目的なく旅に出て、自分から刺激を迎えに行って、新しい景色を見てみたい

――初めて完成した作品を観た感想はいかがでしたか。

山﨑 自分が出ていないシーンも多かったので、普通にお客さんとして楽しめて、客観的に観ることができました。タエコが最後に表情を取り戻していくシーンは胸を締め付けられるような気持ちになって。私の場合は脚本を読み込んでいるので理解も深いですが、初見の方でもタエコの思いが伝わればいいなと思いました。正直、完成した作品を観るまでは、もっと難解かと思っていたんですが、最後まで観ると、ちゃんと全てが繋がっていて面白かったです。

――商業映画としては実験的な作品だと思いますが、商業デビュー作の監督が、ここまで自由にやれる場はすごいですよね。

山﨑 感動シネマアワードという企画ならではだと思います。世の中や今の映画界など、誰かに求められて作ったのではなく、監督の意欲で作ったからこその作品で。なかなか、こういう作品に出る機会はないので、貴重な体験が詰まっています。

――都楳監督は現在29歳の若さです。

山﨑 監督もそうですが、キャストもスタッフも若いメンバーが中心で、若いエネルギーがぶつかり合っていて、それがそのまま映像に出ているなと感じました。

――最後にプライベート、仕事それぞれで、今後チャレンジしたいことをお聞かせください。

山﨑 基本的にインドアで、お休みの日があっても、自分の最寄り駅までぐらいしか出かけないんですよ。だからプライベートで挑戦したいのは、旅に出ること。別に日帰りでもいいし、1泊2日でもいいし、国内でもいいから、思い立ったら一人で行きたいところに行くぐらいにフットワークを軽くしたいです。

――人混みが嫌な訳ではないんですか?

山﨑 自分の部屋が大好きなんでしょうね。ラグマットがふわふわで、こたつも居心地が良くて、引きこもるのに最適なんです(笑)。

――家で何をすることが多いんですか。

山﨑 映画やドラマを観たり、ご飯を作ったりですね。料理が大好きなんですよ。煮込み料理とか、玉ねぎの原型がなくなるまで煮込んだ無水カレーとか、手間と時間のかかる料理が好きで、午前中から鶏肉や豚肉をくたくたになるまで煮込んで、料理をしながらお酒を飲んで、とろ火にして合間に映画を観るとか。そういう過ごし方が私の中で至高の時間です。充実しているから、わざわざ家を出る意味がなくなっちゃうんです。でもインドアだと、どんどん豊かじゃなくなっちゃうような気がして……。

――だから旅に出たいと。

山﨑 あえて目的なく旅に出て、自分から刺激を迎えに行って、新しい景色を見てみたいです。特に見たいのはオーロラですね。さっとは行けないですが。

――一人旅の経験はあるんですか。

山﨑 高崎が舞台になった映画のオーディションを受けに一人で高崎まで行ったことがあります。湖や山に行って、景色を撮影したり、絵を描いたりしました。そうやってお仕事という目的があれば一人旅も行けるんですけど、オフだと腰が重くなるんです。

――お仕事はいかがですか。

山﨑 実在する人を演じてみたいです。今まで一度も経験がないんですよ。Netflixで『浅草キッド』を観たときに、柳楽優弥さんがビートたけしさんを演じていらっしゃって。最初は顔が全く違うと思ったんですが、観ていくうちにたけしさんに見えてくるんですよね。そのときに、こういうお芝居ができる俳優さんになりたいと思って。実在しないキャラクターを演じる楽しさもありますが、実在する人を違う角度から作り直すお芝居をやってみたいです。

Information

『夢の中』
アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開中

山﨑果倫 櫻井圭佑
アベラヒデノブ 金海用龍 森崎みのり
玉置玲央 山谷花純

脚本・監督:都楳勝
音楽:若狭真司 撮影:上野陸生 照明:佐藤仁 録音:五十嵐猛吏
美術監督:相馬直樹 衣装:中島エリカ ヘアメイク:藤原玲子 装飾:桑田真志
水中撮影:河瀬経樹 特機:後藤泰親 編集:岸川雄大
助監督:國領正行 制作担当:三谷奏 VFXスーパーバイザー:大見康裕
タイトル:田中佑佳 スチール:持田薫、北圃莉奈子、福田啓道
企画・プロデュース:菊地陽介
宣伝デザイン:鴨川枝理
企画・製作・制作プロダクション・配給:レプロエンタテインメント
配給協力:インターフィルム
©「夢の中」製作委員会

「俺のこと、ここで匿ってくれない?」血まみれで息を切らす男・ショウ(櫻井圭佑)に声をかけられたタエコ(山﨑果倫)。生気がなく虚ろな瞳の彼女は、部屋に入る彼に「私の最期、綺麗に撮ってください」とお願いする――。何から逃れてきたのか。その願いは本当に望んでいるものなのか。二人は時間を共有するうちに、夢とも現実ともつかない、お互いの感情と記憶が交ざり合う奇異な世界に引き込まれていく。タエコが、ショウが、目を背けてきたものを前に、表情を変えていく。何が本当で嘘なのか、当たり前と思っていたあの安らぎも、この苦しみも。

公式サイト
Instagram
X

山﨑果倫

1999年10月8日生まれ。愛知県出身。2015年レプロエンタテインメント×SonyMusic合同主催AD「DREAMGIRL AUDITION2015」合格し活動を開始。その後、舞台「ローファーズハイ」(浅草九劇)での公演で演技経験を積みドラマ・映画への出演の機会が増加。近年の出演作にはドラマ「隣の男はよく食べる」(2023/テレビ東京)、映画『死体の人』(2022/監督:草苅勲)、映画『おとななじみ』(2023/監督:高橋洋人)、ドラマ「君に届け」(2022/Netflix)などがあり、2024年には主演映画『輝け星くず』(2023/監督:西尾孔志)が全国公開予定。

PHOTOGRAPHER:YUTA KONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI