同世代と話すときは、よく思われたいと思い過ぎちゃう
――“普通の人”を演じる上で、普段やっていることで活かされたものってありますか。
沢口 人間観察ですかね。私はこの業界に入るとき、「特技は何ですか?」と聞かれて、「人間観察です」って答えてたらしいんです(笑)。意識的にやっている訳ではないんですけど、人の行動や癖をすごく見てしまうんです。こういうお仕事をしていると、いろんな業種の人を見ますしね。それが今回役立ったというか、日頃から人間観察をしているからこそ、点と点の線を結びつけやすかったところはあります。
――普段から人とコミュニケーションを取るのは好きなんですか?
沢口 むしろ苦手ですね。年上の方は大丈夫なんですけど、同世代の人としゃべるのが苦手で。というのも同世代の人だと、よく思われたいと思い過ぎちゃうんですよね。同世代って同じような感覚を持っているから、もしかして、この言葉を使うと嫌って思われちゃうかな、傷つけちゃうかなと思ったら、言葉を出すのが怖くなるんです。
――実年齢より大人びた雰囲気というのは感じます。
沢口 15歳からこの業界にいて、ずっと大人の方が周りにいてくださったから、自然と引き上げられたのかな(笑)。
――まさに『札束と温泉』で共演する女子高生たちは同世代のキャストですけど、大丈夫でしたか?
沢口 すごくドキドキしたんですけど、別府に行く前の東京での練習期間中、帰りの電車が一緒になることが多くて。そのときにお仕事の話だけじゃなくて、プライベートなことも話しましたし、佐々⽊恵⿇役の⽷瀬七葉ちゃんは同じ愛知県出身ということで共通の話題で盛り上がって、別府に行ってからも気軽に話すことができました。
――先ほど長回しのワンカットで撮るというお話がありましたが、かなり綿密なリハーサルを繰り返したとお聞きしました。
沢口 大変でした!1カメで全てを映し切るには動線をどうしたらいいのかという技術面的な面も難しかったし、何度もリハーサルをやっていく中で、台本上にない感情も見つかって。感情的なものは各自が作り上げてきてきるんですけど、それをぶつかり合わせたときに、ちゃんと調和させなきゃいけない。そういう面も練習期間中、難しいなと思いました。
――場当たりで上手くやれても、現地に行かないと分からない部分も多いですしね。
沢口 そうなんですよね!一応、練習場もガムテープでバミッてはいたんですけど、実際に別府の温泉宿に行くと広さは段違いですからね。こんなに動けるんだとか、逆にこんなに狭かったんだとか、ちょっとずつ修正したり、変更があったりで、映画を撮る難しさを感じました。
――別府で遊ぶ暇はあったんですか?
沢口 日中は自由な時間が多くて、意外とありました。でも撮影を進めていく中で、役や台本のことが気になって、遊びどころじゃなくなって。結局、日中は部屋に閉じこもっていましたね。それか、いつも談話室にスタッフの方々が集まって、ほうじ茶をすすっていたので、そこに私も混ざってお話をしていました。
――ちなみに沢口さんだったら、目の前に札束が落ちていたらどうしますか。
沢口 私はリサと一緒でくそ真面目なので、交番に届けます。ただ自由に使っていいよと言われたら、大好きな弟と海外旅行に行きます。