映画を通して「本当に大事な人、身近な人」と深くつながる大切さが伝われば

――本作には、どのような思い入れがありますか?

井桁弘恵(以下、井桁) 家族をテーマにした作品が好きで、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』とか、家族の絆を描いた作品に関わりたいという憧れはあったんです。本作は、父や姉妹の絆がテーマで、演じられてよかったです。演じた主人公の正実は、口調が強く破天荒に見えるけど、自分の感情を伝えるのが苦手なだけで、人間味のあるかわいいキャラクターでした。妹思いで家族思いだからこそ、気持ちが熱くなってしまうと不器用な伝え方になってしまうのは素敵でしたし、彼女のよさが伝わればいいと思って撮影していました。すっきりするところもあったし、楽しかったです(笑)。

――湯切りや盛り付けなど、ラーメンづくりにも挑戦していました。

井桁 実在の「三重食堂」さんをお借りして、お店の方にラーメンやスープの作り方を教わりました。湯切りはもちろん、スープとかえしを混ぜる工程は初挑戦で、難しかったです。ラーメンは好きで、撮影現場で食べましたし、空いている時間にスタッフのみなさんと食べ歩いた釜石ラーメンもおいしかったです。

――撮影で、思い出深いシーンは?

井桁 妹の仲良役の(池田)朱那ちゃんと、川を挟んで言い合う姉妹ゲンカのシーンです。想像以上に川の幅が広くて「これ、声が届かないんじゃない」と思いました(笑)。でも、不安はあったけど、本番ではおたがいの気持ちが演技に乗り、エネルギーがみなぎってきました。熱量のあるお芝居ができたと思います。

――撮影地・釜石の温かさも感じられる作品ですが、撮影現場の空気は?

井桁 今関(あきよし)監督がすごく穏やかで楽しそうで、生き生きとされていた姿に助けられていました。キャストの年代も様々で、父・剛志役の利重(剛)さんが本当のお父さんのように色々と教えてくださいましたし、撮影チームというより、地元の人たちで一緒にモノづくりをしているような空気感の撮影現場でした。

――鑑賞される方には、何を感じ取ってほしいですか?

井桁 個々の結びつきの大切さ、というか。何か大きな事件が起きる物語ではなく、小さな家族のささいな出来事を描いた作品ではあるんですけど、そこには色んな人の気持ちやエネルギーがあり、それぞれの思いが上手くからみあったとき、家族がまとまっていくんです。今、たくさんの人と繋がれるなかで、人と人との結びつきが浅く広くなっているという見方もありますけど、本当に大事な人、身近な人と深くつながれるかも大事だし、その大切さを感じてもらえるきっかけになったらと思います。