コシノアヤコさんは「与えてもらうより与えること」という精神の持ち主
——2023年に初舞台から50周年を迎えた大地さんですが、『ゴッドマザー~コシノアヤコの生涯~』が映画初主演というのは意外でした。
大地真央(以下、大地) 舞台、テレビドラマで主演をやらせていただいたことは何度もありますが映画は初めて。しかも世界的デザイナーであるコシノ三姉妹を育てられたお母様のコシノアヤコさんの15歳から92歳までの生涯を一人で演じるということで、最初はおこがましいなと思ったんです。ただアヤコさんに関する書籍を拝読しているうちに、魅力的で面白い方だと感じまして、「やらせていただきます」とお返事させていただきました。
——アヤコさんにはどんな印象を受けましたか。
大地 一言で言うとゴッドマザーですね。「何かを始めるのに遅いなんてない」と74歳で、ご自分のブランドを立ち上げられていますし、いつの時代も「向こう岸、見ているだけでは渡れない」とバイタリティにあふれていて、本当に刺激を受けました。「与えてもらうより与えること」という精神の持ち主で、誰に対してもウェルカムな愛のある方で、子育ても「放任主義」とか「ほったらかし」とか言いながらも、三人のことを深く考えていて、一家の大黒柱としても職業婦人としても活躍するところがすごいなと思いました。
——年齢の幅を演じ分けるために、どんな役作りを意識しましたか。
大地 これまでも舞台ではガブリエル・シャネル(ココ・シャネル)の12歳から72歳まで、マリー・アントワネットの十代から三十代までを演じたことはありましたが、今回は映像ですから難しさも感じました。ただ、オファーをいただいたときに「一人の生涯を一人の役者が演じることに意味がある」と仰っていただいて、それぞれのシーンごとに年齢や時系列などを書いて、自分の中でイメージを膨らませていきました。あとは亡くなる直前の92歳の老けメイクや体の動きなど、私なりに工夫もしました。
——それぞれの年齢で変化するウィッグや衣装なども印象的でした。
大地 ウィッグは幾つも使いましたし、前半はお着物が中心ですが、後半はお洋服の時代になって、晩年のシーンでは実際にアヤコさんが着用されていたお洋服を、私のサイズに合わせてくださって、着用させていただきました。三姉妹を演じた方々も、それぞれご本人が実際に着ていらしたお洋服を着ているので、その点もお楽しみいただけると思います。ただ見た目以上に、アヤコさんの心情や、その年齢の仕草や躍動感を意識しました。アヤコさんは小さい頃からおてんばで、男の子と喧嘩しても勝つようなやんちゃな女性だったので、そういう部分も表現しようと努めました。戦前・戦中・戦後、平成と時代も大きく変わっていく中で、アヤコさんがどういう心情で一家の大黒柱として、母として、職業婦人として、どう生きてきたか。関西ノリのちょっとした抜け感や、クスッと笑えるところもありながら、しんみりしたり、じわっときたりという感情の移り変わりが120分の中にギュッと詰まっています。非常にテンポよく仕上がっていますので、お客様に楽しんでいただいて、アヤコさんの魅力が伝わればうれしいです。