相反する思いの間で、板挟みになりながら向き合っていく役柄

――稽古場の雰囲気はいかがですか。

中川 どんどん作品を掘り下げて、ディテールにこだわっていこうと思うと、課題が尽きない脚本です。稽古場で過ごす時間もそうですし、それ以外の時間でも勉強しているので、インプットしている情報がどんどん膨らんでいきます。稽古場自体の雰囲気は和やかですし、三谷さんと長年ご一緒されている面々が揃っているので、作品とは関係ない話でざっくばらんに盛り上がる時間もあります。ただ緊張感のあるテーマなので、稽古も佳境を迎えて、いよいよ本番が近づいてきたなというヒリヒリ感もあるように思います。

――作品を理解する上で参考になる映画や書籍を、三谷さん自身が挙げることはあったんですか。

中川 僕の演じる役は非米活動委員会の人間ではあるけども、映画が大好きな青年で、過去に俳優志望だったという背景もあります。なので芝居をする上で、観ておいたほうがいい作品や、知っておいたほうがいい監督や俳優は、三谷さんからお話がありました。当時の映画を観ることによって、その時代の空気や匂いみたいなものが伝わってきますし、この作品の世界観に入っていく上での力にもなります。とにかく三谷さんの映画への愛が詰まった作品で、会話の端々に実在の人物や作品タイトルが散りばめられていますので、映画好きな方にとっては、「ここで、その名前が出てくるんだ!」という面白さもあると思います。

――今回演じる役柄はどんな印象ですか。

中川 僕の役どころは複雑な立ち位置で、非米活動委員会の人間としてハリウッドの映画人を追及していかなきゃいけない立場でありながら、実は彼らの大ファンで憧れの人たちでもある――その相反する思いの間で、板挟みになりながら向き合っていかなくてはいけないんです。個人的な思いが強くなればなるほど、胸が痛くなる立場なんですよね。三谷さんの脚本の面白いところは、大河ドラマもそうなんですが、史実と、そうではないフィクションのミックスされたところがすごくて。史実と照らし合わせた時、「もしかしたら、こんなことがあったかもしれない」という時代の隙間を描いた部分が面白いんですよね。ただ今回の作品では、一部に明確なモデルがいるんですが、作中ではあまり明言されないんです。もちろん史実と照らし合わせてやっていくことはできるんですが、三谷さんが「そこにとらわれずに作品を作っていきましょう」と仰っていました。勉強したところで使えるところは使いつつ、この作品の中での想像上の設定で補っていく作業は面白いですね。