『ハピネス』に主演したことは生涯自分の財産になる
――由茉と雪夫は、いろいろな場所でデートを重ねますが、特に印象的なシーンはどこでしょうか
窪塚 井の頭公園で雪夫が由茉ちゃんにキスをするシーンです。映画の中には何度か井の頭公園が出てきますが、その日は天気が良くて、すごく池が綺麗でした。気温は低かったのですが、日が当たって心地が良くて、思い出に残っています。
――オファーがあったときは豪華なメインキャストにビビったと仰っていましたが、現場ではいかがでしたか。
窪塚 雪夫の姉役の橋本愛さん、由茉ちゃんの両親を演じた山崎まさよしさんと吉田羊さん。皆さんに共通して言えるのは、俳優としてはもちろんですが、そもそも生まれついての輝きが備わっていて、そこに圧倒されました。吉田羊さんに抱きしめてもらうシーン、山崎まさよしさんに背中を押してもらうシーン、橋本愛さんに「行ってらっしゃい」と肩をポンと叩かれるシーン。どれも一瞬の触れ合いですが、全身に皆さんのぬくもりがこもるんです。そのときに言葉では言い表せない感情や、台本には書かれていない感情が伝わるんです。それはお芝居を超えた領域かもしれません。無理にお芝居をしなくても、勝手に体が演じてくれているようなシチュエーションに皆さん持って行ってくださったので、自然と涙が出ましたし、すごく助けられました。
――初めて完成した作品を観たときはいかがでしたか。
窪塚 映画館と同じ環境のスクリーンで観させていただいたのですが、エンドロールで自分の名前が出たときに泣きそうになりました。このまま終わってしまうのが勿体なくて、なかなか席から立てなかったです。こんなに素晴らしい作品に出演させていただけたことは、必ず生涯自分の財産になるはずです。篠原監督を始め、スタッフの方々、共演者の皆さんに感謝の気持ちでいっぱいになりました。
――最後に改めて映画の見どころをお聞かせください。
窪塚 『ハピネス』という作品は、それぞれの答えがあっていいと思うんです。何が正解ということはないですし、誰の目線で観るかによって答えも変わると思います。お客様が感じたことこそ正解なんです。僕は初めて脚本を読んだときに受け止めきれなかったものを表現するために、できる限り現実味のあるお芝居をすることで、雪夫なりの由茉に対しての優しさを全力で注ぎました。その優しさは、他のキャストの方々からも滲み出てくるはずです。僕らが本気で作り上げた作品なので、老若男女、多くの方々に届いてほしいです。最初にお話しした、悲しいストーリーと『ハピネス』というタイトルの矛盾も考えながら観ていただけると、より面白いと思います。
Information
『ハピネス』
全国公開中
窪塚愛流 蒔田彩珠
橋本 愛 山崎まさよし 吉田 羊
原作:嶽本野ばら『ハピネス』(小学館文庫刊)
監督:篠原哲雄
脚本:川﨑いづみ
製作:『ハピネス』製作委員会
配給:バンダイナムコフィルムワークス
©嶽本野ばら/小学館/「ハピネス」製作委員会
「私ね、あと1週間で死んじゃうの」。高校生の雪夫(窪塚愛流)と恋人・由茉(蒔田彩珠)の日常は、由茉の突然の告白によって一変。心臓に病気を抱える由茉は、すでに自分の運命を受け止め、残りの人生を精いっぱい生きると決めていた。憧れていたファッションに挑戦し、大好きなカレーを食べに行く。そして何よりも残り少ない日々を雪夫と過ごし、最期の瞬間までお互いのぬくもりを感じていたい。雪夫は、動揺しながらも彼女に寄り添う決意をする。17歳という若さで逃れられない運命と向き合い、残りの人生を笑顔で幸せに過ごすことを選んだ2人の、悲しくて、最高に幸せな7日間の物語。
窪塚愛流
2003年10月3日生まれ。神奈川県横須賀市出身。2018年、映画『泣き虫しょったんの奇跡』でスクリーンデビュー。2021年から本格的に俳優活動を開始。ドラマ「ネメシス」(21)へのゲスト出演をはじめ、「あのときキスしておけば」(21)にもレギュラーキャストとして出演。その後、「この初恋はフィクションです」(21)、「ファイトソング」(22)、Huluオリジナル「神様のえこひいき」(22)、「ばかやろうのキス」(22)、「OTHELLO」(22)、「差出人は、誰ですか?」(22)、「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(23)、「あたりのキッチン!」(23)などのドラマに出演。映画では、『麻希のいる世界』(22)、『少女は卒業しない』(23)、『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』(24)、『愛のゆくえ』(24)など。
PHOTOGRAPHER:YU TOMONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:YAE NAKAYAMA,STYLIST:KENTARO UENO