予測不可能な森七菜の演技に刺激を受けて、現実に近い感覚で演じることができた

――原作と同じ七尾市で撮影をして、感情の持っていき方などに影響はありましたか。

奥平 ただのロケーションではなくて、原作で見た場所が実際に自分の目の前にあって、そこでお芝居をする訳ですから、かなり影響はありました。自分が漫画の中の役として生きてる感覚が、役作りとは関係なしに生まれた部分もあったので、ロケーションを貸してくださった七尾市の方々に感謝しています。

――自然の中での撮影が多かったので、思うとおりにいかないこともあったかと思います。

奥平 本当に撮影は大変なことが多くて、真夏だったので、そもそも暑かったです(笑)。あと雨が降ることが多くて、撮影中に急に降ってきて中断することもありました。スタッフの方々はもっと大変だったでしょうけど、完成した作品を観て、自然豊かなロケーションが綺麗で、凝った映像になっているなと感動しました。

――曲伊咲(まがり・いさき)を演じた森七菜さんの印象はいかがでしたか。

奥平 過去にドラマで共演させていただいたことはあるんですけど、ここまでがっつりとお芝居させていただくのは初めてでした。僕は感覚で演じるタイプなんですけど、森さんも同じタイプかなと感じる部分があって。前半の丸太はいろんな人から言葉をもらう側で、それに対してのリアクションが重要だったんですけど、森さんは自然に言葉を投げかけてくれるのでやりやすかったです。あと、良い意味で台本通りにやらないので、毎回どういうことが起きるのか楽しみでしたし、それに対して僕も素直にリアクションができました。予測不可能なところが伊咲っぽくもあるし、森さんの良いところなんだろうなと思いました。実際に生きていると未来なんて分からないですし、台本で分かっていることだけをやるよりも、ある意味リアルというか、現実に近い感覚で演じることができました。

――森さんとのお芝居は予定調和にならないということですね。池田監督の演出はいかがでしたか。

奥平 役者のことをすごく信用してくださって、僕らのやりたいようにやらせてくれましたし、お互いに意見を言い合って、すり合わせもできて、距離感の近い監督だなと思いました。スタッフさんも含めて、演じやすい空間を作るのに徹していただけたので、すごく助かりました。そうやって自分を信用してくれているんだと思うと、僕らもそれに応えたいっていう気持ちが強くなるんですよね。

――約一か月に渡ってキャストとスタッフが七尾市に泊まり込んで撮影したそうですが、現場はどんな雰囲気でしたか。

奥平 優しい子たちばかりで、現場はすごく明るかったです。本当に学校みたいな空気感で、良い意味でも悪い意味でもワチャワチャし過ぎて、ちゃんとしないと!みたいなときもありました(笑)。でも、そういう感じだからこそ、学生らしい雰囲気が出たと思います。

――奥平さん自身は昨年3月に高校を卒業していますが、その数か月後の撮影なので、高校時代の延長線上みたいな感覚もありましたか?

奥平 それがコロナ禍やお仕事が忙しいのもあって、丸太たちみたいな高校生活を送ることができなかったんです。逆に言うと、本来過ごすはずだった高校生活を代わりに過ごせたという感覚がありました。ここまで純粋に学生生活を送れるのは憧れでもあり、羨ましさもありつつ、映画を通して疑似体験できてうれしかったです。