一つの心の解放が、バタフライエフェクト的にライブハウスという小さな空間の中で伝染
――ラジオで話した、ライブのエピソードはどういうものだったんですか。
JUBEE 僕のセカンドアルバム『Liberation』が「解放」をテーマにしているんですが、そのきっかけが、宮崎に大学時代の友達がいて、数年に一度会うぐらいの親友みたいな奴で。僕はAFJBというバンドもやっているんですが、ライブで宮崎に行くことを伝えたら、「行けないかもしれない」と。理由を聞いたら、「適応障害になっちゃって」と言うんです。宮崎に行くのは半年後だったので、「その時に元気だったら来て」と伝えたら、本当に来てくれたんですよね。しかもライブ中にモッシュをしていたんですよ。ライブ後にご飯に行ったのですが、酒も半年ぶりに飲んだらしいんです。その翌日にありがとうLINEをもらった時に、「解放できて楽しかった」と書いてあって、ものすごく僕の中で「解放」という言葉が引っかかったんですよね。もしも彼がライブに来なかったら、生きる活力を得られないままだった可能性もある。でも俺が音楽の力で酒を飲ませるぐらいまではパワーアップさせたのかもしれないなと。あと彼がモッシュした理由は、対バンだったTHE ORAL CIGARETTESのライブでお客さんが盛り上がっているのを見て、自分も混ざりたかったのもあったんです。ということは、ORALのお客さんのおかげでもあるし、あの空間にいた全員が心を解放した結果、人を救っているから、それを大事にしたいという話をしたんですよね。
Novel Core 一つの心の解放が、バタフライエフェクト的にライブハウスという小さな空間の中で伝染して、他の人の心の解放にもつながって。無意識の範囲内で、もしかしたら命が救われたかもしれないというレベルの大きなことが起こっている。ライブってそういうものだなと思っていて。だから同じライブはないし、その瞬間瞬間でシチュエーションとか、天気とか、集まっている人の種類とかによっても、毎回生まれるドラマが変わるから、そこについて強く考えたいなと思っていた僕としては、共感があったんです。
JUBEE そういう気持ちを持っているアーティストって、マジでラッパーにはごく少数なんですよ。リハは出ずにライブだけして帰るみたいな(笑)。
Novel Core 確かにバンドマインドかもしれない。ラッパーが悪いってわけじゃなくて、僕たちもヒップホップシーンに出自があったりもするんで、実際にそういう現場も経験してきているから分かるんですけど、良くも悪くもラップで食っていく人たちのフォーマットって、今でこそコンサート、いわゆる自分たちの単独の興行をちゃんと打って、それで自分たちのチームを回してる人たちがラッパーの中にも増えてきたと思うんですけど、僕がラップを始めた頃って、まだワンマンとかで、大きな規模の会場をツアーリングしてる人っていうのがほぼいなくて。となってくると、みんなクラブで深夜の時間をもらい、ギャランティーをもらう形で出演して帰る。そんな一発一発のショットの仕事を繰り返して、年間のツアーリングにしていたんです。クラブに来るお客さんは、ぶっちゃけ自分たちで集めたわけじゃなく、クラブ自体のお客さんだったりもするので。だから、ライブに対する感覚の捉え方が、バンドマンとか、自分たちで自主企画を打って大きくなっていく人たちとは違うんですよね。しかも両方を経験してきている僕とかJUBEEくんとかだと、システムの違いもより分かるんですよね。


――JUBEE さんはヒップホップ界隈の閉塞感みたいなのは感じていたんですか。
JUBEE 中にいた時はあんまり感じなかったですね。俺もそっち側だったし、バンドのみんなと関わるようになってからは、留学した時の気持ちに似ているんですけど、アメリカに行って、地元の奴らを見て、こんな文化があってみたいなのを気づいたことが多かったんですよ。日本のヒップホップを見た時に、もっとこうした方がいいなとか、マインド高く持った方がいいなとか。やり方もいっぱいあるし、自分自身がバンドをやってから外の刺激を受けたのがデカかったです。
――Coreさんもバンドを始めてから気づいた側面はありましたか。
Novel Core 僕の場合はまた違っていて、最初はジブさん(Zeebra)の事務所「GRAND MASTER」に入って、走り出しの時点で、身近にオジロザウルスをはじめ、バンドとヒップホップの両軸を意識している人たちがいて。ジブさんたちの世代を遡ると、ライブのカルチャーを自分たちでイベントとかもずっとやってきてるシーンだったと思うんで、ライブに対する重みみたいなことを、デビュー初期からジブさんに言われていたのもあったんです。忘れもしないですけど、『フリースタイルダンジョン』でライブをさせてもらったのが、実質的に僕の人生初ライブで、場所は新木場のSTUDIO COAST。
JUBEE いきなりCOASTは漏らしそうになるね(笑)。
Novel Core しかも僕の前の出番がTAKAくん(WILYWNKA)で、ライブが上手な方なので、めちゃくちゃぶち上げていて。当時は今ほどMCバトルのシーンのお客さんと、普通に音楽を聴いているお客さん、ヒップホップを好きなお客さんは混ざっていなかったんですよ。なのでMCバトルのイベントで、有名なラッパーの人が来てライブをしても、みんな棒立ちなんですよ。曲を知らないっていう時期で。でもそのお客さんのアウェイな状況にも関わらず、TAKAくんは自分のライブ力でお客さんをジャンプさせていた。でも次に僕がやった時に何もできなくて、ただ歌うしかできなかったんですよ。お客さんは全然盛り上がんなくて、悔しい思いをして。次の日に事務所でジブさんに「あのライブはダメだよ」って言われて。「ライブというのは、自分のことを知らない奴らの前でやった時に、ちゃんと手を挙げさせたりとか、ジャンプさせたりとか、曲を口ずさませたりとかするとこまで行けて初めてライブだから。自分の曲を知っている奴らが自分の曲を歌ってくれたり、ぴょんぴょん飛び跳ねているのはライブじゃない。それは誰でもできることだから、自分の知らない奴らのところにバンって出されて、それでもロックできるのが本当のMC、マスター・オブ・セレモニーだから、お前はそれを目指せ」って言われて。15歳の頃から、その意識は持つようになったと思います。
