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    好きなアイドルが解散した。ぽっかりと空いた穴に気付かないように、目を逸らして過ごしている。わたしはずっとそうしていたのかもしれない。

     

    解散ライブ当日。わたしはちっとも緊張していなかった。楽屋を出て廊下を歩けば、落ち着かない様子の月ノウサギが、大きな声で何か言いながらウロウロと彷徨い続けていた。メンバーみんなソワソワしているのが伝わってきて、本番直前までバタバタして、それはいつも通りの光景でもあった。それでもわたしは、たのしみとかそんな感覚もなくて、何を思うでもなくステージに上がる時間を待っていた。今考えれば、すべての感情に蓋をしていたのだと思う。圧縮袋に衣装を入れて、密封して隙間のないよう空気を抜くみたいに、わたしは自分の心をどうにか奥底に追いやって、何事もない顔をするしかなかったのだ。そうでもしなければ、本当は地面に転がって泣きじゃくりたいくらい悔しいという気持ちを押し殺すことができなかった。

     

    WACKに合格して間もない頃、社長に「どうせまた他に好きなアイドルとかできてそっちがいいとか言っていなくなるんだろう」と冗談交じりに言われたことがあった。別にわたしも強く否定はできなくて、そうやってこの事務所を受けることを決めた身だから、どこかで確かにそうなのかもしれないと思ってしまった。ここにきて五年間、好きなものは増えた。でもWACKを超える憧れは現れなかった。それどころか、GANG PARADEというグループに対しての執着が強くなり続けてしまった。好きだったグループに入れるなんて、普通だったらありえないことで、わたしはその奇跡みたいな出来事を生涯抱きしめてしまうだろう。

     

    四年前、GANG PARADEの再始動が決まった時、純粋にうれしかった。好きなグループがまた始まること、そこに自分がいられること、何よりも幸せだった。そのときの気持ちは色褪せることなく、むしろどんどん重いものになっていった。そしてそれは変わらないまま解散が決まった。GANG PARADEがGANG PARADEとして一番かっこいいと自分たちでも胸を張って言えるときに解散できることの喜び、大好きなだったものを失う寂しさ、どちらもあって、どちらもずっと消えなかった。

     

    それでも本当に解散してしまう日を迎えたら、どうしたらいいかわからなかった。夢を諦めるってものすごくつらいことだって初めて知った。しかしステージに立てば、そこには大好きな遊び場があった。どうしようもないさみしさがときどき溢れ出しては、重しのようにたのしいがその蓋を閉じてくれた。

     

    終わってから解散ライブの映像を何度も見返した。我ながら本当にいいライブだった。これまでGANG PARADEがやってきたこと、遊び人と作ってきた遊び場の完成形だと思った。意地と誇りを持ってやってきてよかった。自分だけじゃ絶対に見られない景色だった。何度でも見たかった。でも、そんなライブができてしあわせだった。きっとこの先、GANG PARADEのライブのない週末にさみしくなって、だんだんと慣れて、それが日常になっていくのだろう。そりゃずっと諦められないですよ。そんな簡単なものじゃなかった。それでも残酷なもので人生は続いてしまうから、どうにか生きていくしかない。大切すぎた日々を宝箱にしまって、GANG PARADEのいない世界で新たな一歩を踏み出すのだ。

     

    GANG PARADEはトラウマで最悪、最高のアイドルだった。

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    キャ・ノン

    「KiSSをあなたにお届けchu!♡」をキャッチコピーに活動するWACK初の王道5人組アイドルグループ『KiSS KiSS』のメンバーの一人でもある。ライブ好きで、苦手なことや、できないことは出来るようになればいいというタフでロックな精神の持ち主。2024年5月31日より自分自身のライブレポートなどを綴った『アイドルリアル備忘録』をSTREAMにて連載中。