メルカトル鮎はクセのある男だけど、芯は通っているところに共感

――Huluが本格ミステリー小説を1話完結で実写映像化する「ミステリーシネマ」の企画を聞いたとき、どう感じましたか。

水沢林太郎(以下、水沢) 3作あるうちの1作『メルカトル・ナイト』を任せていただけるということで、『スイス時計の謎』(満島真之介・柄本時生)と『リターン・ザ・ギフト』(矢本悠馬・田辺誠一)のメインキャストを聞いたときは、とんでもない人たちばかりなので度肝を抜かれて、「僕でいいのか……」という気持ちがありました。ただ、大山晃一郎監督とは1度ご一緒していたので、そこは安心感を持って、「やるしかない!」という気持ちで脚本を読みました。

――最初に脚本を読んだ印象はいかがでしたか。

水沢 第一印象は推理も含めて難しい作品だなと思いました。僕はミステリー作品の経験がなかったので、メルカトル鮎(以下、メル)という特殊なキャラクターをどのように演じたら、納得して見ていただけるかを何回も読み直して想像していきました。

――ほぼ密室劇ですが、脚本を読んだだけでは、なかなか画も想像がつかなかったのではないでしょうか。

水沢 そうなんです!後からロケ場所を聞いたのですが、ロケ地を知った後でもどのような感じになるのか想像はできなかったです(笑)。

――部屋の配置も脚本通りにはいかないですからね。

水沢 一日でホテルを3か所移動しながら撮影することもありました。そうなると時系列が分からなくなって、「ここはどこだった?」とスタッフさんも含めて現場で大パニックが起きていました。

――メルにはどんな印象を持ちましたか。

水沢 なかなかクセのある男で、一見怪しい部分しかないのですが、芯は通っているなと感じたので、まっすぐさは必要だと思いました。大山監督といろいろなお話をして、「実際にやってみなきゃ分からないところもあるよね」と意見が一致したのですが、バディ役の須賀(健太)さんやみなさんとお話ししながら、メルを作り上げていきました。

――メルに共感する部分はありましたか。

水沢 メルのように何かをやり切るというところは、僕も必要なことだと思っているので、撮影期間中は常に責任を持ってやらなければいけないという気持ちで臨んでいます。

――役作りにあたって、参考にされたものはありましたか。

水沢 大山監督との話し合いで、『古畑任三郎』シリーズや『相棒』シリーズの杉下右京さんなどが候補として出てきました。ただ、「そこの要素が強すぎるとメルが消えるよね」という話になり、「いい塩梅でできないか?」という、とても難しい提案をいただきました(笑)。本読みまでに1度固めてからトライさせてくださいとお伝えして、読み合わせをしながら詰めていきました。その段階で「方向性的に悪くない」という意見をいただけたので、そこからはさらに細かいところを詰めていく作業でした。

――メルは傲岸不遜なキャラクターですが、どこか愛らしさも感じさせます。

水沢 特に意識したわけではないのですが、以前から知っている共演者の方が多かったので、その分、安心してできたというのもあります。また、正直でいることが何より大事だと思っていたので、須賀さんや恒松(祐里)さんとお芝居をして、感じたものを正直に出しながら撮影することができました。その結果、愛らしさを感じていただけていたらうれしいです。

――具体的に、どんな役作りを意識しましたか。

水沢 「今回の作品は2回目も観ていただけるような作品にしよう」というのが、僕と⼤⼭監督の中でテーマとしてありました。2回目を観ていただいたときに、物語を全部知っている上でどう見えるか。そのためにも表情や一つひとつの動作を丁寧にやっていこうという話をしていました。その上で、「ちょっとおちゃめな人」に見えたらうれしいなと思いながら演じていました。シーンによっては水沢林太郎そのものが出ている瞬間もあり、大山監督が、素が出てしまった部分も使ってくださったので、そこもメルの人間らしさにつながったのかなと思います。

――初めてシルクハットとタキシードという衣装を見たときはいかがでしたか。

水沢 初めて衣裳を着たときは、受け入れるのに時間がかかりそうだなと思いましたが、メルを演じる上でヒントにもなるなと感じました。白い衣装と黒い衣装がありますが、どちらも10着ほど用意していただき、同じ色でもいろいろな形のタキシードを着ながらメルの衣装を決めていきました。僕は身長が高いので、シルクハットをかぶると、さらに高くなってしまい、そうすると日本のホテルは天井が低めなので、普通に入ろうとするとぶつかってしまいます。ただ、そういうところもシーンによっては使えるなと思いました。