自分に境遇が似た役を演じる機会はなかなかないので楽しみだった

――映画『青春ゲシュタルト崩壊』の出演が決まったときのお気持ちからお聞かせください。

渡邉美穂(以下、渡邉) 昨年、『あたしの!』で、映画初出演で初W主演を経験させていただいたのですが、期間を空けずに、またW主演をやらせていただけるとは思っていなかったので素直にうれしかったです。また私の演じる間宮朝葉が女子バスケ部員で、私も小学1年生から高校3年生までの12年間バスケをやって、キャプテンも務めたことがあったので、その経験が活かせるのも楽しみでした。自分に境遇が似た役を演じる機会はなかなかないですからね。

――W主演のプレッシャーはありましたか?

渡邉 ありました。まだW主演は2本目なので経験も浅いですし、現場を引っ張らせていただく立場なので、しっかりと役を全うできるように頑張りたいと意気込んでいました。

――撮影に向けて、バスケの練習はしましたか?

渡邉 日頃から家でボールを触るようにしていますし、週に一回はバスケもやっているんですが、この撮影に向けて、家の近くにバスケットゴールが設置された公園があったので、一人で早朝に行って、知らない人たちに混ざって、黙々とシュート練習をしました。撮影本番でもすんなりシュートが入って、普段通りにできたのが良かったです。

――初めて原作を読んだとき、「狭い世界で過ごしていた十代の頃をじんわりと思い出しました」というコメントを出されていましたが、具体的にどういうことを思い出したのでしょうか。

渡邉 バスケ部時代のことなんですが、若い女の子がたくさん集まると、どうしても人間関係でこじれることもありますし、朝葉はキャプテンを任されることに乗り気ではなかったですが、私も自分でリーダーシップがあるタイプとは思っていなかった中でキャプテンになったので、その気持ちが痛いほど分かったんです。それで周りと上手くコミュニケーションが取れなくなったり、適切な距離感が掴めなくなったりした十代の頃を思い出しました。

――キャプテンだと同級生と後輩の板挟みになることもありますしね。

渡邉 そうなんです!今となってはたいしたことではなかったのかもしれないですけど、10代の頃の自分は板挟みになっていっぱいいっぱい。でも逃げ場のない状況だったりします。それってバスケ部のキャプテンだから特別という訳ではなく、朝葉のように悩んでいる十代の人たちは、たくさんいるんだろうなと思います。

――朝葉は「顔のパーツは分かるのに⾃分の顔だけが認識できない」などの症状をもたらす「⻘年期失顔症」を発症します。架空の症状ではありますが、繊細な演技を求められたかと思います。

渡邉 原作を読んだときに胸が締め付けられるような思いになったのですが、いざ演じるとなると本当に難しくて。現場でたくさんの意見をいただいたり、撮りながら「もっとこうしたほうがいいかもね」とディスカッションしたりと、監督やプロデューサーを始め、周りの皆さんと考えながらお芝居をさせていただきました。精神的にしんどいからといって、必ずしも気分が落ち込んで、常に悲しい表情をしている訳ではありません。特に朝葉は世間体を気にする子なので、周囲に悟られないようにと辛いけど笑ってごまかして取り繕ってしまいます。本当は調子が悪いのに、心配させまいと気丈に振る舞うみたいなことは誰しもあると思うんですよね。もちろん私も経験はありますが、それをお芝居で表現するのが難しくて。わざとらしく見えないか、しっかりと確認していただきながら、大切にやらせていただきました。