具体的な実践策のひとつ「アイドル専用ジム」の役割
――この先、アイドル界をそれぞれの立場でどのように支えていきたいですか?
竹中 私の場合は、アイドル界で働いているので叶えやすいとも思うんです。実際、予約制のアイドル専用ジム「iウェルネス」を主宰として手がけています。立ち上げのきっかけは、著書『アイドル保健体育』だけでは問題提起にしかならないので、行動したいと考えたからです。著書で取材させていただいた専門家の方々はいますけど、アイドルの子たちと繋げる場として「ウェルネスジムを作ればいいのでは」と考えたのが経緯でした。その思いに運営のSHOWROOM株式会社も賛同してくれて、現在は、ダンスの基礎レッスンやボイスレッスン、ヨガ、筋肉トレーニングに加えて、臨床心理士の方によるカウンセリングもサービスとしてすすめています。
――より浸透するように、強化したい思いも?
竹中 相談できる場所として、機能すればと思います。グループとしての振り入れレッスンと異なり、アイドルの子たちは個人で来るんです。フラットな状態だから心境も違うみたいで、グループの規模に関わらず他の子と意気投合できるから、友達づくりのために利用する子たちも少なくないです。アンケートを元にしたカルテでは「同じ受講生たちとしゃべりたいか?」という項目もあり、肯定的な子もいて、グループ卒業後の進路やセカンドキャリアを相談している子たちもいます。
鈴木 具体的に実践していくのは必要ですよね。わたしは、映画関連会社でハラスメント対策委員の仕事をした経験もあるんですけど、産業構造全体の問題だと感じました。そんななかなか変わらない芸能界で、ハラスメントを受けて相談しても解決になかなか向かいにくく、SNSで告発する傾向が続いているように見えます。ただ、問題を起こした人を辞めさせればいいだけじゃなくて、具体的な着地点をどう見つけるかという話でもあると思うんですね。それぞれのいろんな改善の着地点について、適切な専門性を持って間に入って、支えてくれる、第三者が必要で、そのための仕組み作りが喫緊の課題だと思います。アイドル界では、何か問題が起きて悩んでいても、同じグループのメンバーには相談しづらいなどがあるでしょうし、竹中さんのジムのような場所にもある横の繋がりをどう作るべきかも、考えなければならないですよね。
取材協力:本屋B&B
Information
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特集は、鈴木みのりさんと和田彩花さんの特別編集による「アイドル、労働、リップ」。「アイドル」を含めたいろいろな人たちが、心身ともに健やかでいられるには――。「アイドル」の表象、労働、消費について考える、これまでなかったことにされてきた必要で切実で多様な声を集めた特集号。
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PHOTOGRAPHER:HIROKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:SYUHEI KANEKO