月組のトップに就任する時点で退団を考えていた

――宝塚退団は、いつぐらいから考えていましたか。

珠城 入団9年目での就任でしたが、長くても5年、それ以上はやらないと自分の中で決めていました。大体3年ぐらいやれば、お客さんや世間がどう評価しているかは分かるだろうと。3年経ったときに、続けるか退団するかを冷静に考えていました。トップになったら、あとは退団するしかないですからね。

――途中で退団を考えることはなかったんですか。

珠城 何度もありました。逆風も強かったので、辛い時期もあったんです。でも月組のみんなが「珠城さんだから」ってついてきてくれる人たちばかりだったので、周りに感謝して中途半端に投げ出してはいけないという責任感が強くなりました。

――退団を決めたときから、映像作品に出演したい気持ちはあったんですか。

珠城 退団する時点では、所属事務所が決まっていた訳ではなかったんです。今の事務所は退団してからのご縁なので、今こうやってドラマや映画に出たり、朗読劇などにも出させていただいたりしているのが不思議で、そう思いながら2年が経ちました。

――映像と舞台では、お芝居の方向性も違いますよね。

珠城 全く違いますね。とても映像は難しくて、毎回頭を打ちまくって落ち込んでいます(笑)。それがやりがいにも繋がっていて、すごく楽しいです。舞台とは全然違う感情を味わうことができるので、これはクセになるなと思いました。

――映像作品に出演するにあたって特に苦労していることは何ですか。

珠城 声のボリュームに苦戦しています。たとえば映画の現場で、「ちゃんと言わなきゃ!」ってハッキリしゃべると、「もっとボソボソしゃべって」と言われて(笑)。マイクも付いているし、この距離感で話すには声が大きすぎるよなと納得して。そこは勉強中です。

――退団した翌年の2022年に出演したドラマ「マイファミリー」(TBS系)は話題になりました。

珠城 「マイファミリー」は少ないセリフで感情を表現しなくてはいけなかったので大変な部分もあったんですけど、素晴らしい俳優さんたちとお仕事をさせてもらったので、得るものが多かったです。感情がすごく動いたときとか、いい芝居ができたときって絶対に相手のおかげなんですよ。自分に矢印が向いていると上手くいかなくて、お互いに影響し合い、共鳴し合うことによって、すごいものが生まれるんです。そういう意味でも、「マイファミリー」で私の夫役を演じた濱田岳さんはすごかったです。目線、空気、少ない言葉だけで、あんなに感情って揺さぶられるものなんだと驚きました。こんな貴重な経験を、初めてのドラマで経験できたのは自分にとって大きなことでした。

――ご自身の出演した作品は観ますか?

珠城 映画やドラマは観るんですけど、昔から舞台の映像を観るのが苦手なんです。映像だと客観的に観られるんですけど、舞台はそれができなくて……。両親が「舞台は目の前にいるから、心配だとか、いろんな感情があって、作品に集中できない。ドラマや映画だと作品として普通に観られる」と言っていたので、それと同じような感覚なのかもしれません。

Information

ミュージカル『天翔ける風に』

【東京公演】
[日程] 2023年9月29日(金)~10月9日(月・祝)
[会場] 東京芸術劇場 プレイハウス

【兵庫公演】
[日程] 2023年10月13日(金)~15日(日)
[会場] 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

【豊橋公演】
[日程] 2023年10月19日(木)~22日(日)
[会場] 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール

演出・振付:謝珠栄
原作:ドストエフスキー
脚色:野田秀樹『贋作・罪と罰』より
出演:珠城りょう 屋良朝幸
今拓哉 東山義久 原嘉孝 加藤梨里香
駒田一 剣幸
加藤翔多郎 川勝太地 川原田樹 榊海塔 高瀬育海 望月凜 吉田朋弘
ミュージシャン:辻 祐(太鼓) 匹田大智(津軽三味線)

空高く昇ろうとする理想が地の現実に頭を垂れている。誰か何かをしなくては。誰かこの世を救わなくては……。三条英(珠城りょう)は、理想を夢みる江戸開成所に通う塾生。彼女以外は全て男という社会で孤軍奮闘している。英は、生活が苦しい人々から法外な利息を取る高利貸しの老婆の殺害を計画するが、偶然そこに居合わせた老婆の妹までも殺してしまう。この予定外の殺人が英の心を大きくかき乱す。英と同じ志を持つ、才谷梅太郎(屋良朝幸)は、動揺する英の様子に気づき、彼女を陰ながら心配するが、才谷も大きな時代の流れの中心にいるのだった。

公式サイト

珠城りょう

1988年10月4日生まれ、愛知県出身。2008年、宝塚歌劇団に94期生として入団。月組公演『ME AND MY GIRL』で初舞台。16年、入団9年目で月組トップスターに就任。近年では極めて異例のスピード出世となった。2021年8月、『桜嵐記/Dream Chaser』東京公演千秋楽をもって、宝塚歌劇団を退団。退団後の活動は、舞台では『8人の女たち』(22年)、珠城りょう1st concert『CUORE』(22年)、舞台『マヌエラ』(23年)、ドラマ日曜劇場『マイファミリー』(22年 TBS)、日曜劇場『VIVANT』(23年 TBS)、映画『わたしの幸せな結婚』(23年)など。また22年10月、オリジナルアルバム「Freely」、カバーアルバム「Shine」でアルバムデビューを果たし、コンサートツアー「RYO TAMAKI LIVE TOUR 2022~Freely~」を開催した。

PHOTOGRAPHER:YU TOMONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:TOMOMI KAWAKAMI(Rouxda.),STYLIST:KOUHEI KUBO