頭の中で登場人物が演じ出す「バッチバチにケンカしながら。結局『勝手にそのまま書くよ!』と」

――執筆から完成までは、どれほどかかったのでしょう?

宮田 実際は4ヶ月ほど、第1話から第4話までを順番に書きました。中でも一番苦労したのは第1話の「成輝」で、2ヶ月半ほどかかりました。登場人物と分かり合えなくて、行動の意味が分からずに「私は何を書けばいいの?」と迷ってしまったんです。

――書きながら、頭の中で登場人物が動くんですか?

宮田 頭の中にいる役者に登場人物の設定を渡して、役づくりをしてもらい「よーい、スタート」で演じてもらうイメージです。

――面白い。最初の物語では、思い通りに演じてくれなかったと。

宮田 はい。彼らに「どういうこと?」と聞いても「分からない」と返ってくるような感覚で「それを聞いてるんです!」と、バッチバチにケンカしながら。結局「勝手にそのまま書くよ!」と、強引に書き進めました(笑)。

――想像しやすさにも、気を配っていたのかなと思いました。例えば、先ほどのお話にあった「成輝」での一節「流行りのキャラが頑張れと言って応援しているようなスタンプ」は、誰もがそれぞれの頭にある「流行りのキャラ」を思い浮かべやすそうでハッとしました。

宮田 具体的な描写が必要な場面以外では、それぞれの経験に沿って想像してもらえるように書きました。でも、登場人物の人間性はみなさんに共通して、伝わるようにとも考えています。例えば、「流行りのキャラ」と書くと想像するキャラクターがバラバラでも、同時に「流行りのキャラのスタンプを使う登場人物なんだ」と伝わると思うんです。小説を読むのは今とは限りませんし、来年、再来年に読む方もその時々の「流行りのキャラ」を想像できるように、表現したという狙いもあります。

――苦労や工夫もありつつ無事に完成して、小説家としての手ごたえもありそうです。

宮田 まったくなくて、不安で仕方ないです。でも、読んでくださった方から「ここがよかった」「リアルだった」と言葉をいただいて「よかった。伝わった」と少し、安心しました。完成したら私にはどうしようもないので、読者のみなさんにお任せします。それでようやく作品が完成しますし、できる限りの全部を出したので、私自身は、自信を持ちたいです。

――次回作も期待しています。

宮田 今は青春作品を書いていて、その次は恋愛作品を手がけたいと思っています。王道でまっすぐ、胸キュン路線の恋愛小説を書きたいんです。実は、第2話の「智世」は少女漫画の小説版のイメージで書いたのですが、友だちから「デートで国立科学博物館には行かん」と言われたし、理解されない場面が多いみたい。みなさんに分かりやすくキュンしていただける作品を書きたい…というより、書きます(笑)。