ずっと宇宙人の役を演じるのが夢だった
──舞台『W3 ワンダースリー』のオファーを受けたときのお気持ちはいかがでしたか?
永田崇人(以下、永田) ずっと宇宙人の役を演じるのが夢だったんです。変ですよね(笑)。上京して俳優の養成所に通っていた頃から、いつかゾンビと宇宙人をやってみたいなと思っていて、「マジで宇宙人役が来たぞ!」と。しかも手塚治虫先生の作品ということで本当にうれしかったです。
――永田さんは過去に上演されたセリフを一切使わないノンバーバルの舞台『Amazing Performance W3(ワンダースリー)』もご覧になっているそうですね。
永田 演出が今回と同じウォーリー(木下)さんで、友達も出演していたので観劇したのですが、ノンバーバルの舞台を観ること自体が初めてで。ダンスやアクロバット、パントマイムやボイスパフォーマンスなどで魅せていくのですが、言葉を使わなくてもメッセージが伝わってきて感動したのを覚えています。
──今回の舞台は人形劇の要素も取り入れています。
永田 『Amazing Performance W3(ワンダースリー)』でも人形を使っていたのですが、そのときは俳優さんが動かしていたんですよね。今回は人形操演の方が人形を動かすので、また違った試みです。僕の舞台デビューは『ONE PIECE LIVE ATTRACTION “Welcome to TONGARI Mystery Tour ”』という作品で、今はなくなってしまった東京ワンピースタワーというアトラクションテーマパーク施設のショーだったんです。そのときにトニートニー・チョッパーが人形で、動かしていたのが養成所で一緒だった友達で、間近で人形に命を吹き込む様を見ていました。またウォーリーさんとやった演劇『ハイキュー!!』でも、僕が演じた孤爪研磨の幼少期は人形で。振り返ってみると、人形に縁があるので、今回も楽しみです。
──原作の『W3』を読まれたときの読後感はいかがでしたか?
永田 時々恐ろしくなるんですが、人間って当たり前に環境を破壊していますけど、本当に野蛮だなと自分も含めて思うんです。もともと地球は人間のものでもないのに、人間が生きやすくするために改造しているなと。先日、僕の住む家のベランダに虫さんが迷い込んできたんですが、それも本来だったら、もっと自然豊かな場所に休めるところがあったのかもしれない。そんな自分本位の人間だけど、素敵なところもたくさんあるんだという手塚先生の思いが込められていて。60年前に作品が描かれた当時は、ベトナム戦争の真っ只中でしたし、手塚先生が戦時中に経験されたことも作品に入っていると聞いたことがあります。今も世界では戦争が行われていますが、どんな状況でも誰かに対して思いやれる人間は素敵だというメッセージは普遍的だなと感じました。
――永田さんは今年1月にも手塚作品が原作のリーディング音楽劇『ジャングル大帝』に出演しました。
永田 去年も手塚先生の『新選組』が原作のドラマ『君とゆきて咲く〜新選組青春録〜』(テレビ朝日)に出演させていただきましたし、同時期に『ブラックジャック』(テレビ朝日)も24年ぶりにドラマ化されて。こういう不安定な世界情勢の中で、手塚先生の作品は必要とされているんでしょうね。
──今回の脚本を初めて読んだときは、どんな印象でしたか?
永田 一人ひとりが世界をより良くするためにできることって、ほんの小さなことかもしれないけど、大切なのは自分の周りの人を思いやることであり、僕らが世界や未来にできうる精一杯の行動なんじゃないかと。それがバタフライ・エフェクトのように広がっていくというメッセージを感じてウルッときました。個人的に好きなシーンは、手塚作品の常連キャラクターであるランプさんの頭に、なぜローソクがついているのかが掘り下げてあって、それも感動的なエピソードでした。