リアリティある新著の描写には自身の「ルームシェア」経験も反映
――「第14回女による女のためのR-18文学賞」読者賞受賞作を含むデビュー作『くたばれ地下アイドル』から6年強、新著『たぶん私たち一生最強』はルームシェアを中心に絆を深める4人の女性たちを描く作品となりました。
小林早代子(以下、小林) 女性の友情にフォーカスした作品を描きたいと思っていたんです。海外映画『ハリー・ポッター』シリーズや、海外ドラマ『フレンズ』のように、共同生活でたがいの距離が縮まっていくような物語も好きで、モチーフにしたいと考えていました。
――実際、ルームシェアした経験もあるそうで、作品にも活かせましたか?
小林 前作から今作までの期間に高校時代からの親友と2年ほど、ルームシェアをしていたんです。細かな部分の描写では、反映できたと思います。私は同性の友人と2人で、登場人物たちのように一生一緒にと誓い合うのではなく「賃貸契約期間の2年で終わりにしよう」と前もって決めての生活だったので、意味はちょっと違いましたね。でも、家事で揉めることなく、毎晩が楽しかったのは現実でも同じでした。
――現実では「ニトリのコタツでYouTubeを見ながらハイボールを飲み、寝る2分前まで「スマブラ」(ゲーム『大乱闘スマッシュブラザーズ』)をして倒れ込むように眠る日々」を過ごしていたと、出版にあたってコメントを寄せていて。今作の登場人物たちも、同様の生活を送っていました。
小林 ルームシェアをしていた当時はコロナ禍だったので毎日、箱買いした缶のハイボールを飲み、Uber Eatsでご飯も頼み…の繰り返しで。「スマブラ」の対戦では親友に容赦なく打ちのめされて、深夜に寝るのが当たり前でした(笑)。その後、私が結婚して海外に移り住んだので、会う頻度は減ってしまったんですけど、今でも仲がいいです。
――端々がリアルに感じられたのは、そうした経験が反映されているからとも思いました。そして、登場人物たちの会話を通して、女性の恋愛や結婚、出産を正面から取り上げているのも今作の真髄かと思いました。
小林 作品自体は男性にはこう、女性にはこう見てほしいと、読者を選ぼうとした意図はないんです。ただ、やはり女性が男性と大きく違うのは、出産するかしないかを「まず決めるか」だと思うんですよね。高齢出産のリスクを考えると、年齢はやはり気になりますし、自分で「いつまでに」と基準を設けるなら「いつまでに結婚するべきか。実現するには、いつまでにパートナーと出会うか…」と逆算する必要があるかのような空気が嫌で。現代では恋愛や結婚を介さずとも子どもを作る選択肢もありますし、選択肢は複数あるという思いも込めて、書きました。