どんなことがあっても人生は続いていく
――『星の降る時』の脚本を初めて読んだとき、どんな感想を持ちましたか。
山崎 国境や背景は違えども、結局どの国でも起きていることは同じだなと感じました。国の問題というのは簡単に解決できるものではないですし、人種に関する問題も同様で、なかなか日本人には理解できないこともあります。ましてや僕が演じるマレクはポーランドからの移民で差別される側。以前から漠然と「差別がなくなればいい」とは思っていましたが、そこまで差別される側のことを深く考えたことがなかったので、考えることを放棄したくなるような重い問題だと感じました。
一方で会話のキャッチボールの仕方や、人の話を聞いているようで聞いていないところ、自分の欲望を前面に出す登場人物ばかりで、「自分が、自分が」というようなエゴイスティックな部分など、今の日本に通じるものを感じました。僕が演じるマレクは同世代なので親近感も湧きましたし、これまで現代劇をやらせていただく機会も少なかったので新鮮でした。
――マレクの印象を教えてください。
山崎 マレクは誰もやりたがらないような仕事をしてきた人物です。仕事を通じて少しずつ力を手に入れ、起業家の立場になって、かなり鼻が高くなっている状態。人のことをあまり考えない発言ができるのは、彼の自信の表れだと思います。「お前らはそうだろうけど、俺はこうやって今ここにいるんだ」という根拠のある自信が、彼の言動の起爆剤になっているんです。いわば他の登場人物とは違ったポジションにいる「異分子」で、その部分を上手く活かして物語をかき混ぜていきたいと思っていますし、それを表現するのは楽しいですね。
――鼻持ちならない存在ではありますが、どういうところにマレクの魅力を感じますか。
山崎 欲望に忠実なところです。他の登場人物も欲望に忠実ではあるんですが、その中でも群を抜いていて。自己中心的な考え方なんですが、それが人間らしくて面白いんですよね。
――共感するところもありますか?
山崎 僕もどちらかというと根拠があるなしに関わらず、「これだ!」と思ったものには全力投球といいますか、アクセル全開で立ち向かうことができるので、そういう点は共感しますし、似ているかもしれないです。
――物語の主人公である三姉妹については、どんなことを感じましたか。
山崎 この作品は三姉妹に限らず、どの登場人物も自分勝手で、いい加減なんですよね。そうした関係性が緻密な計算で描かれていて、誰かが喋っている間に、別の人がカットインしてくる場面もあって。難しさもありますが、やりがいも感じます。