っている人だから、割と私に似ているなと感じたんです。ただ、リサを自分に近づけて演じていいものかという怖さもありました。それだと自分になっちゃうし、どうやって役に歩み寄っていけばいいのかが難しくて。リサの深層心理まで台本には書かれていないから、監督のイメージに近づけるのに苦労しました。

――こうしてお話ししている沢口さんは快活な印象ですけど、リサは落ち着いた女性ですよね。

沢口 どちらかというと普段はリサに近いしゃべり方です。無意識にオンとオフを自分の中で分けているっぽくて、今はインタビュー中だから仕事脳でしゃべっていると思うんです。グラビアを始めてからインタビューをしていただく機会が増えて、もともとおしゃべりは好きなんですけど、もっとインタビュアーの方に質問をしたくなるようにしなきゃいけないって思うようになったんですよね。目立つのは苦手なんですけど、興味は持たれたいと強く思っているから、ハキハキとしゃべるようになったのかな。

――リサを演じているときは、そこまで意識して口調を変えた訳ではないんですね。

沢木 そうですね。今回の作品は長回しで、ワンカットで撮ると事前に言われていて。きっと、そういう撮り方でリアリティや臨場感を表現したいのかなと考えたときに、作り込み過ぎると不自然に感じてしまうのかなと思ったんです。それに他のキャラクターがおかしな子ばかりで、それを引き立たせる意味でも、私は自然体でいたほうがいいのかなと。ただ最初に私が持っていったリサは、「暗すぎるから、もっと人間味が欲しい」と監督に言われました。そういう監督の言葉や、温かみを足していって、徐々にリサを作り上げていきました。