ワークショップをきっかけに芝居に対する考え方が変わった

――キャリアについてお聞きします。お芝居を始めたきっかけを教えてください。

北澤 高校を選ぶ時にドラムに興味があったので、ドラムが学べる少し変わった高校を選びました。演劇、映像制作、イラスト、アナウンス、歌が必修科目で、その中のどれか1つを選ぶスタイルだったので、まあまあ興味があった演技を選びました。軽い気持ちで始めたら、それがすごく楽しくてハマってしまったんです。

――ドラムは高校入学前からやっていたのですか?

北澤 いいえ(笑)。当時、KEYTALKというバンドのドラムの方のファンで、それがきっかけでドラムを叩いてみたいと思ったのですが、学校に入ったら演技のほうが楽しくなっちゃって。ドラムも一応やってみましたが、途中で向いてないことに気づいて辞めちゃいました。今はもう叩けないです(笑)。そのあと、ギターを始めたら、ドラムよりも形になりました。

――お芝居のどういうところに楽しさを感じたのですか?

北澤 授業を受け始めた頃は、自分では大きな声を出してるつもりが「出てないよ」と言われたりして、自分が思っている自分の姿と他人から見える姿のギャップに、打ちのめされていました。でも高校2年生の時のお芝居をきっかけに、恥ずかしさみたいなものが抜けて、思い切り演じられるようになったんです。「舞台の上なら何でもできる!気持ちいい!」という感覚を味わい、そこから芝居の楽しさを感じるようになりました。

――もともと人前に出るのは好きなタイプでしたか?

北澤 めちゃくちゃ嫌いでした。昔からすごく引っ込み思案で、今も得意ではないですし、北澤響という、素の状態で出るのはすごく恥ずかしい。役に入るとそれを言い訳にして人前に出ることができるんです。

――ジャズダンスが得意だそうですが、いつ頃学ばれたのですか?

北澤 高校で科目を選ぶ際に、小さい頃から習ってきたバレエが活かせるんじゃないかと思いジャズダンスを選びました。踊ることは小さい頃から好きです。喋らなくていいので (笑)。

――ダンスは演技に活かせていると思いますか?

北澤 はい。特に舞台は体を動かして表現するので、活かせていると思います。

――高校時代に映像のお芝居の経験をしたことはありますか?

北澤 高校は舞台演技が中心だったので、映像はやってなかったですね。

――現在、所属されている事務所“ノックアウト”が主催するアクターズ・ラボのワークショップにはいつ頃から通われていたのですか?

北澤 高校在学中から通っていました。本気で俳優を目指すなら学校に行くだけじゃダメだろうと、高校3年生の時にノックアウトのワークショップに応募しました。そこで出会った人たちは年齢もバラバラで楽しかったです。ずっと同学年でばかりやっていたから刺激を受けました。

――人見知りはしませんでしたか?

北澤 しました(笑)。でも、「お芝居をしたい」という気持ちで集まっている場なので、すぐに慣れました。

――ワークショップに参加して変わったことはありますか?

北澤 高校で学んだ演劇の授業とは、全く違うことを教えてもらって、お芝居に対する考え方がガラッと変わりました。

――具体的には?

北澤 最初の授業では、歩く演技の基本を学びました。みんなの前に衝立を立てて、講師の方が手を叩いたら衝立の後ろから出て、また戻るという動作を繰り返したのですが、途中で「歩けてたと思う?」と講師の方に聞かれて。物理的には歩けているから、何でそんなことを聞くんだろうと思ったけど「また戻って」と言われて歩いたら「今、歩けてたよ」と。その時に「うわ~、本当だ!手を叩いた時に出ていく歩き方と、そこから戻る歩き方は全然違う。演劇ヤバい‼」と衝撃を受けました。ワークショップでは、普段の生活では気づかないことをたくさん教えてもらいました。

――今後やってみたいことやビジョンはありますか?

北澤 舞台も映像も、どちらももっとやってみたいので、いただいた仕事は全力でやりきって、いろんなことにチャレンジしてみたいです。

Information

『さいはて』
2023年5月6日(土)公開

キャスト:北澤響 中島歩 金子清文 美香 杉山ひこひこ 君音 内田周作
監督・脚本 越川道夫
製作:村上潔 
プロデューサー:山口幸彦 
製作:キングレコード 
制作:スローラーナー
配給:キングレコード 
宣伝:ブラウニー
©2023 キングレコード

ある日、居酒屋で知り合う若い女性モモと、40歳の男性トウドウ。夜の街で手をつなぎ、「靴が鳴る」を歌いながら歩く二人。やがて二人は互いを求め合い、身体を交わす。翌朝、昨晩の記憶をたどりながら「道行みたいだね」と語るトウドウ。その言葉の意味を理解したモモは黙って彼に泣きつく。それぞれに辛い過去を持つ二人は海を目指して、この世界から逃げる事にする。

公式サイト

Twitter

北澤響

1999(平成11年)年8月3日生まれ、東京都出身。2019年、ノックアウト主催の通年ワークショップ「下北沢アクターズ・ラボ第12期卒業公演『愛とその他』」に出演。岡山県ハレウッドムービー「ぽつり、岡山」(19年)で主役を務める。特技はジャズダンス、ギター。スキューバーダイビングのオープンウォーターダイバーの免許を持っている。

PHOTOGRAPHER:TOMO TAMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:SEINA INATSUKI(MARVEE),STYLIST:EMIKO YANO