大学時代に知ったセッションという文化に衝撃を受ける
――まずはウチムラさんの音楽遍歴からお伺いできますか。
ウチムラユウキ(以下、ウチムラ) 4歳ぐらいからクラシックピアノを始めて、並行してエレクトーンもやっていました。ピアノはコンクールにも出ていましたし、エレクトーンは他の子たちとアンサンブル(合奏)することもあって、大きいホールで演奏することもありました。ピアノの先生からは、「自分の世界があるから、どんどん弾いたほうがいい」と言ってもらったのを覚えています。
Novel Core いい先生だね。
ウチムラ 小学校の高学年になると、既存の譜面ではなくて、自分で作曲して譜面を書くというコースにも通い始めて。毎週、作曲のレッスンがあるんですけど、1週間に1ページずつ新しい譜面を作っていかなきゃいけなくて、そのときに組曲みたいなものを作ろうと思ったんです。それで『ONE PIECE』の影響で“海賊”をテーマにしたんですが、第一章は「旅立ち」で、そこから街に着いて、「ちょっと乾杯します」みたいな曲があって、次は「戦いのシーン」みたいな(笑)。
Novel Core すげー!ちゃんとした構成だ。
ウチムラ でも子どもなので難しくて縮こまっていたら、クラシックの先生がいろいろヒントをくれて。『ドラクエ』のCDなんかを「こういうのもあるんだよ」と聴かせてくれて、ところどころ参考にしながら、なんとか完成させて発表しました。妹もピアノをやっていて、僕よりもアカデミックに学んでいたんですが、一緒に連弾することもありました。

――当時、影響を受けたクラシックの作曲家はいますか。
ウチムラ 弾いていて楽しかったのは、クラシックでもロマン派と言われるリストやショパン。機械的ではなくて、感情を乗せやすい曲が今でも好きですね。ただ、めちゃくちゃ難しくて、フィジカルが必要なので、かなり練習していました。
――クラシックからポップス寄りになっていったのはいつ頃ですか。
ウチムラ 大学時代に初めてバンドという形態での演奏をやりました。そもそも中学・高校と陸上部で長距離の選手だったんですが、駅伝もやっていたんですよ。
Novel Core そうだったの?知らなかった。
ウチムラ ピアノも中学までは続けていたんですが、「ピアノは好きだけど、スポーツもできないと男子としてどうなんだ」みたいな発想になっちゃって(笑)。たまに家で一人、ピアノとエレクトーンを弾いたり、合唱の伴奏を担当したりすることはあったんですが、高校時代は陸上部に軸足を置いていて。駅伝では第一走者が多くて、まず流れを作っていくタイプでした。
Novel Core 初めて聞くエピソードだ。
ウチムラ スポーツって結構、音楽とつながると思うんですよ。体を動かすのもそうだし、個人的に運動神経がよくないとリズムも感じられないんじゃないかなと思っていて。だから結果的に部活の経験も音楽に生きたのかなと思っています。今、走ることは全くないですけどね(笑)。
Novel Core 一緒に走ろうよ(笑)。

――大学で初めてバンドを経験したときはキーボードですか?
ウチムラ それが最初はトランペットだったんですよ。実は小学校のときにマーチングバンドでトランペットもやっていて、ソロやソリなんかも任されていました。中学・高校はやらなかったのでブランクはあったんですが、大学で再開して。そのときにやったジャンルがR&Bやソウルで、スティーヴィー・ワンダーやインコグニートなどの曲を仲間とやっていました。自分はクラシックから来たので、そういう音楽を全然知らなかったんですけど、パッと聴いたときにおしゃれでかっこいいなと。他のバンドとも毛色が違っていて、ホーンセクションにトランペットが2本いて、サックスもアルトとテナーがいて。ただ、トランペットってめちゃくちゃ難しい楽器なんです。まず音を出すのが難しい。それで、「もう一回、鍵盤に戻りたいな」という気持ちになって、そこから切り替えて鍵盤をやるようになりました。
――ホーンセクションと鍵盤以外は、どんな編成だったんですか。
ウチムラ ボーカル、ギター、ベース、ドラム、さらにコーラス隊もいる大所帯の編成でした。僕が鍵盤をやり出したくらいから、ロックやジャズなど、いろんなジャンルを聴くようになって、カバーもするようになりました。
――たとえば誰のカバーをしていたんですか。
ウチムラ 鍵盤になって最初にカバーしたのがチャカ・カーンで、次がB’z(笑)です。
Novel Core いいね。B’zは鍵盤が大事ですよ。
ウチムラ どっちもパワー系なんですけど、B’zの曲はストリングスやピアノ、時代によってはシンセとかが印象的なんです。そこで「鍵盤ってこういう音色があるのか」と幅が広がって。そもそもトランペットをやっていた頃は、寝る間も惜しんで音楽にのめり込むというほどではなかったんですけど、鍵盤を始めたぐらいから、本当に夢中になっていって、より前のめりになりました。それまでコピーの経験も少なかったから、「このコードのときに、これを弾いたらかっこいいな」とアドリブを自分で探したりしていく中で、セッションという文化があることを知るんです。
友達に「セッションをやるから」と誘われて、その場でアドリブを弾いたときに、曲を用意して弾くのとは違う楽しさがあって。自分がそのときに感じたことや他の楽器から聴こえてきたフレーズに影響されて、感情直通で音が出るんですよね。聴いている人も含めて、どんどん音楽が進んでいく感じが楽しくて。その楽しさを知ったくらいから、ジャズにものめり込んでいきました。
