たまたま参加したワークショップで芝居の面白さを実感
――キャリアについてお伺いします。お芝居を始めたきっかけを教えてください。
渡邊 大学時代に仙台のモデル事務所に所属していたのですが、地元の劇団が主宰するワークショップがあるから行ってみないかと誘われたんです。ワークショップなんて聞き馴染みがない言葉だったので、ものづくり的なことなのかと思って参加したら、宮城の大学の演劇サークルの生徒さんなども含めて20人ぐらい参加していて、そこで初めてお芝居の一歩目みたいなことを経験して、すごく面白かったんですよね。

――それで舞台にも興味を持ったんですか。
渡邊 その時は全く興味がなかったです。というのも当時は、ほとんど宮城で舞台の公演がなかったんです。モデル活動をして、ワークショップにも参加した自分でさえその感覚だったので、地元で舞台に馴染みのある人は少数だろうなと。宮城の人に届かないなら、やる意味がないと思っていたんですよね。
――その感覚は俳優デビューしてからも変わらなかったのでしょうか。
渡邊 デビュー当時は変わらなかったのですが、機会をいただいた時に、チャレンジしてみようということで、2021年に『彼女を笑う人がいても』という舞台で世田谷パブリックシアターに立たせていただいたら、すごく面白かったんですよね。同じお芝居をするなんて大変そうだなと思っていたのですが、その日によって、みんなの温度が違うし、日々、新鮮味もあったんです。
――そもそも乗り気ではなかった舞台に出ようと思ったのはなぜですか。
渡邊 初舞台の演出が栗山民也さんだったのですが、いわば演劇界の巨匠ですよね。周囲から、「栗山さんの舞台は、みんなやりたがるから、絶対にやったほうがいい」と言われて出演を決めました。

――先ほど喉のお話がありましたが、舞台と映像とでは発声から違うかと思います。
渡邊 それまで、自分は喉が弱くて、他の人に比べて、声を飛ばしやすいだろうと思い込んでいたんです。いざ本番の舞台に立った時、どこまで自分の声が届くのか体感として分からなかったので、むちゃくちゃ声を張っていましたし、稽古でも、「稽古場から声を出してください」と言われていましたしね。当時は客席を意識することができずに、がむしゃらにやっていたのですが、中日手前ぐらいに栗山さんが「あなたの声はすごく響くから、そんなに張らなくてもいいぞ」と言ってくださったんですよね。「栗山さんに声を褒められたぞ」と口元を緩ませたのですが(笑)、その時に意外と響く声だということに気づきました。いまだに自分では実感できないですけどね。
――栗山さんの演出はいかがでしたか。
渡邊 栗山節というか、栗山さんだけの言語を持っている気がして。それほど言葉数が多い方ではないのですが、的確であるし、抽象的でもあるんですよね。だからこそ伝わるというか、ちゃんと自分の中で解釈をするように努めましたし、言われたアドバイスに対してトライを続ける日々でした。振り返ってみても、貴重な経験でした。
Information

『Yerma イェルマ』
日程:<東京公演> 9月21日(月・祝)~10月12日(月・祝)
※兵庫、宮城、愛知公演あり
会場:シアタートラム
作:オノマリコ
構成・演出:稲葉賀恵
出演:咲妃みゆ、渡邊圭祐、小林亮太/渡辺いっけい ほか
「生産性のない人たちには存在価値がないのか」。変容する社会の中で、家族とは何か、自分とは何かを問いかける。スペインの詩人・劇作家ロルカの傑作「イェルマ」を起点に、作:オノマリコ×演出:稲葉賀恵が放つ、生きる価値を見出そうとする女と男たちの物語。
渡邊圭祐
1993年11月21日生まれ。宮城県出身。地元仙台にてモデル活動の後、「仮面ライダージオウ」(18~19 年)のレギュラーキャストに抜擢され、俳優デビュー。その後、数々の作品にて活躍。近年の主な出演作に【舞台】『アンナ・カレーニナ』(23)、『無駄な抵抗』(23)、【映画】『八犬伝』(24)、『女神降臨 Before 高校デビュー編』(25)、『女神降臨 After プロポーズ編』(25)、『ほどなく、お別れです』(26)、『SAKAMOTO DAYS』(26)、【ドラマ】NHK大河ドラマ「光る君へ」(24)、「財閥復讐〜兄嫁になった元嫁へ〜」(25)、「まどか26 歳、研修医やってます!」(25)、「恋愛禁止」(25)、「夫を殺したはずなのに」(26)など。26年11月13日、主演映画『2126年、海の星をさがして』の全国公開がスタート。
PHOTOGRAPHER:HIROKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE: 秋月庸佑,STYLIST:岡本健太郎
