脚本を読んだ時に自分の学生時代がシンクロした
――初映画初主演が決まった時は、どんなお気持ちでしたか?
十味 信じられませんでした!今までお芝居と言ってもワンシーンくらいしか登場したことがなかったので、初めての映画で、しかも初主演と聞いてとにかく驚きました。
――お芝居自体に興味はありましたか?
十味 興味はありましたが、演技の経験が少ないので、不安な気持ちのほうが大きかったです。いつかはストーリー全般に関わる役を演じてみたいと思っていたので、今回そのチャンスをいただけてとてもうれしかったです。
――脚本を読んだ時の感想を教えてください。
十味 読んでいてスーッと感情移入しました。というのも、私は学生時代、スクールカーストの下のほうにいる、みんなから苗字に“さん付け”で呼ばれるような存在で。人の顔色を伺いながら、できるだけ目立たないようにしていたから、めざしの気持ちは手に取るように理解できました。私はそのまま卒業してしまいましたが、めざしは転校を機に海釣り同好会「アングラ女子会」の仲間に出会い、心を開くことができたので、私ができなかったことを叶えてくれたストーリーにグッときました。
――撮影は順撮りで行われたのでしょうか?
十味 結構、前後しました。今まで、長くて2,3シーン程度の撮影にしか参加したことがなかったので、シーンを前後して撮ったのも、場所を変えて撮影したのも初めてでした。
――ということは、心を閉ざしていた頃のめざしと、心を開いてからのめざしを切り替えるのは難しかったと思います。
十味 そうなんです!1時間前は周囲に馴染めていなかっためざしを演じたのに、その1時間後にはクライマックスのシーンの撮影があったりして、気持ちの切り替えが追いつかず苦労しました。
――役作りではどんなことを意識しましたか?
十味 めざしは自分の気持ちを言葉にして伝えるのが苦手な女の子なので「うん」とか「分かりました」といった相槌を打つセリフが多いんです。言葉に意味を持たないので、表情や声色で違いを表現することを意識しました。ほかのキャストさんや「アングラ女子会」のみんなの演技に呼応して生まれるめざしの心情を考えて演じるようにしましたが、考えすぎて気持ちがわからなくなってしまったこともありました(笑)。
――城定秀夫監督の作品はご存知でしたか?
十味 『アルプススタンドのはしの方』は、同じ事務所の黒木ひかりちゃんが出ていたので知っていました。城定監督に撮っていただくことが決まってから、『女子高生に殺されたい』など、過去の作品をたくさん拝見しました。城定監督の作品は、爽やかな青春ものからダークな内容のものまで幅が広くて、生々しい描写も多かったりするから「いろんな表現ができるようにしなくちゃ」とレッスンに身が入りました。
――長編の映画に出演されたことで、お芝居への考え方は変わりましたか?
十味 映画の仕組みや流れが分かったので、「次はもっとこうしたい」という欲が生まれました。出来上がった作品を試写で観た時も「もっとここはこうできた」とか、「なんでここはこうなんだろう」という反省点ばかり目についてしまって。早く次のお芝居をさせていただきたいので、今はめちゃくちゃ頑張ってレッスンに通っています!