フィジカル面を意識した過ごし方によって、気持ち的な部分もライブに出る

――地域によってリアクションの違いはありますか。

高橋 けっこうありますね。そこが面白さでもあります。

――県民性みたいなことでしょうか。

高橋 そういう部分もあるかもしれませんし、その日の天気や気圧、曜日によっても違う気がしますね。富山と石川に行ったときのことを例に出すと、「北陸の人たちはシャイな人が多い」と地元の方に聞いたんです。実際ライブが始まると、ギターの弾き語りというのもあって、「どういうライブのやり方で来るの?」みたいな、様子を伺っている雰囲気を感じました。この時点で、他の地域と違うんですよ。関西だったら、最初から「イエー!高橋」みたいなノリだったりしますから。富山と石川は前半が静かな印象で、しっかりと丁寧に見て聴くというか、拍手をするときも深い拍手をしてくれるんですが、僕が喋り出したらさっと拍手を止めてくれるんです。そこも土地によって違っていて、僕が喋り出してからも、拍手をしながら歓声を送ってくれる方もいます。そこが北陸の方はメリハリがあるんですよね。でもライブが後半に進むにつれて、感情を抑えられないのが伝わってくるんですよね。僕自身、2024年における北陸がどういう場所なのかは理解しています。でも僕は、そこを押し付けるつもりはないし、変に湿っぽい雰囲気にするつもりもないから、あくまでも自分のスタンスで、今までやってきたツアーの延長線のことをやっていたんですけど、客席から思いが溢れ出たときの空気感が、どの地域とも違っていて。一気に爆発したみたいな盛り上がりがあって、ステージの音がかき消されちゃうぐらいの声援が印象的でした。

――盛り上がりが目に浮かびます。

高橋 僕もプロとしてよくないことかもしれないけど、日によってテンションが違います。やっぱり人間なんで、同じ曲を、同じコード進行で、同じ歌い方で歌っても、その時々で気持ちが違ったりするし、そこが自分でも面白いなと感じます。今回のツアーは弾き語りというのもあって、路上ライブをやっていたときのような懐かしさもありますね。

――ツアーで地方に行ったとき、リハーサルやライブ以外の時間はどう過ごすことが多いんですか。

高橋 僕の場合は前日入りさせてもらって、その土地の特徴が分かるような観光スポットであったり、有名じゃなくても自分が気になった場所に行くようにしています。石川で言うとレンタカーを借りて、ライブをやった小松市ではなく、金沢市にある「つば甚」という料亭に行きました。270年以上の歴史を持つ、過去には伊藤博文さんなども食事をした料亭です。富山だと、“日本一のイケメン大仏”と言われている高岡大仏を見に行ったんですが、その日のライブのMCで「大仏をイケメンと言ってる人たちに罰が当たるんじゃないか」というお話をして。なぜなら、その大仏をイケメンと言うと、それ以外の大仏をディスることになるだろうって僕なんか思っちゃうんですよね(笑)。そうやって土地ならではの場所に行くことで、それにまつわるお土産話もできるんです。

――歴史的な建造物がお好きなんですか?

高橋 好きですね。地方でジョギングをするときはグーグルマップなどを見て、宿泊するホテルの近くに公園があるんだとか、ここにお城があるんだとか、事前に目的地を決めるんです。そうすると自然と古い建築物を設定することが多くなるんですよね。

――ツアー先でもジョギングするんですね。

高橋 そうですね。今はそこから派生して、どこかに行くことが優先になっちゃって、タクシーを使うときもあるので、走らないで終わるときもあります。20キロ先に目的地があって、そこまで走ったこともあるんですが、あくまでライブ優先じゃないですか(笑)。20キロも走っちゃったら、本番中に足の裏が痛かったりもするんですよ。そこは頃合いを見て、走って行ったり、タクシーで向かったり。奈良に行った日は雨だったんですけど、雨に濡れながら走って、奈良公園や奈良の大仏を見てきました。

――本当にアクティブですね。

高橋 一緒にツアーを回っているスタッフから「無双ですね」と言われました。というのも、その土地の空気を吸う、思い出作り、MCで話すという目的のために手段を選ばなくなっているんです。だって一人で顔はめパネルで自撮りまでするんですよ(笑)。でも、そこに恥ずかしいという感情を入れちゃうと大抵失敗するんです。「やっぱやめとこうかな」と思うときって大体面倒くさいか恥ずかしいかなんですよ。でも絶対やらない後悔より、やる後悔のほうが面白い話になるんですよね。「後悔するのでやらなかったです」なんてMCで話しても何も言ってないのと同じじゃないですか。だから今回のツアーも今のところは全ての土地で何かしらやっています。あまり言い過ぎるとハードルを上げてしまいますが(笑)。

――お土産品も買ったりするんですか?

高橋 買いますが大体スタッフにあげますね。今回のツアーで自分用に買ったのは、茨城県にある牛久大仏のミニチュアとコロ助のぬいぐるみだけです。

――コロ助って『キテレツ大百科』のですか?

高橋 そうです。高岡は藤子・F・不二雄先生の出身地で、街のいたるところにキャラクターの銅像があって、『ドラえもん』に登場する空き地を模した公園もあるんです。僕は「藤子・F・不二雄ふるさとギャラリー」に行ったんですが、そこのお土産コーナーにコロ助の原寸大ぬいぐるみが売っていて、4,060円だったんですよ。これは買いだなと思って購入しました。

――ツアー中は東京に戻ったときの過ごし方も普段とは違いますか。

高橋 違いますね。フィジカル面を意識した過ごし方によって、気持ち的な部分もライブに出るんですよ。ライブに来てくれる人たちは、僕が声を出して歌うだけでも、「高橋優の歌を聴いた」という気持ちになってくれるかもしれない。でも自分としてはナーバスな気持ちだったりすると、それが歌にも出ちゃうんですよね。大好きな友達とたくさん会って、すごくメンタルが良いときだと、ライブも明るくなるんです。それぐらいライブじゃない日の過ごし方が、大きくライブに影響するんです。ライブの日だけかっこつけても、絶対にかっこつかないんですよ。だから食事や運動など、日頃の生活を大事に過ごすようにしています。

Information

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「キセキ」
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2023年12月より2024年7月まで、自身初となる47都道府県を巡る弾き語りツアー『高橋優 初の47都道府県弾き語りツアー 2023-2024「ONE STROKE SHOW〜一顰一笑(いっぴんいっしょう)〜」』を開催中。

公式サイト

高橋優

1983年12月26日生まれ。秋田県横手市出身。札幌の大学への進学と同時に路上での弾き語りを始める。2008年、活動の拠点を東京に移す。2010年4月、デビュー前に「福笑い」が東京メトロCMソングとして大抜擢される。同年7月、シングル「素晴らしき日常」でメジャーデビュー。2013年11月24日、初の武道館公演を開催。2015年7月、地元・秋田県より「あきた音楽大使」に任命される。2016年より高橋優主催の野外音楽フェス「秋田CARAVAN MUSIC FES 2016」を開催(以降、9月に持続的に開催)。

INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI