何百年も生きている死神の余裕さを動きの中で表現したかった

――2020年に始まった“しにつか”こと『死神遣いの事件帖』シリーズのオファーがあったときのお気持ちからお聞かせください。

安井謙太郎(以下、安井) 「東映ムビ×ステ」(※東映、東映ビデオによる2019年始動のムービー(映画)×ステージ(演劇)の挑戦的な融合を目指すメディアミックスプロジェクト)という始まったばかりの企画があって、第1弾作品『GOZEN』の実績と、『死神遣いの事件帖‐傀儡夜曲-』のプロットを見て、それが探偵と死神という聞いたことのない組み合わせだったので、新しい試みだなとワクワクしたのを覚えています。

――その時点でシリーズ化することは決まっていたのでしょうか。

安井 「シリーズにできるね」「ぜひ、そういう展開に持って行きたい」というようなお話はありましたが、決まっていた訳ではなく、まずはやってみてという流れでした。今でも鮮明に覚えているんですが、一作目の撮影が終わった後に撮影所近くの中華料理屋で打ち上げをして、「パート2ができたらいいね」というお話はそこでも出て、僕もそうだなと思いつつ、なかなかシリーズ化というのはできるものではないなと。だから続編が決まったと聞いたときは驚きましたし、すごくうれしかったです。

――新しい試みでありながら、伝統ある東映京都撮影所で撮影が行われました。

安井 一作目の撮影で初めて東映京都撮影所に行ったんですが、セットのクオリティの高さに圧倒されましたし、メイク部屋にあるかつらや、衣装部屋にある衣装の量にも驚かされました。なかなか普段はお目にかかれない貴重なものをたくさん見させていただきましたね。撮影所チームの方々のお仕事のクオリティの高さにも目をみはりましたし、この5年間でたくさんの思い出があります。

――安井さん演じる死神・十蘭の役作りはいかがでしたか、

安井 時代劇自体が初めてで、しかも役柄は死神というギャップを楽しみつつ役作りをしました。シリーズを通して、人に見えない死神が、次第に人間らしくなっていくという、すごく変化のあるキャラクターだったので、やりがいもありました。一作目で特に印象に残っているのが衣装さんで。死神の着物は普段、衣装さんが着付けをされている着物とは違うので、みなさん戸惑われていました。それがシリーズを重ねるごとに慣れていくのもチームならではだなと感じました。

――十蘭は動きが柔らかいですが、意識した部分はありますか?

安井 風に流れるような動きのある素敵な衣装だったので、それを綺麗に見せたいなと思っていました。死神ですからモデルがある訳ではないので、ちょっと人間とは違う、何百年も生きているところの余裕さを動きの中で表現できたらいいなということを意識しました。

――モノローグも多いですがアフレコはいかがでしたか?

安井 難しかったですね。ただパート1は、ほぼ全シーン現場にいたんですよ。自分の撮影がない日も私服のままで現場にいました。ある程度、アフレコも現場でやるので、現場の雰囲気を掴むのが大切なんです。ただ、いる場所が難しいんですよ。映ってはいけないから当然カメラの外にいるんですが、そこにはスタッフさんいますし、みなさんの邪魔にならないポジションを探さなくてはならないんです。そこは自分で見つけなくてはいけませんし、現場の立ち位置の見分け方は大変でした。