夫婦の殺し合いがこんなにしたたかなのかと面白かった

――お二人がW主演を務める映画『昨夜は殺れたかも』は、夫と妻、それぞれの視点から描かれる小説が原作です。初めて脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか。

吉野北人(以下、吉野) シンプルにページをめくる手が止まらないというか、先が気になって仕方がなくて、一気に読み終えました。テンポ感も良くて、展開もスムーズ。ちょっとした勘違いから殺し合いにまで発展していくという、ぶっ飛んだ内容もすごく面白かったです。モノローグで心情を描いている部分も多く、二人の二面性やギャップにクスッと笑えるんです。コミカルな部分と、サスペンスやスリルのバランスが絶妙な作品だなと感じました。

――吉野さんが演じた光弘は元ヤクザという設定ですが、どのように役作りをしましたか。

吉野 元ヤクザとはいえ、現在はサラリーマン。そこまで非現実的な設定ではなく、意外とシンプルな人物だったので、二面性をどう演じ分けるかは、脚本を読みながら何度も考えていました。そうして自分の中で作り上げたのが、クール系の人物像だったんです。ただ本読みの時に松木創監督から、クール系よりも、もっと明るくて、ちょっとバカっぽい、みんなから愛されるようなキャラクターでもいいんじゃないかと言っていただいて。そこから、自分だからこそ出せるヤクザのコミカルさを表現しようと、振り切って演じることにしました。

――鈴木さんはいかがですか。

鈴木愛理(以下、鈴木) 脚本によっては最後まで読むのに時間がかかるものもあるんですが、今回はあっという間に読み終えました。『昨夜は殺れたかも』というタイトルの通り、夫婦の殺し合いがこんなにしたたかなのかと面白くて。殺し合いの手法も様々あると思いますが、こんなにひねくれていて、チマチマ、ネチネチ(笑)しているところが、ある意味かわいらしかったです。殺し合うという言葉は身近ではないはずなのに、この映画では身近にも感じられる不思議さがあります。脚本を読んだ時から「早くあのシーンをやりたい」と、クランクインを楽しみにしていました。

――咲奈というキャラクターは、どんな人物ととらえましたか。

鈴木 孤独に生きてきた部分もありつつ、現在は自分の会社を経営する敏腕社長なんですけど、光弘と出会った時に職業を隠してしまい、結婚後もOLを装い続けてしまう。バリキャリと主婦という二面性が描かれてはいるんですが、これって誰しも持っているものなんじゃないかなと。外で働いている奥様だったら、家に帰ると、大なり小なり咲奈のような感じなのかなと思ったので、あまり別人格を演じるという感覚ではなかったです。分かりやすいところで言えば、咲奈は英語を使う外資系のお仕事で、職場では髪型も変わるので、それだけで雰囲気もスイッチも切り替わるんです。「今日はどっちのモードだっけ」と思いながら演じるのも楽しかったです。