快活CLUBでお湯を飲む男、オードリーと過ごす日常

――具体的にはどのように書き溜めていったのでしょうか?

佐藤 最近ではnoteに記事を書き溜めておいて、後から公開していくというスタイルをとる方も多いですよね。僕も編集の方から「noteに書き溜めておいていただけたら、こちらで選びますよ」と言っていただけたので、コツコツ書き始めたのですが、気付いたら2か月で100記事くらい書いていました。そのくらいのペースでどんどん書けたんです。もっと早かったかもしれませんね。編集の方から「もう(本にするのに)十分過ぎる量なので、そんなにハイペースじゃなくても大丈夫です」とストップがかかったほどでした(笑)。1日3本くらい書いていた日もあったと思います。

――他の仕事もしながら、1日3本ですか?それはすごい熱量と集中力ですね。

佐藤 最初は1年くらいかけて仕上げるつもりだったのですが、いざ書き始めてみると、どんどん書けました。

――それだけ書きたいことが溢れていたということなのでしょうか?

佐藤 前半は特に自分の中に書きたいことがたくさんあったのだと思います。テーマもバラバラでしたので。でも、後半に入ってからは、本当に日常の何気ない出来事を書くようになりました。それでもペースが落ちなかったのは、単純に向き不向きの問題で、自分にはエッセイという形式が向いていたからなのだと思っています。エッセイは、圧倒的な知名度がない人でも勝負できる場所だと思ったんですよね。書きたいことがあって、書ける環境がある。だからこそ、今回の本にはすごく自信がありますし、手応えを感じています。何でもない日常のワンシーンが文字になっていく瞬間を味わえるのは書き手にとってとても贅沢な時間でした。毎日が最高に楽しくて、順風満帆かと聞かれると全然そんなことはないのですが、それでもエッセイを書いたおかげで、日々の生活をちゃんと営んでいるという実感をしっかりと持てるようになりました。

――そんなサトミツさんの日常のワンシーンの中で、特にお気に入りのエピソードを挙げるとしたら何でしょうか?

佐藤 そうですね。よく行く快活CLUBという漫画喫茶での話ですかね。僕の中では漫画喫茶も喫茶店に含まれているのですが、快活CLUBではよくお湯を飲むんです。よく考えてみてください。ドリンクバーやソフトクリームがある中で、お湯を飲むという行為は、あらゆる誘惑をすべて堪能し尽くした人間が行き着く、いわば最終形態じゃないですか(笑)。何でも揃っている空間で、僕は最終的にお湯に辿り着いたわけですが、お湯を飲む時、紙コップ1個だと熱過ぎて持てないので、2個重ねてみたり、時には3個にしてみたりして遊ぶ…というエッセイを書きました。このエピソードはなんか好きですね。僕のまさに「ド日常」なので。快活CLUBに通い詰めたからこそ辿り着いた、生活と日常が詰まったエッセイになったなと思っています。

――ありがとうございます。そして、エッセイにも登場していますが、サトミツさんを語る上で欠かせないオードリーのお2人と日向坂46の存在についてもお話を聞かせてください。まず、オードリーはサトミツさんにとってどのような存在なのでしょうか?「戦友」などといった簡単な言葉では言い表せないのかな?と思いますが…。

佐藤 どうなんでしょうかね…。(少し考えてから)自分では言語化しきれない部分もありますが、お互いに依存関係になり過ぎるのは良くないなとは思っています。だからこそ、オードリーの番組とは関係のない仕事もたくさん引き受けて活動しています。ただ、その距離感を保ちながらも、ここまで来るとそれももう「日常」なんですよね。仕事とプライベートの境目が、あの2人との間にはいい意味でないんです。20数年という長い年月をかけて、ここまで一緒にものづくりを続けてこられたのは、やっぱり並大抵ではない縁というか、運命的な何かがあったからなのだと思っています。これだけ長く一緒に仕事をしていても、仕事が終わった後にプライベートでも会うことができる特別な存在です。それは根底に居心地の良さがあるからでしょうし、考えていることが近いんですよね。この歳になって、そういう感覚を共有できる友達がいるというのは本当に幸せなことだと思っています。朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』の中で、喫茶店で私服のおじさん2人が大爆笑しているという描写があるのですが、実はあれは、僕と若林くんが喫茶店で大笑いしているのを見て書いたものだと、朝井さんご本人がラジオで語ってくださっていました。そういう風に笑い合える友達がそばにいるというのは、本当にありがたいことだなと改めて感じています。