ベースにあるのは相方が失踪して、無期限で活動休止することになった時の話

――前作の『映画 えんとつ町のプペル』は大ヒットを記録しましたが、今回の最新作『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』の制作はいつ頃から動き出したのでしょうか。

西野亮廣(以下、西野) 前作の公開が2020年12月で、バッとヒットして、翌年の1月には「次いくでしょう」みたいな話は出ていたんです。

――でも、そこから今回の『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』公開まで、約5年の月日が流れました。

西野 2作目をやるとなったら本を書かなきゃいけない。でも1作目を書いた時と大きく違ったのは、『映画 えんとつ町のプペル』のエンドロールを見ると、スタッフさんの名前が400人、500人と並ぶ。これだけの方の人生の時間をいただいているし、そこに生活があって、ご家族もいらっしゃる。そう思うと「ヒットさせなきゃいけない」という気持ちが強くなってきて。そうなると、お恥ずかしい話なんですが、「売れる話ってどんなだろう」と考え始めてしまうんですよ(笑)。何を入れたら売れるんだろうって計算しながら書いてみたら、全然面白くなくて。

小芝風花(以下、小芝) え~!そうだったんだ(笑)。

西野 そのロスが10カ月くらいあったんです。結局、書き上げはしたんですが、面白くないから白紙に戻した。それでだいぶ遅れてしまいました。

吉原光夫(以下、吉原) 実は僕、最初の脚本を読ませてもらったんですよ。

小芝 そうなんですか?

吉原 ちゃんと面白かったですよ。

西野 そうだ。光夫さんには、「次はこんな話です」って渡しましたよね。

小芝 完成した映画とは違う内容だったんですか。

吉原 全然違う内容。

西野 どちらかというと今作の次くらいの話というか、3作目くらいの話でした。

吉原 僕としては前のほうが面白かったので、戻してほしいくらいなんですが(笑)。

西野 なんてこと言うねん!

吉原 実際、今作の脚本を読んだ時に、「前のほうが好きだった」って言ったんですよ。でも西野さんは、それを流して映画を制作して、完成した作品を観たら、今回のほうが面白かったです。

西野 良かった~。

――なぜ吉原さんに読んでもらうことになったんですか?

西野 光夫さんとは別のところでミュージカルを一緒に作っていて、その脚本をどうするかというミーティングをずっとしているんです。だからフラットな意見が欲しいなと思って光夫さんに投げたんですが、その時点では僕はその脚本でいこうと思っていたんですよ。

――その時点で吉原さんは声優としてキャスティングしていたんですか。

西野 いえ。その時点ではガスというキャラクターはいなかったので、純粋に脚本の感想が欲しかったんです。うちのスタッフとかに見せても、気を遣って「いいっすね」とか言いそうじゃないですか。光夫さんなら正直な意見を言ってくれそうだなと。

吉原 西野さんはデータ集めが趣味なんですよ。たぶん壁打ちしながらデータを取って、いろんな人の評価を体感して、天秤にかけた時に、揺れるほうに動いたんだと思います。「あれ全部やめました」と聞いた瞬間、揺れたんだ、という感覚がありました。

――今回、小芝さん演じるナギと、吉原さん演じるガスが、第二の主人公でもありますが、どのような経緯で生まれたキャラクターなのでしょうか。

西野 ベースにあるのは恋人の話ではなくて、僕と梶原(雄太)くんが22、23歳くらいの頃の話なんです。男同士の話なんで、ちょっと気持ち悪いんですけど(笑)。2003年に梶原くんが失踪してしまい、キングコングが無期限で活動休止することになって、僕も2、3カ月くらいずっと部屋に1人でいた時間があって。彼が帰ってくるまでの物語が、自分の人生を振り返った時に一番感情の針が揺れたんです。

――その経験を今回の作品に落とし込もうと。

西野 あの時は「待つ」と決めたんですが、自分が頑張るのはいくらでもできるんですよ。でも、相手が頑張るまで待つというのは相当大変で。ただこれって世のお父さんやお母さん、学校の先生、あるいは僕は会社をやっているんですけど、若手社員に対しても同じことが言えると思って。人それぞれ、足が遅い子もいれば、どんくさい子もいる。でも、待ってあげないと、いつまで経っても伸びないんですよね。「待つ」というのは、いろんな人に共通するテーマでもあるなと思ったので、書くに値すると確信しました。