デカルトの言葉「我思う、故に我あり」が原点に「文字で残すことを大事に」

――宮田さんの「書く」へのこだわりが気になります。Webラジオ『文化部特派員「宮田愛萌」』(ニコニコチャンネル、YouTube)では「嫌なことがあっても『それでもこの感情を小説に残したい』」と語るなど、自身の哲学があるのではと思いました。

宮田 まず、自分の核に「我思う、故に我あり」があって、考えるのをやめたら「私は私ではなくなる」と思っているんです。そして、人に伝えないと「ないことと一緒」ですし、人が観測できなければ「そのものがあるかを証明できない」と考えていて、人に伝わる文章、人が思い出せるものを書いて残したいとの思いから、文字で残すことを大事にしています。…なんだか、本当に哲学の話になってしまった(笑)。

――核となる「我思う、故に我あり」は、哲学者・デカルトの言葉ですね。

宮田 中学時代、フランス語の教科書で見て納得したんです。昔から考えるのが好きで、自分が自分であることは「どうすれば証明できるだろう?」と思っていたときに「私が自分の意思で考えているから、ここにいると自信を持って言えるんだ」と気が付きました。

――中学時代とありましたが、当時から現在と同じく文章を書いていたのですか?

宮田 45分ある授業時間中にルーズリーフ1枚の条件で、休み時間に3人の友だちからもらったテーマに沿って「三題噺」を書いていました。まあ、サボっていたんですけど…(笑)。最初から最後までビッシリと、意外と時間内でピッタリ収まるように書けたんです。

――すごい。豊かな想像力の原点も伺いたいです。

宮田 幼い頃から、想像するのは得意でした。一人っ子で遊び相手がいなかったので、小学校時代には自分とそれ以外の人格を作って、みんなで遊んでいる“体”で“独り人生ゲーム”も楽しんでいたんです。男女問わずに異なる人格をすべて自分で演じて、お金を受け渡しながら「ちょっとやめてよ〜!」と口に出してみたり(笑)。だから今も、物語を作ることに抵抗はなく、文字に変えるだけなので当時のような“遊びの延長線上”にあるものとして、楽しんでいます。

――そんな経験も役立っているのか、発信も様々です。インスタグラムではエッセイ風に、Xでは「みんなー」とフォロワーに呼びかけるなど、親近感ある表現をしていて、意識的に使い分けている印象です。

宮田 インスタは公式で、Xは非公式の“体”でやっているから、好き勝手につぶやけるんです。インスタでは「宮田愛萌って、どんな人?」と検索してくださった方に「オシャレ」と思われたくて(笑)。でも、中身は違いますし、Xでは重要なつぶやきはしっかり書きつつ、ゆるいつぶやきでは友だちに「しゃべらん?」と問いかけるような、教室で黒板の前で立って「ねえ、みんな〜!」と叫ぶ感覚で書いています。

――2024年4月9日には公式YouTubeチャンネル「ゆるっと ふわっと い~かんじ。」を開設。活躍を見られる場も、ますます広がっています。

宮田 チャンネル名の通りに、ゆるく続けていけたら。最初、開設の予定はなくてフワッと「じゃあ、やりますか〜」ぐらいのノリで、スタッフさんと話しながらはじまったんです。初回アップ日も知らずに、実際の動画では「チャンネル登録」と言えずに噛んでしまったNGカットも採用されたほどのゆるさで(笑)。今は、書くことへの興味が強いんですけど、YouTubeを通して、本にまつわる発信もしていきたいです。本の選び方とか、日本文学へのススメとか。私を何となく追っていたら「本のことも好きになっちゃった」と言ってくださる方が現れるように、画策していきます。

Information

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宮田愛萌

1998年4月28日生まれ、東京都出身。2023年、アイドル卒業時にデビュー作『きらきらし』を上梓。現在は文筆家として小説、エッセイ、短歌などジャンルを問わず活躍。

PHOTOGRAPHER:TOMO TAMURA,INTERVIEWER:SYUHEI KANEKO,HAIR&MAKE:KIYOSHI AIBA