初めて『君は映画』の脚本を読んだ時点で、めちゃめちゃ面白くなる確信があった
――伊藤さんは2023年に出演したドラマ『時をかけるな、恋人たち』(23/関西テレビ)の脚本が上田さんで、劇団メンバーの石田剛太さんと共演、「リプリー」が本格的なヨーロッパ企画とのお仕事でした。
伊藤 『時かけ』の撮影現場に上田さんがいらっしゃって、そのときに初めてお話したのですが、上田さんは私が乃木坂46に在籍していたころから知ってくださっていて。その頃の歌がお好きだったそうで、「リプリー」でも歌唱シーンがたくさんありました。今回の映画もそうですが、昔から私に注目してくださっていて、肯定もしてくださるので安心感がありました。
――井之脇さんは「リプリー」が初めてのヨーロッパ企画とのお仕事でしたが、本読みから振り切ったお芝居をできるのはすごいですね。
井之脇 すぐにヨーロッパ企画さんの輪の中に入ることができるのか分からなかったので、とりあえずやってみようかという気持ちで臨みました。
伊藤 とりあえずやって、それがしっかり成立しているからすごいです。
井之脇 いやいや(笑)。声の大きさに関しては周りの人がでかいから、稽古でも本番でも「これぐらいの声量でやってみよう」と頑張っていたんですよ。そしたら本番の舞台を観に来てくれた友人が、「一番声がでかかった」と言ってました。みんなの真似をしてやっていたつもりが、一番でかい声だったみたいで。
伊藤 誰よりも声を出して、誰よりも動いて、誰よりも汗をかいていましたよ。
井之脇 とにかく、がむしゃらにやっていました。

――初めて『君は映画』の脚本を読んだときはどんな印象でしたか。
井之脇 すごい設計図が届いたなぁと。これは組み立てが難しそうというイメージでしたね。書いてあることは、なんとなく想像できるんですけど、あくまでも「なんとなく」。実際に現場に行ってみないと分からないことだらけでした。でも、なんとなくしか分からないのに、めちゃめちゃ面白い確信はあって。それは、マドカを万理華ちゃんが演じることや、ヨーロッパ企画の皆さんも出演することを知っている状態で読んだので、「このキャラクターが、このセリフを言ったら面白いな」と画を浮かべることができたんですよね。そういうキャラクター性と物語の推進力が上田さんならではの発想だなと感じました。
伊藤 「リプリー」のときもそうだったのですが、「こんなに面白いなんてどうしよう!」と興奮して、読みながら何度も笑いました。今回もすごい脚本だと思うのと同時に、どうやって撮るのだろうという期待がありました。
――伊藤さん演じるマドカと、井之脇さん演じるカズマ。面識のない二人が映画館のスクリーン越しに出会って、会話をすることで物語が進んでいきます。どのように撮影をしたのでしょうか。
井之脇 映画館でお互いがスクリーン越しに対峙するところは、映画上は別の空間ですけど、撮るときは一緒で。カメラの外にどちらかが立って、目線を合わせないようにしながら会話をしていました。
――そこから、どんどんお互いのストーリーは逸脱していきます。
伊藤 お互いの世界で、「頑張ってくるよ」という感覚でした。

――お互いのストーリーを意識し合うことはありましたか。
井之脇 事前に上田さんから、映画内映画はテイストを分けるとお聞きしたので、別物と考えていました。
伊藤 私たちは青春SFみたいなジャンルで、明るくて、希望もある。
井之脇 僕たちはハードボイルド的な要素が強い。
伊藤 “若さ”と“渋さ”くらいの差があり、カメラのフィルターも違うんですよね。
井之脇 万理華ちゃんたちのチームはユニークなキャラクターが揃っているので、絶対に面白くなるに決まっている。こっちはこっちでクライム・サスペンスをやっていこうみたいな意識だったので、「そっちは任せた」「こっちはこっちでやるよ」みたいな感覚でしたね。
伊藤 私は絶対に、そちらの世界には入れないタイプなので、こちらはキラキラ夢を持ってやりますと(笑)。ただ、マドカは劇作家ですが、早い段階で劇団メンバーとの対立があるので、そこのリアリティは大切にしました。上田さんご自身が劇作家だからこそ感じていることが、マドカのセリフにも宿っていると思って。マドカとカズマはあて書きですが、二人のことを考えながら必死にセリフを考えていらっしゃるのが伝わってきましたし、上田さんは愛の深い方だなと改めて思いました。
