キャリアとしても、タイミングとしてもターニングポイントになった『仮面ライダードライブ』

――キャリアについてお伺いします。この世界に入ったのは「第22回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを受賞したのがきっかけですが、どうして応募しようと思ったんですか?

稲葉 本当に勢いです。携帯で写真を撮って、必要事項を打ち込んで、応募できちゃうという気軽さもあって、じゃあ送ってみようかと。

――デビュー前から人前に出るのは好きでしたか?

稲葉 中学まではしっかりとスポーツをやって、高校も1年間だけスポーツをやったんですけども、部活自体がなくなってしまったんです。次に何をしようか考えて、高校2年生の時にノリでバンドを組みました。並行してバイトもやっていたんですが、何か楽しそうなことを探していたんでしょうね。コンテストに応募したのも、その延長線上でした。

――もともと音楽は好きだったんですか?

稲葉 好きでした。特にヒップホップを聴いていました。地元はヒップホップ文化も根付いていたんですが、かと言ってクルーでヒップホップをやろうみたいな友達は周りにいなくて。地元で何となくメンバーが揃いそうなのがバンドだったので、バンドを組んで、僕がボーカル担当でラップもやっていました。

――将来、音楽でやっていこうみたいな気持ちもあったんですか?

稲葉 それはなかったです。いつか自分も普通に就職するものだと思ってました。

――グランプリを受賞して、明確に俳優を目指したのはいつ頃ですか?

稲葉 気づいたらなんですよね。グランプリをいただいて、お声がけをいただいた中から、しっかり自分で考えて今の事務所に所属させていただいて。自然な流れで芝居をやることになったんですけど、まだ16、17歳なので何をやるにも抵抗がなかったんです。それに、やらないという選択をするほどの経験もなかったですし、芝居もやったことがないから、やってみないと分からない。それまで、そんな機会もなかったですから、そこに飛び込んでいく中で、いろいろな人と出会って、いろんな言葉をかけていただいて、そのときの状況とか、いろんな要素があって、この仕事を続けていきたいなって思ったんです。

――俳優デビューした翌年に舞台の初主演が決まるなど、順風満帆なスタートという印象があります。

稲葉 自分自身、恵まれた環境でやらせてもらっているなという実感はありました。

――俳優としてターニングポイントになった作品を一つ挙げるとしたら何でしょうか。

稲葉 多くの方に知ってもらったという意味では、『仮面ライダードライブ』(テレビ朝日)が大きかったですね。それまで演劇のお仕事が中心で、すごく舞台は楽しいけど、自分の名前でお客さんを呼べる訳ではない。どうやったらお客さんに来てもらえるのか、いろいろ考えてやるんですけど、なかなか実を結ばない。自分が間違いなく面白いと思う作品に出ているのに、お客さんで埋められない悔しさがあったんです。そんな中で、幅広い世代に愛されていて、30分という時間で1年間を通して放映される「仮面ライダー」シリーズに出演できたら状況は変わるんじゃないかと考えていて。そのタイミングであったオーディションだったので、「絶対に勝ち取ろう!」と思って挑んで、ご縁があって出演させていただきました。すごく貴重な経験をさせてもらいましたし、キャリアとしても、タイミングとしてもターニングポイントになった作品です。

――俳優の仕事でやりがいを感じるのはどんなときでしょうか?

稲葉 たとえば撮影現場で、みんなが同じ感覚を共有したときですね。自分の中だけとか、演じた相手同士だけとかじゃなくて、「今の良かったね」って現場全体に共有される瞬間はやりがいを感じます。出演作品を評価していただいたときや、舞台挨拶とかでお客さんの前に立ったときも、やりがいを感じますね。今回の映画にしても、あっちゃんと撮影現場で再会できて、この仕事を続けてきたことの意味や、あのときがあったからこそ今があるということを強く感じましたし、いろいろな場面でやりがいを感じられています。

Information

『よっす、おまたせ、じゃあまたね。』
2023年6月16日~6月22日まで、渋谷シネクイントで一週間限定レイトショー
2023年6月23日より全国順次公開

監督・脚本:猪股和磨
出演:橋本淳、稲葉友、安倍乙、森高愛、マメ山田、入江雅人、千葉雅子、中村まこと
配給:SPOTTED PRODUCTIONS

30歳を過ぎて家に引きこもりゲームばかりやっている青年・ちばしん(橋本淳)。ある日突然、目の前に現れた小学生時代の友人・ながちん(稲葉友)。彼に引っ張られて、理由も分からず彼の思い出の地を廻ることになり、ちばしんは戸惑いながらも車を走らせるが……。

公式サイト

Twitter

稲葉友

1993年1月12日生まれ、神奈川県出身。2010年、ドラマ「クローン ベイビー」(TBS)にて俳優デビュー後、数々のドラマ、映画、舞台に出演。近年の主な映画出演作に、『春待つ僕ら』(2018)、『この道』(2019)、『シライサン』(2020)、『ずっと独身でいるつもり?』(2021)、 『恋い焦れ歌え』(2022年)などがある。MBS/TBSにて放送中の『明日、私は誰かのカノジョ2』に出演中のほか、7月25日22:00~放送スタートのNHKドラマ10『しずかちゃんとパパ』に出演。毎週金曜11:30~生放送中のJ-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』にてナビゲーターを務める。

PHOTOGRAPHER:YUTA KONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI