菅野祐悟監督を観察して、癖や雰囲気を研究した

――映画『REQUIEM~ある作曲家の物語~』で主人公の作曲家・城島匠を演じていますが、平岡さんは公式サイトで、撮影初日に経験したことのない撮影スタイルに戸惑った、とコメントしています。どのような撮影スタイルだったのでしょうか。

平岡祐太(以下、平岡) 初日に城島の親友・神野慎吾(けいちゃん)の車椅子を押して湖のほとりを歩くシーンの撮影があったんですが、約20mの距離の中でセリフを全部言ってくださいという指示があったんです。それを頭に入れて撮影していたとき、ふと見たら、カメラが僕たちとは別の方角を向いていたんです。そういうことが幾つもあって、斬新過ぎて一体何を撮ろうとしているのか分からなかったんですよね。

――人物の切り返しも独特のスタイルですよね。

平岡 きっちりミリ単位まで計算していましたからね。菅野祐悟監督がカット割りを考えているときに、撮影が止まることもあって、全編に渡ってビジュアルへのこだわりを感じました。

――菅野監督の第一印象はいかがでしたか。

平岡 打ち合わせのときに初めてお会いしたんですが、芸術家っぽい佇まいで、「とにかく今までに観たことのない、かっこいいアート映画を撮りたいんだ」と仰っていて、まさに城島匠のような印象でした。

――菅野監督は城島に自分自身を投影していたのでしょうか。

平岡 本人は「違う」と仰っていましたが、僕はあると思います。だから菅野監督を観察して、癖や雰囲気を研究しました。途中で「僕をやってるの?」と気付かれましたが(笑)。本編で、菅野監督のWikipediaに掲載されている写真で着用している服を、実際に僕が劇中で着ているんですよ。当初は予定していなかったんですが、「なんか違うな……」ということで菅野監督がご自身の服を持って来て。それなのに城島は自分と違うと言っていたのが不思議でした。

――『REQUIEM~ある作曲家の物語~』は菅野監督にとって長篇映画監督デビュー作になりますが、どのような演出でしたか。

平岡 お芝居に関しては委ねてくれるので、生意気ですけど「こういうのはどうですか?」と僕から提案することが多かったです。自然な喋り方を求められていたようだったので、「今のはお芝居っぽいね」と言われることもありました。

――平岡さんがピアノを弾くシーンもありますが、実際にご自身で弾かれていますよね。

平岡 けいちゃんさんとの連弾も、ちゃんと自分で弾いています。クランクインの前に菅野監督のスタジオに行って練習させていただきました。もともと少しは弾けるんですが、手元も映すので難しかったですね。