“三刀流”の肩書きはパラレルキャリア時代のお手本に
――現状、事業の核はアイドルグループ「new+on」のプロデュースです。
山 芸能活動を一時休止した時期があり、当時、芸能界を辞めていく子たちを見て「もったいない」と思ったのがきっかけでした。グループ結成にあたり、最初に声をかけたのは、友人で元声優の赤園まりなちゃんです。Twitter(現・X)で「歌が大好き」と書いていたので「アイドルをやってみない?」と誘ったら、オッケーしてくれて。その後は、SNSやオーディションで、他のメンバーを集めました。
――2023年8月。グループの初ステージを迎えるまで、経営者、プロデューサーとしての大変さもあったのではないかと。
山 大変でした。スタッフとのやり取りでは、本番が近づく中で連絡がスムーズに行かず、焦ってしまうことも多くて。何があっても「すべての責任は自分」と捉えていたんですけど、会社経営をする友人が「経営とはそういうもの」と励ましてくれて、自分で手を動かせば楽ですけど、「人を動かさないと、組織の成長はない。だから、マネジメント能力も必要」と教わりました。
――タレント活動もありますし、経営者、プロデューサーと合わせての“三刀流”ですね。
山 大変ですけど、やりがいはあります。メンバーがステージで成長していく姿に、感動するんです。今のメンバーは全員、ラストチャンスとしてグループを選んでくれたので、真摯な姿勢を見ると「こちらもきちんと向き合わなければ」と気持ちも引き締まります。
――今後への課題は?
山 マネジメントでは、常に課題を抱えています。例えば、プロデューサーではありながら、同性ですし、メンバーと友人感覚で接してしまう瞬間があるんです。一定の距離感が必要な場面もありますし、適切な振る舞いをいつも考えていて。仕事のキャパシティも余裕がないときがあり、上手に現場を回せるようにしなければいけないと思っています。でも、常に「より忙しく」を求めてしまうので、頑張ります(笑)。
――“三刀流”の肩書きで、それぞれの目標は?
山 プロデューサーとしては近い将来、new+onが“Zepp”の客席を満杯にできるように、グループを成長させていきたいです。起業当初から理念に「言葉の力でみている人を救ったり、明日ももう少しだけ頑張って生きてみよう。」を掲げてきたし、グループやメンバーを通して「自分も頑張ろう」「もう少し強く生きてみよう」と、思っていただけるのが理想です。経営者としては、白壁の空間で若手クリエイターの作品を購入できる「ホワイトスペース」を作る夢もあります。タレントでは、高校3年生で立てた「25歳での朝ドラ出演」を叶えてみたいです。ただ、どれもバラバラではなく、繋がりを持たせながら活躍できればと思います。
――複数の肩書きを持つパラレルキャリアも注目される時代で、まさに実現していますね。
山 相乗効果はあります。タレントでのオーディションでは会社経営の経歴に好印象を抱いてくださる方がいますし、グループの現場に私のファンの方が来てくださった場合もありますし、その逆もありました。ただ、肩書きはまだ、どれもしっくり来ないんです。会社で「優香さん」と呼ばれているのが、一番ホッとします(笑)。でも、新しく没頭できる何かを見つけたらそっちにも突っ走るでしようし、新たな肩書きも加わるかもしれません。私が起業してから、周囲では独立した友人も増えたので、みんなに負けないように頑張ります!
PHOTOGRAPHER:TOMO TAMURA,INTERVIEWER:SYUHEI KANEKO