歌でお客様の心を動かすところは大事にしている部分
――ミュージカルを始められたのは、ご自身の意思だったんですか。
小池 最初はオファーをいただいて「じゃあチャレンジしてみよう」という感じで始まりました。宮本亜門さんが演出・振付を手掛けられた『メリリー・ウィー・ロール・アロング〜それでも僕らは前へ進む〜』という2013年の作品です。その時点でお芝居は10年以上やっていましたし、アーティスト活動もしていたので、今までやってきたことを合わせればなんとかなるだろうという気持ちが正直なところでした。『メリリー』は同世代の役者が集まった作品だったのですが、すでにミュージカルの経験を積んでいる実力のある方が揃っていて、歌いながらお芝居をするということがこんなにも難しいのかと思い知らされました。自分の実力不足を痛感したというか、オファーを受ける前にそのことを知っていたら、怖くて尻込みしていたかもしれません。歌い方一つとっても、それまでとは全く違う発声が求められましたからね。でも逆に何も知らなかったからこそ思い切って飛び込めたんです。ボイストレーナーと歌唱指導の方がついてくださっていて、毎回丁寧に練習を見てもらえるという恵まれた環境の中でどんどん吸収していけたんです。

――亜門さんの演出はいかがでしたか。
小池 すごく優しい方で、1対1で個別に演出をつけてくださることもありました。気持ちやパッションといった熱量が大事だという考え方をお持ちの方なので、初めてのミュージカルで分からないことだらけの僕でも、経験者の方々と一緒でも気負わずに、伸び伸びとやることができました。
――ミュージカルに出演する上で、大切にしていることはなんでしょうか。
小池 当たり前ですが、音楽が肝になるので、感情や場面転換もすべて歌で進んでいきますし、歌でお客様の心を動かすところは大事にしている部分です。表現力という意味でも、ストレートプレイとは違う感情の入れ方が求められます。

――ミュージカルを始めてから、どんな変化がありましたか。
小池 表現力もそうですが、技術的な意味の変化もすごくあったと思います。アーティストとして歌っていた頃は、1曲に対して思いを込めて、その日のライブにすべてを懸けるという感覚だったんです。ミュージカルの場合は長期間の公演があるので、毎回体調を万全にして歌わなければいけません。体調管理、公演全体を通してのエネルギーのコントロールという部分はミュージカルを通して、すごく勉強になりました。体力づくりという根本的な部分はもちろんですが、1回に全力を注ぎ込むというよりも、ある程度のアベレージを保ちながら全公演を無事にやり切るということも大事にしなければいけない。自分の体をコントロールできるようになったことは、大きな学びだったと思っています。
Information

ミュージカル『ETERNITY(エタニティ)』
東京公演:2026年7月10日(金)~7月26日(日) 東京建物 ぴあ シアター
名古屋公演:2026年7月31日(金)~8月1日(土) 御園座
大阪公演:2026年8月8日(金)~8月9日(土) 東京建物 Brillia HALL 大ホール
上演台本・演出:河原雅彦
訳詞:森雪之丞
出演:小池徹平・小西遼生(ダブル) 小野田龍之介・伊藤あさひ(ダブル) 美弥るりか
金色のウィッグとグリッターに全身を輝かせ、世界を熱狂させた1960年代の伝説的なグラムロックスター「ブルードット」(小池徹平・小西遼生)。ステージの上では神のように崇められていた彼だが、心の奥には誰にも見せられない深い孤独と喪失を抱えていた。彼は最後のレコーディングで、地球を去る人類へ向けた“永遠に残るメッセージ”を一枚のゴールデンレコードに刻み、太陽系を脱出する探査機と共に宇宙の彼方へと送り出す。現在に生きるグラムロッカーになることを夢見る孤独なシンガー「カイパー」(小野田龍之介・伊藤あさひ)は、古いレコードプレーヤーで偶然手に入れた一枚のレコードを再生する。針が落ちた瞬間、消えたはずのブルードットの歌声が、まるで今ここで歌っているかのように響き始めた。その瞬間、時間と空間が歪み始める。過去と現在という二つの世界をつなぐ神秘的な存在「マーマー」(美弥るりか)の導きで、二人は互いの姿を見たこともないまま、同じ歌を歌い、同じ痛みを分かち合う。レコードが回るたびに交錯する二人の人生。マーマーの手招きによって、過去と現在のステージが重なり合い、二人のロックスターは互いの姿を知らぬまま、同じメロディを歌い、同じダンスを踊り、同じ涙を流す。シンメトリーに交錯する光と音。レコードの溝に深く刻まれるたびに、二人の孤独が共鳴し、痛みが溶け合い、やがてひとつの大きな歌へと変わっていく。
小池徹平
1986年1月5日生まれ。大阪府出身。2001年「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを受賞。02年に俳優デビュー。ウエンツ瑛士と音楽デュオ「WaT」として歌手活躍も行なった。近年は圧倒的な歌唱力と演技力で、日本のミュージカル界に欠かせない存在となっている。主な出演作品:【舞台】『キンキーブーツ』(16年・19年・22年)、『1789-バスティーユの恋人たちー』(16年・18年)、『魔界転生』(21 年)、ミュージカル『るろうに剣心 京都編』(22 年)、『西遊記』(23 年)、ミュージカル『ある男』(25 年)。【ドラマ】『ごくせん(第2シリーズ)』(05年)、『医龍-Team Medical Dragon-』シリーズ(06年-14年)、『あまちゃん』(13年)、『科捜研の女』シリーズ(22 年〜)、『愛しているって、言いたい』(24 年)、『私の知らない私』(25 年)、【映画】『ラブ☆コン(06 年)、『ホームレス中学生』(08年)、『ブラック会社に勤めているんだが、もう俺は限界かもしれない』(09年)。
PHOTOGRAPHER:HIROKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI
