それぞれがお芝居でやりがいを感じる瞬間とは?
――最後に、それぞれお芝居でやりがいや楽しさを感じる瞬間を教えてください。
辻本 現実とは全く違う世界を、みんなで没頭して紡ぎ上げて、完成した作品を観たときに、本当にその世界になっているのは、すごいことだなと。本当は存在しない世界を、子どもから大御所の方まで全力で演じることって、日常生活だったら恥ずかしいし、「そんなことやれねえよ」となってもおかしくない。それをみんなで一生懸命作って、ときには命をすり減らすような撮影もする。そうして完成した作品によって、観た人たちの心が動いたり、感動したりするのはすごいことだし、素敵なお仕事だなって改めて思ったんです。
――そう思ったきっかけがあったんですか。
辻本 僕はコロナ禍の自粛期間中、映画ばかり観ていて、そのときに思いました。それまでは、ただただ面白いから観ていたんですけど、ちゃんとお芝居を自分の仕事にしなきゃと思った上で、たくさん映画を観ていたら、そういう思いが強くなりました。これまで僕はバラエティーを中心にやってきたんですけど、バラエティーって時を経て観返される機会って少ないじゃないですか。でも映画やドラマは、時代や世代を超えて観てもらえて、同じように感動してもらえるのはすごいことだなと。
本田 僕はお芝居を通じて、いろんな人生を歩めるのが面白いお仕事だなと思いますし、たとえば渡辺徹さんの人となりを知っていても、ドラマや映画に出演している姿を観ると、ちゃんとその人物に見える。僕自身、役を演じていて、自分という意識がなくなる瞬間が大切だと思いますし、そういう状態のときは良いお芝居ができている証拠。そういったシンクロ率が高い状態で作品に向き合うときにやりがいを感じますし、自分が本田剛文なんだという認識がなくなっていくのが面白いです。
勇翔 想定外のことが起きたときに、お芝居の楽しさを感じます。台本を読んだときに、相手がどう来るのかを自分の中で想像しますが、実際に演じてみると想像と違うことがほとんどなんです。そうやって想定していなかった何かが起きたときは、みんなで良いところに近づいている証明になっている感じがして、その瞬間、ここまで頑張ってよかったなと思います。たとえばアクションにしても、事前に段取りはしていますけど、途中から気持ちがどんどん上がって、実際に当たっちゃったりするんです。それだけお互いが役に入り込んでいる証拠だし、すごく緊迫したシーンに繋がるんですよね。
平松 正直、まだまだ僕はお芝居自体がストレスで、これで本当に合っているのかって不安のほうが大きいです。それって大御所になっても変わらないと思いますし、「もっともっと!」と突き詰めていく職業なので正解もないと思います。ましてや、まだまだ経験の少ない僕が、お芝居にやりがいを感じられる次元にはいないのかなと。ただ出演した作品が公開されて、ファンの方やいろんな方に観ていただいて、「頑張ろうと思いました」といった声をかけてくださった瞬間、誰かの心を動かせたんだ、何かを気づいてもらえたんだと感じたときに、やりがいを感じます。
Information
『SOMEDAYS』
好評公開中!
西尾まう 勇翔(BOYS AND MEN)
辻本達規(BOYS AND MEN)/本田剛文(BOYS AND MEN)/平松賢人(BOYS AND MEN)
伊藤一正/池田拓矢/田中杏/富安基晴/西村光久
大場泰正/倉野章子/西村知美/東ちづる/渡辺徹
監督・撮影:曽根剛
脚本:森田剛行
「お母さん絶対だよ?絶対に迎えに来てね」。児童養護施設に預けられる幼い姉の松平香(西尾まう)と弟の松平勇人(勇翔)は、すぐに母親が迎えに来ると思っていたが、母が迎えに来ることはなかった。年齢で養護施設を退園した香と勇人は、二人で母親を探しながら社会の片隅で懸命に生きていた。ある日、育った養護施設の廃園が決まり、閉園式の手紙が二人の手元に届いた。閉園式でかつての仲間、佐藤良太(辻本達規)、渡辺洋介(本田剛文)、西川光(平松賢人)と再会する。プロのダンサーを目指して施設の庭で夜、ダンスの練習をしていた5人だったが、生きていくためにいつの間にか夢を追いかけるのをやめていた。しかし、光だけはインディーズのダンスグループで夢を追いかけていた。ダンスグループ「SOMEDAYS」に初めてのオファーが入り、自分たちのように喜んだ香たちだったが、そのグループは仲間割れで解散してしまっていた。「だったら俺たちが一緒にやってやるよ!」。良太の一言で即席の「SOMEDAYS」が(再)結成された。
PHOTOGRAPHER:YUTA KONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI