大学時代に所属したゼミが創作の「楽しさ」に目覚めた原点

――次回作の構想も、教えていただきたいです。

小林 今作ではリアリティある性にフォーカスする内容が多かったので、次は一新して、さわやかな青春モノを書きたいです。私自身は中学校から高校にかけて、インターネットがすでに身近な世代で、ネットでのコミュニケーションが当たり前にあったので、ネット青春をかけ合わせた老若男女に届く作品を考えています。

――今おっしゃっていた青春時代も振り返っていただきたく。当時から、文芸の世界への興味は強かったのでしょうか?

小林 昔から本はだいぶ読んでいて、中学時代には地元に新しくできた図書館によく通っていました。高校時代は実家から離れた学校へ入学したので、通学時間にじっくり読書できる環境もあったんです。当時通っていた高校は大学の附属校で、3年生になると内部進学のために論文を書く必要があって。論文のテーマに選んだ、共に芥川賞作家の金原ひとみさん、綿矢りささんの作品は、私の原点です。お二人とも若くして華々しくデビューされていたのが記憶に強く残っていますし、新作を出されるたびに楽しく読んでいます。

――お二人への憧れも抱きつつ、実際に創作をはじめられたのはいつ頃だったのでしょう?

小林 高校3年生の頃には少しずつ書いていて、本格的に書きはじめたのは大学の入学後でした。大学3年生で、芥川賞の受賞者で選考委員も経験されていた堀江敏幸先生のゼミに入ったんです。技術を磨くのではなく、創作を楽しめるように発表の場を与えていただけたゼミで、ゼミ生の背景もバンドや演劇と様々で、小説に漫画にとジャンルを問わず、照れも忘れるほどの楽しい時間を過ごせたのはありがたったです。

――その先で、デビュー作の『くたばれ地下アイドル』が生まれたんですね。

小林 執筆は大学4年生だったと思います。新卒で就職する直前、すでに大学の卒業式は終わっていた3月末に受賞の連絡が来たのは覚えているんです。「明日から社会人かぁ」と思っていたタイミングだったので、電話を受けて「これからどうなっていくんだ」という気持ちでした。