特撮の撮影は想像力が必要な場面がたくさんあった
――特撮映画『カミノフデ 〜怪獣たちのいる島〜』で主人公の朱莉を演じていますが、これまで特撮に縁はありましたか?
鈴木梨央(以下、鈴木) 特撮映画に参加させていただいたのは今回が初めてだったので、すごくうれしかったです。小さい頃、同世代のお友達に特撮好きな子が多かったので、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』や『ゴジラ』シリーズを「怖い怖い」と言いながら一緒に観ていました(笑)。どんな風に撮影が行われるんだろうという楽しみな気持ちでいっぱいでした。
――村瀬継蔵監督とはどのタイミングでお会いしたのでしょうか。
鈴木 撮影前の衣装合わせのタイミングで、お話させていただける機会があったんですが、そのときはリモートだったので、直接お会いしたのはクランクインの日が初めてでした。ただリモートでの顔合わせのときに、朱莉についてのお話しができましたし、アドバイスもいただきました。
――初めて脚本を読んだときの印象はいかがでしたか。
鈴木 初めての特撮作品なので、脚本を読んだだけでは、頭の中で想像しきれないものがたくさんありました。朱莉の視点で読むと、朱莉は思っていることを素直に言えない不器用な子。それが同級生の卓也くん(楢原嵩琉)と行動していくにつれて、徐々に伝えたい思いを伝えられるようになっていく。朱莉の成長物語でもあるのかなと感じましたし、おじいちゃん、お母さんとの関係性も描かれていて、3世代の絆の物語でもあるなと感じました。
――怪獣ヤマタノオロチを始め、様々な造形物が登場します。どのように撮影していったのでしょうか。
鈴木 実際の造形物がある訳ではないので、絵コンテで自分なりに想像して、現場にいる皆さんと確認しながらワンカットずつ丁寧に撮っていくという形で進めていきました。実際に撮影現場にあったのはムグムクルスというかわいらしい不思議な小動物ぐらいで、怪獣などは自分たちで想像しながらグリーンバックで撮影していきました。
――イメージするのも大変だったのでは?
鈴木 想像力が必要な場面がたくさんあったので難しかったですね。ただ難しい動きやリアクションの取り方、怪獣との距離感などが必要なときは、村瀬監督を始め、スタッフさんたちに聞いて、みなさんと模索しながら作り上げていきました。
――怪獣などに向ける目線を、共演者同士で合わせなければいけない場面も多いですよね。
鈴木 卓也くんとのシーンが多かったので、たとえば二人で恐怖を感じて逃げ出すという局面では、楢原さんと話し合いました。絵コンテを見ながら、一緒に想像して、お互いの解釈を言い合って、受けとめ方のずれも共有して。目の前に大きな怪獣がいるけど、撮影では実在しないものに対してリアクションを取っているので、朱莉と卓也くんの気持ちの繋がりを大切にしました。
――特撮ならではの撮影で、印象的だったシーンを教えてください。
鈴木 一番驚いたのは、空に向かって飛んでいくドローンを、怪獣ヤマタノオロチだと思って怯えるシーンです。ヤマタノオロチを想像しながら演じるのは難しかったんですが、実際に完成した作品を観たときに、自分が思い描いていたままの映像だったので、作品と自分が繋がった感覚がありました。
――村瀬監督の演出はいかがでしたか。
鈴木 初めに「自分が思う素直な朱莉を演じてください」というディレクションをしていただいたんですが、実際に私が思う朱莉を、優しく温かく見守ってくださりつつ、特撮の場面などでは、リアルな表情をするための目線だったり、動き方だったりを的確にアドバイスしていただいたので、イメージを掴みやすかったです。