みなさんの力によって、どのように作品が出来上がっていくかを純粋に楽しんでいる

――いつぐらいから、ずっとこの仕事を続けようと考えるようになりましたか。

鈴木 小さい頃は楽しいという気持ちだけでやっていたんですが、今後も続けていきたい、その道で生きていきたいと感じたのは、中学3年生のときです。子供と大人の狭間にいる年齢でもあるし、誰かから要求されるよりも、自分から提案したり発信したりという年齢でもありました。そんな時期に出会った作品が『奇跡の人』(19)という舞台で、ヘレン・ケラーを演じたんです。正直、5歳から活動していたので、それなりに経験も積んできたし、お芝居への自信を持てていた自分がいたんです。ところが『奇跡の人』で自分の表現の幅の狭さを実感しました。難しい役だったので、周りの支えがあって何とか演じ切ることができたんですが、作品が終わった後に抜け殻状態になって、全てやり尽くしたぐらいの気持ちで放心状態になったんです、そのときに、これほど役と向き合える瞬間があるんだと自分の中で腑に落ちた瞬間があって。この感覚を、いつまでも体験できる役者になりたいと感じましたし、自分にとって分岐点というか、改めてお芝居を続けていきたいと認識した作品でした。

――進路選択のときに、お芝居以外の選択肢を考えたことはありますか?

鈴木 自分の好きなことや、新しく学びたいことは他にもたくさんあるんですが、その先に存在しているのがお芝居なんですよね。演じることが自分の中心にあるので、何かをやりたいという“何か”は、お芝居に繋がるものなんです。そういう意味では、他の選択肢を考えたことはないです。

――学校とお仕事の両立はいかがでしたか。

鈴木 大変と感じたことはなくて、自然とお仕事と学校を別物として楽しむことができました。ただ『奇跡の人』のように重い役を演じた後は、どうしても翌日、学校に行くときの足取りは重くなりました。

――『カミノフデ~怪獣たちのいる島~』のように、主演を務めるときのプレッシャーはいかがですか。

鈴木 主演に重きを置いているというよりは、みなさんの力によって、どのように作品が出来上がっていくかを純粋に楽しんでいて、そこに自分も参加できることが心の底からうれしいんです。もちろん主演を務めるときは、毎回プレッシャーはあるんですが、みんなでより良い作品を作るにはどうしたらいいかを第一に考えています。『カミノフデ~怪獣たちのいる島~』もそうでした。

――最後に改めて『カミノフデ~怪獣たちのいる島~』の見どころをお聞かせください。

鈴木 『ゴジラ』や『ガメラ』シリーズの造形を手がけた村瀬継蔵さんが初めて総監督を務めた作品ですので、特撮シーンは圧巻です。どこか懐かしさを感じさせるフィルムのような雰囲気があるので、特撮が好きな方はもちろん、あまり特撮を観たことがないという方も入り込みやすいはずです。個人的にはムグムクルスが本当に可愛らしくて、朱莉と卓也くんにヒントをくれる場面もたくさんあるので注目してほしいですね。ドラマで言うと、朱莉から見るおじいちゃんの存在だったり、お母さんとの関係性だったりが丁寧に描かれているので、いろんな世代の視点から何かを感じ取っていただける作品なのかなと感じています。小さい子から大人の方まで、幅広い世代の方に観ていただきたいです。

Information

『カミノフデ~怪獣たちのいる島~』
TOHOシネマズ日比谷ほかにて絶賛公開中!

鈴木梨央
楢原嵩琉 町田政則 馬越琢己 吉田羽花 樋口真嗣 笠井信輔 春日勇斗
釈由美子 斎藤工 佐野史郎

原作・総監督:村瀬継蔵
主題歌:DREAMS COME TRUE「Kaiju」( DCTrecords/UNIVERSAL SIGMA)
プロデューサー・特撮監督:佐藤大介 脚本:中沢 健 音楽:小鷲翔太
エグゼクティブプロデューサー:村瀬直人
協力プロデューサー:八木欣也 アソシエイトプロデューサー:牛田直美 監督補:石井良和
撮影:高橋義仁 砂原洋一 照明:田村文彦 録音:飴田秀彦 音響効果:柴崎憲治
アドバイザー:勝賀瀬重憲 オリジナルコンセプトデザイン:高橋 章 怪獣デザイン:西川伸司
造形監修:村瀬継蔵 特殊造形:村瀬文継 若狭新一 松本朋大
製作:ツエニー TSKさんいん中央テレビ ストリーム ロスガトスワークス
特別協賛:ディーシーティーエンタテインメント
制作:ツエニー 制作協力:スーパービジョン 配給:ユナイテッドエンタテインメント
ⓒ2024 映画「カミノフデ」製作委員会

特殊美術造形家・時宮健三(佐野史郎)が亡くなった。祖父である時宮の仕事にあまり良い思い出がなかった朱莉(鈴木梨央)は複雑な心境でファン向けのお別れ会を訪れていた。そこには特撮ファンである同級生の卓也(楢原嵩琉)の姿もあった。朱莉と卓也は時宮の古い知り合いだという穂積(斎藤工)と名乗る若い男と出会う。祖父が映画を作ろうとしていたことを初めて知る朱莉。穂積はおもむろに鞄から『神の筆』の小道具である筆を手にする。「世界の破滅を防いでください」。穂積のその言葉とともに朱莉と卓也は光に包み込まれた。 気づくと二人は映画『神の筆』の世界に入り込んでいた。 そして映画に登場しないはずの怪獣ヤマタノオロチが、この世界のすべてを破壊し尽くそうとする光景を目の当たりにする。 元の世界に戻るため、二人は時宮が作るはずだった映画『神の筆』の秘密に迫っていくことに……。

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鈴木梨央

2005年2月10日生まれ。埼玉県出身。5歳から芸能活動を開始し、NHK大河ドラマ「八重の桜」(13年)で主人公の幼少期を演じ、NHK 連続テレビ小説「あさが来た」(15)では主演の幼少期と主演の娘役を演じて注目を浴びる。『こどもしょくどう』(19)で映画初主演を務めたほか、『屋根裏のラジャー』(23)などでは声優としても活躍。東京国際フォーラムで上演中のブロードウェイミュージカル「ピーター・パン」(2024年7月24日~8月2日)ではウェンディ役で出演。

PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI