キーワードは「それぞれの登場人物に共感ができない」ところ

――舞台『Yerma イェルマ』のオファーがあった時のお気持ちからお聞かせください。

渡邊圭祐(以下、渡邊) 約3年半ぶりのストレートプレイではあるのですが、久しぶりという感覚はなくて、会場がシアタートラムということの喜びが大きかったです。これまで同じキャロットタワー内にある世田谷パブリックシアターには二度立たせてもらったのもあり、シアタートラムに立つのは念願だったんです。別の作品で共演した方々から、シアタートラムは役者にとって特別な劇場だと聞いていたので、今回は視覚的な仕掛けも多くなりそうですし、シアタートラムという空間で、どのように表現するのか想像が膨らむト書きがたくさんあるので、そこも楽しみです。

――観客として、シアタートラムに行くこともあるのでしょうか。

渡邊 それほど僕は舞台を頻繁に観に行くほうではないのですが、おそらく一番足を運んでいる劇場がシアタートラムなんです。小さな劇場なので臨場感もありますし、舞台と客席の距離も近いから、観る側としては没入感があります。演じる側としても一つひとつの動きを役に馴染ませる必要があるし、そういう劇場って稀有な気がするんですよね。シンプルに「かっこいいな」って思います(笑)。

――渡邊さん演じるフワンは、主人公・イェルマの夫で家庭生活に非協力的、そしてある秘密を抱えています。

渡邊 フェデリコ・ガルシーア・ロルカの書いた原作に比べるとデリケートな役柄になっていて、ストーリー自体も設定が現代に置き換えられています。フワンはロルカ自身のエッセンスが取り入れられたキャラクターで、センシティブな役でもあるので難しさを感じています。稽古を重ねながら、どの方向に進んでいくのかを考えています。

――劇作のオノマリコさん、演出の稲葉賀恵さんがロルカの名作を現代的な視点で再構築した作品になっていますが、初めて脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか。

渡邊 正直、二回目を読むのに躊躇するくらい難しくて、伝えようとしていることは何なのだろうと考える部分も多くて、今の段階では「それぞれの登場人物に共感ができない」とほかの役者陣とも話しています。稲葉さんも「共感ができないからこそ、それが原動力になっている」と仰っていました。もちろん場面によって共感できる部分もあるし、全く理解できないわけではない。だからこそ、「自分はこう思う」みたいなことが生まれる作品で、観終えた後に議論したくなるような楽しみ方ができると思います。演じる側としては、ちゃんと咀嚼した上で、優しくお客様に受け渡したいですね。