焦った時期を経て悟る「今は今で、人生が忙しいんだからしょうがない」
――デビュー後は会社員との兼業もあって。作家としての歩みを振り返って、いかがでしょう?
小林 単行本ではデビュー作から新著までが6年強なので、他の作家さんと比べると出版のペースは遅いんですよね。その間に短編を書くなどして、のんびり自分のペースで続けられています。大学卒業後に勤めた会社は2年半ほどで辞めて、一時期はフリーターと兼業もし、その後は親友とのルームシェアをするにあたって「安定した仕事をしなければ」と再び就職したのもあって、履歴書は“地獄絵図”になっています(笑)。
――(笑)。コロナ禍ではご結婚されて、海外へ移り住んだと聞きました。
小林 結婚前に夫がアメリカの会社に転職したんです。一緒に行くなら「結婚しないとビザがおりない」となったので、成り行きで結婚することになりました。
――1992年生まれで現在は30代に。ここまで振り返っていただいたのは20代のお話で、なかなかに波瀾万丈ですね。
小林 バタバタしていたんですけど、常に一生懸命だったから今、小説を書けているとは思います。遊びも恋愛も仕事も、命を削りながらだったので(笑)。アメリカへ移り住んでからは新鮮で飽きのこない、刺激ばかりの毎日を過ごしています。英語でしかコミュニケーションできない環境へ飛び込むと生活の難易度がグンッと上がりますし、また新たな日常の楽しみも増えました。
――環境の変化で、創作にもまた影響が生まれそうですね。
小林 ある時期までは、焦りもあったんです。デビューのタイミングが近かった作家の仲間が華々しく文学賞を取っていた中、他のことで忙しく、書けない時期もあったんです。でも、時が過ぎるにつれて「今は今で、人生が忙しいんだからしょうがない」と悟り、自分のペースをつかんでからは気が楽になりました。最近は、アメリカでの環境にも慣れてきて、落ち着いてきたので、執筆意欲もさらに上がりました。
――最後、読者に向けて。人生を上げていくためのアドバイスもいただければ。
小林 こちらがむしろ、聞きたい気持ちも(笑)。でも、その時々を精一杯に、困ったら誰かに頼ってもいいと思っています。私も「他力本願」でやってきたふしがありますし、今は、夫にだいぶ支えられているんです。ルームシェアしていた親友に家賃を少し多めに出してもらった経験もありますし、あとで恩返しできるのなら、人に頼るのも大切です。
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