恋愛作品を打診されるも迷いと苦労が「恋愛経験がないので、0から100まで想像」

――著書は、自身初の小説集『きらきらし』(新潮社)に続く2冊目。手がけた物語が世に出るのはmonogatary.com presents 恋愛アンソロジー『最低な出会い、最高の恋』(ソニー・ミュージックエンタテインメント)内で寄稿した「羨望」も数えると通算3作目で、作家としての自信も付いてきたのではないかと思います。

宮田愛萌(以下、宮田) 全然、付かないんです。今も「小説家」といわれると「はい、一応…」とひと呼吸置いてしまって、ようやく少しずつ「小説を書いています」と言えるようにはなってきました。作品を「読んだよ」と言っていただく機会が増えたのはうれしいんですけど、ドキドキです(笑)。

――自分で「小説家」と名乗る気恥ずかしさもありますか?

宮田 多少は。だから、自分から積極的には名乗らず、他の方が言ってくださった肩書きをそのまま使っています。でも最近、初対面の方に「何のお仕事をされているんですか?」と聞かれて、初めて自分から「タレントと小説家です」と言ったんです。『あやふやで、不確かな』の発売が情報解禁されたあとでしたし「今なら言えるかも」と思って、勇気を出しました。

――アイドルグループ卒業時に出版した前作『きらきらし』では、万葉集をモチーフにした青春模様を、今作の『あやふやで、不確かな』では一変して「コミュニケーションの難しさ」をテーマに、4人の主人公による恋愛模様をオムニバスで描きました。

宮田 最初に「恋愛を描きませんか?」とお話をいただいて「恋愛かぁ…」と繰り返し考え、生まれたのが今作でした。人間には色んな面があるし、本人にそのつもりはなくても、見る人が変われば絶対に違う面が見えてくると思うんです。当初は主人公の1人である冴はほんの少し登場するだけで、周辺の人たちを中心に描こうと考えたんですけど、プロットを考えるにつれて今の形になりました。

――王道のキラキラとした恋愛模様ではなく、身近に“ありそう”と思わせるリアルな作風が印象的でした。

宮田 恋愛経験がないので、0から100まで想像なんです。だから、リアルとおっしゃっていただく機会が多いのはうれしいし「そう受け止めてくださるんだなぁ」って。でも、自分の夢もいっぱい詰め込んだつもりです(笑)。

――前作では、物語の裏設定として登場人物の「時間割」まで考えたと聞きました。今作でも、キャラクター設定に強いこだわりがあったのではないでしょうか。

宮田 登場人物の大学時代を描くため、母校(國學院大學)に大学生向けの物件情報や、就職パンフレットをもらいに行きました。他にも、専門学校の描写のためにパンフレットを取り寄せて学科の内容を調べたり、主人公の1人である智世は「留学したい」と思っていた過去がある設定を考えていたので、留学についてもけっこう調べました。

――会社員の登場人物もいます。現実を参考にしながらも、想像をベースに作品を描くのは大変そうです。

宮田 未知の世界ばかりで、大変でした。でも、「自分が想像できるものは他の方も想像できるはず」と思っているんです。会社で働いているとしても、実際の勤務先以外は転職しなければ分からないし、業種が異なればやることも違うでしょうし。現実と離れた表現であっても「よその会社はこうかな?」と、納得してもらえるはずという希望を胸に、頑張って書き上げました。