誰かの力になれていることを実感したとき、お芝居って素敵だなと思った
――キャリアについてもお伺いします。もともとお芝居に興味はあったんですか。
高田 お芝居がやりたくて、事務所に入ったという流れではなくて、スカウトをしてもらって、そこから女優のオーディションを受けるようになって。そしたら映画もドラマも次々と受かったので、自然と女優のお仕事が増えていったんです。
――演技のレッスンは受けていたんですか。
高田 全く受けずに、いきなりオーディションでした。なので現場で経験したことを、そのまま吸収するという実践型でお芝居が染み込んでいきました。この世界に入って4,5年目に演技レッスンみたいなものにも参加するようになったんですが、普通にお芝居を学ぶというよりは、「もうすぐ貴女はゾンビになります。ゾンビになる前に、ビデオメッセージで家族に一言お願いします。よーいはい!」みたいな(笑)。どちらかというとワークショップのようなもので。でも、そのときにアドリブ力というか、自分の頭の中でイメージを構成していくという練習をしたので、舞台でも活かされたのかなと思います。
――いつぐらいから俳優業にやりがいを感じるようになったのでしょうか。
高田 いつというのは分からないんですが、自分が出演した作品に「感動しました」「泣きました」といった反響をもらえるようになって徐々にですね。たとえば『仮面ライダービルド』を観た方が、「高田さんの演じる石動美空を見て、月曜日から頑張ろうと思います」と仰ってくださって、私が誰かの力になれていることを実感したときに、お芝居って素敵だなと思いました。
――ターニングポイントになった作品は何でしょうか。
高田 やっぱり『仮面ライダービルド』は大きかったです。それまで探り探りでやってきたんですが、『仮面ライダービルド』は一年間に渡ってドラマのヒロインをやらせていただいて。映画もあったので約2年間、石動美空を演じたんです。そのときに、たくさんしごかれましたし、「カットの後もお芝居の気持ちを途切れさせちゃ駄目だよ」といった基本的なことや、お芝居に対する姿勢を教えていただきました。
――それほど高田さんにとって、石動美空は大きな役どころだったと。
高田 石動美空は歴代のヒロインの中で一番泣きのシーンが多いヒロインだったらしくて、感情を自分でコントロールして、涙を流さなきゃいけないシーンがたくさんあったので、そういう意味でも勉強になりました。『仮面ライダービルド』は一話ずつ台本を渡されるので、どういうストーリーが展開していくのか分からず、序盤は役作りもできなかったんです。考え過ぎずに、その都度がむしゃらに台本と役に向き合えたのも、まだ経験の少なかった自分には良かったです。
――高田さんは音楽活動も行っていますし、バラエティにも精力的に出演していますが、お芝居を活動の軸にしようと思った瞬間はありますか。
高田 どのお仕事も楽しいので、何が自分に合っているのか分からなくて。いまだにそんな感じなんですよね。初演の『裸足で散歩』はすごく達成感あって、何ものにも代えがたい経験。壁に全力でぶち当たって砕けてというのを繰り返した初舞台だったので、これを終えたら、燃え尽き症候群になるんじゃないかと思うぐらいでした。初ミュージカルの『スライス・オブ・サタデーナイト』にしても、初めて経験することばかりで、「また壁だ……」と思っていたんですが、気づけば積極的にアドリブをやっちゃうくらい超楽しんでいました。
――『スライス・オブ・サタデーナイト』を観劇させていただきましたが、初ミュージカルとは思えないほど生き生きしていました。
高田 ありがとうございます。今回の『裸足で散歩』再演にしても、前回の公演が終わったときは大変だったから絶対にやらないと思っていたのに、お話がきたときはめちゃくちゃうれしくて。「あのコリーで正しかったんだ」と、やっと答え合わせができた気がしたんです。それで二つ返事で「やりたいです!」と答えました。結局、どのお仕事も楽しめるし、どれも次のお仕事に繋がっていくんですよね。だからこそ今も模索中なんです。職業・女優、職業・アーティスト、職業・タレントなど、いろいろ区切りはあると思うんですが、私はそういうのを取っ払ってもいいのかなって。3年前からは「女優でも走るよ!」みたいな気持ちで、フルマラソンにも挑戦していますし(笑)。
――今年3月に参加した東京マラソンでは、自己ベストを約45分も更新して完走しましたよね。
高田 よく言われることなんですが、フルマラソンを完走すると価値観が変わるんですよ。毎年走っていますが、進化と変化が止まらないんです(笑)。だから10年後の自分が何をしているのかは分かりません。ただ映像のお芝居で芸能活動が始まって今の私があるので、お芝居をしていないと私じゃいられないというか、堂々としていられないんです。バラエティや歌のお仕事で現場に行くときも、女優をベースにやっているのがあるから、堂々と「お邪魔します」という感覚でいられるんですよね。だから根底は女優さんで、お芝居をやる人なんだろうと思います。
Information
『裸足で散歩』
【東京公演】
日程:2024年11月8日(金)~11月19日(火)
劇場:銀座 博品館劇場 ほか
※その他の公演日程は公式サイトをチェック!
作:ニール・サイモン
翻訳:福田響志
演出:元吉庸泰
出演:加藤和樹 高田夏帆 福本伸一 松尾貴史 戸田恵子
企画・製作 :シーエイティプロデュース
寒い2月のニューヨーク。古いアパートの最上階に新婚のポール・ブラッター(加藤和樹)とコリー・ブラッター(高田夏帆)が引っ越してきた。工事に来た電話会社の男(福本伸一)も息切れして話せないほどの階段。エレベーターはなく、天窓には穴があき、暖房も壊れ、家具も届いていない。夜には雪が降るらしい。アパートには不思議な住人がたくさん住んでいる。その中のひとり、屋根裏部屋に住むヴィクター・ヴェラスコ(松尾貴史)はブラッター家の窓を通って自分の部屋に行く。コリーはここでの生活をすごく気に入り楽しんでいるが、真面目な弁護士のポールはこのアパートに馴染めずにいた。ある日コリーは、母であるバンクス夫人(戸田恵子)との食事にヴェラスコを誘い、食事を楽しんだ。だが、みんなが帰った後、2人きりになったポールとコリーはケンカをし始めてしまう。ポールとコリーの新婚生活はどうなってしまうのか?
PHOTOGRAPHER:YU TOMONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI