連続ドラマは面白いという気持ちが連鎖していくのが大切
――『モダンかアナーキー』でバスケのシーンがありますが、金子さん自身、バスケ経験があるんですよね。
金子 中学・高校と6年間やっていました。「友達がやってるから、俺もやるわ」って感じで始めたんですけど、ハマりましたね。全国とかに行けるようなレベルでは全然なかったんですけど、一応スタメンでした。
――高校卒業後の進路って、どう考えていましたか。
金子 何もやりたいことがなかったですね。もうちょっと焦らなきゃいけなかったんでしょうけど、全然焦ることもなく、何をやろうかなみたいな感じで高校3年生になって。たまたまオーディションがあって、それも友達が受けるから、だったら俺も受けたいというノリでした。しかも会場が東京ではなく地元のZepp Sapporoで、書類がなくても、行ったら受けられたんです。そしたら合格して、進路が決まっちゃったみたいな(笑)。
――学校では目立つほうでしたか。
金子 中心グループにいましたし、目立ちたがり屋ではあったと思います。ただ田舎者なので、警戒心が半端なくて、新しいコミュニティに入っていくのが苦手なんです。だから東京の友達は少ないです(笑)。
――上京することの不安は?
金子 めちゃくちゃありました。オーディションを受けるまで東京に行ったこともなかったので、初めて来たときは「なんだこりゃ?」みたいな。それまで芸能とは程遠い環境で生きてたから、上京した頃はふわふわしてましたね。慣れるまですごく時間がかかりました。
――オーディションに合格した時点で、俳優でやっていこうという気持ちは明確だったんですか。
金子 全くです。俳優しか道がなかったから、とりあえず一生懸命やるしかないという気持ちでやっていました。お芝居が好きとか、映画やドラマが好きとか、これが自分のやりたいことだって明確になるまでは、すごく時間がかかりました。
――周りの俳優を気にすることはありましたか?
金子 そういう余裕もなかったですね。そもそも仕事がないので、めっちゃバイトをしてたし、3、4年ぐらいそういう時期が続きました。
――なかなか仕事が軌道に乗らない頃、続けられたモチベーションは何ですか。
金子 当時のマネージャーさんが、「絶対に大丈夫だよ」って言ってくれていたんです。大きいのは出会いですね。売れない時代に、今も仲の良い俳優の友達ができましたし、素晴らしい監督との出会いもそうですし。あと自分の作品を観た人の感想を聞くと、ちょっと自信もついて、少しずつお芝居が楽しくなっていきました。
――特に印象に残っている監督はどなたですか?
金子 毎回、いろいろな刺激をいただいていますが、「腐女子、うっかりゲイに告る。」(2019/NHK総合)の監督陣は、すごくお世話になりましたし、映画『逆光の頃』(2017)でお仕事させていただいた小林啓一監督には、お芝居の楽しさを教えていただきました。
――作品によって毎回やりがいを感じるかと思いますが、連続ドラマならではのやりがいはどういうところに感じますか。
金子 連続ドラマって、この作品をよくしたいって思う人が集まれば集まるほど、それが見てる人に届くコンテンツだと思います。もちろん映画もそうなんですけど、連続ドラマは特にそれを感じます。撮影期間も長いですし、時間的な制限もある中でパパッと撮っていかなきゃいけない中、役者の熱量だけでは面白いものには絶対にならないんです。監督を始めスタッフさんの熱量も必要不可欠で。誰かが、この作品は絶対に面白くなると思うと、どんどん連鎖していって、それが見ている人にも届く。そこを作り上げる作業は楽しいですし、やりがいを感じますね。
Information
『育休刑事』
NHK総合
毎週(火)よる10:00~(全10話)
原作:似鳥鶏「育休刑事」
脚本:森ハヤシ、三浦希紗、久保裕章
音楽:出羽良彰
主題歌:GReeeeN 「LIFE」
出演:金子大地、前田敦子、北乃きい、武田玲奈、きづき、堀部圭亮、ソニン、鶴見辰吾 ほか
映画『モダンかアナーキー』
2023年7月1日公開
キャスト
金子大地 河合優実 藤江琢磨 村上虹郎
浦山佳樹 富田健太郎 斎藤友香莉 遠藤雄斗 清田みくり 大友律 武イリヤ 門間航 東田頼雄 一ノ光明
監督・脚本・撮影:杉本大地
とある8月31日の夜。地元のスケボー少年の一人である新垣(村上虹郎)が転落死を遂げた。高校三年生のコウ(金子大地)は新垣の死を知り、今は疎遠になっていた新垣のことを思い出す。幼い頃に母親を亡くしたコウ。当時、コウは母親の葬式会場から新垣と一緒に抜け出したことがあり、その事で親戚に不謹慎だと言われた記憶があった。そんな記憶と新垣の死がどうも引っかかるのであった。8月31日に何があったのか─新垣を取り巻く、どこか冷たく、刹那的な少年少女の日常が生々しく描かれる。
PHOTOGRAPHER:YUTA KONO,INTERVIEWER:TAKAHIROIGUCHI