メジャーに行ってもクリエイティブに対するストレスが一切ないので幸せ
――前作『START』から1年という短いインターバルでMajor 1st Full Album『ザ・ライト』をリリースしますが、今年2月にEP『絶』も発表していますし、ハイペースで新曲をリリースされていますね。
SKRYU ワンマンや次のツアーを打つときに、新しいものを持っていきたいということを続けてきたので、自分の首を絞めているというか、このような形になってしまいました。過去に調子をこいて、「楽曲はラッパーにとって呼吸みたいなもの」と言ってしまった手前もあります(笑)。あと僕は平成8年生まれで、ラッパーとして中堅クラスになってきて、汗臭い意見ではありますが、常にやっていることが重要というポリシーもあります。どれだけキャリアを積んでもガンガン出し続けたいですし、マグロバイブスで止まったら死ぬと思っています。

――曲のアイデアは尽きないものですか。
SKRYU 正直、今回の『ザ・ライト』に関しては、今までで最もスパンが短い中で作ったアルバムで、1ヶ月ちょっとという光の速さで作ったので全然ネタがなくて。生みの苦しみを書いた曲もありますし、スターとしての有頂天の気持ちから、曲が書けなくなる葛藤まで、心の揺れ動きが幅広くある人間くさい作品になっています。
――アルバムタイトルはどのようにつけたのでしょうか。
SKRYU 僕はアルバムタイトルをつけるときも急ピッチで、何も考えられないくらい忙しい最中にいることが多いので、もっと練りたい気持ちもあるけど、そのときの生の感情、ツアーを回っているときに思ったことなどをそのままタイトルにするんです。僕はスターを自称していて、常に輝きたいと思っていますが、輝くということは輝かされるってことで、みんなの目線が僕を光らせてくれることに気づいたんですよね。また裏テーマとして、「You Are The Light~あなたが私にとっての光ですよ~」という意味も込めて『ザ・ライト』にしました。
――メジャーに行って、曲作りに対する変化はありましたか。
SKRYU 曲作りに関しては、さほどないと思っているんですが、一番変わったのはアーティスト・SKRYU本人の心の持ちようです。たくさんのプロフェッショナルが、僕に関わってくださっているという事実が、もう恐ろしくて。僕がとちれば、全員が足踏みをしてしまう。僕のミスがとんでもない損失を生んでしまう可能性があると考えたら、迷惑をかけてはいけないという責任感も強くなります。どのスタッフさんも優しいので、その人たちの期待に応えたいと思うようになりました。
――クリエイティブの部分では、メジャーになって表現の制限を感じることはないのでしょうか。
SKRYU ありがたいことに、僕がインディーズでやってきた表現を認めてくださっているので特にないですし、下ネタの制限もないです(笑)。何か言われたらクリーンなものを作る覚悟はあるんですけどね。逆に「こういう表現があっても大丈夫ですか?」と僕がアドバイスを乞うくらいで、クリエイティブに対するストレスは一切ないので幸せですね。歌い方に関しても、みなさんが「もっと良くなるんじゃないか」とメジャーレーベルの目で見てくださるので助かっていますし、いいこと尽くしです。
――もともとラップも歌も多彩な表現力をお持ちですが、さらに深まっていると。
SKRYU レコーディングに立ち会ってくださる人も増えて、歌唱のアドバイスもたくさんいただくので、自分だけだったら気づかなかったことに気づけるんです。たとえばピッチさえ合っていれば、どんな歌い方でも綺麗に歌えばいいやと思っていたのが、「強いところとしんみりするところは声量を変えたほうがいいよね」というような、以前は気にしなかったところをメジャーの観点で指摘してもらえる。ラッパーに対するアドバイスとは思えない、スキルフルな試練を与えてくれるのが新鮮です。ボイトレはメジャーに行く2年前くらいからやっているんですが、それが生きているな、やっていて間違いないなと実感する毎日です。これからメジャーのトップ・アーティストと戦うためには、メロディーラインの歌い方、表情のつけ方も大事になってくるので、突き詰めていかなきゃいけないなと再確認したタイミングで、『ザ・ライト』という作品になりました。
――1曲ずつお話を伺いたいんですが、1曲目は「ハイブランド」のRemixに続いてサーヤさんをフィーチャリングした「ハヤスギテミエナイ (feat. サーヤ)」です。
SKRYU そんなに僕はフィーチャリングをお願いすることはないんですけど、メジャー1発目のフルアルバムということで誰かを呼ぼうと考えたときに、真っ先に浮かんだのがサーヤさんで。僕なんかよりも多忙なのはもちろんですが、この曲をオファーしたときのサーヤさんは「礼賛」のツアーがあって、ラランドの単独もやっていて、曲どころじゃなさそうなスケジュール感だったんです。ところがオファーをして、曲を聴いてもらった次の日には「リリック書けたよ」と連絡があって。そこから多少の手直しはあったものの、2週間ぐらいでレコーディングまでいったので、まさにハヤスギテミエナイと。
――サーヤさんはリリックも凄まじいクオリティですよね。
SKRYU 先に僕がリリックを書いて、入れてほしい場所を開けておいたんですが、サーヤさんがすごいところは、ちゃんと僕のバースを拾ってくれて、それに対応したワードを入れたりしてくれるんです。第一職種はラッパーではないものの、ヒップホップマナーの捉え方が素晴らしくて、本業のラッパー顔負けのフロウを、まさに光の速さでいただけました。
――2曲目は先行シングルの「キラキラ・ドッパミン・ジュッジュワー」。
SKRYU maeshima soshiさんからビートをいただいたときに、アルバムのメインどころになるなという直感がありました。スターとしての輝きを歌いたかったんですが、都会の空に星は見えないけれども、そんな街でスターになるよ、みたいな。過去にスターを夢見て、川辺から星になりたいということを書いた曲があったんですが、どんどん星の位置が上昇していって、空で光って、次はどこに行くかといったら、もう宇宙しかないだろうと。星と宇宙と煌めきで曲を書けないかなと考えていたら、僕は鼻歌からメロディーラインをあてがっていくことが多いんですけど、降ってきた鼻歌がそのまま「キラキラ・ドッパミン・ジュッジュワー」に聴こえたんです。これって俗に言う宇宙語みたいだなと思って、そこから宇宙が広がっていきました。リリックを書いているうちに、サブテーマが浮かんで。社会に出て、人間関係で悩んだときに、「もしかしたら自分はエイリアンかもしれない」と思った経験がある人もいるかと思いますが、僕自身がそうだったんです。だからそうやって自分をエイリアンと思ってしまう、すべてのファイターに向けて、みんなを誘拐したいという気持ちを込めて、まるでSKRYUのUFOに乗っているかのような、おしゃれで踊れる曲になっています。
――skitを挟んでの「ウォーター・メロン」は、『START』収録の「Summer Breeze」に続く、アーバンなサマーチューンです。
SKRYU 実は夏って一番嫌いな季節なんです。嫌いだからこそ、この曲を書いたところがあって、サマーチューンを書くときは完全にフィクションです。
――シークレットビーチでの淫らなやり取りを描いていますが、自分の日常を書いたわけではないと。
SKRYU エッチなお姉ちゃんと一緒にいて、“リコピンレッドの唇と”“緑のボーダービキニと”みたいなのは完全に脳内で作り上げたファンタジーです。見たことないものを本当にくだらない、バカみたいな歌詞の応酬で書いていて、自分でも恐ろしいくらいなんですが、アルバムで一番と言っても過言ではないくらい好きな曲です。特に“ヨコシマ☆ダイナマイト”というフレーズが出てきたときは、我ながらすごいなと思って。夏の歌というのは思考を止めて、バカポイントの加点式で作るんだなと気づきました(笑)。
――「カップリング」はDJ PMXさんとの共作です。昨年、DJ PMXさんの「Light it up」という曲に、AK-69さんとともに参加されていますが、そのときのご縁でしょうか。
SKRYU 以前に「Grand Prix」と言う楽曲も提供いただいてたのですが、DJ PMXさんは僕のことを買ってくださっていて、「Light it up」にも呼んでくださったんですが、僕にとってはとんでもないドリームマッチ。AK-69さんのスタジオに集まって、一緒に録ったんですが、めっちゃ緊張しました。机の上にブッといブリンブリンのネックレス・チェーンが置いてあって、「すごいですね!」と感心していたら、AKさんに「ブランドはアバランチ(AVALANCHE)なんだけど買ったほうがいいよ」と言われたんです。後日、同じブランドを買ったんですが、それがアルバムのジャケットでつけているネックレス・チェーンです。
――「カップリング」はDJ PMXさんらしいメロウなトラックに、クラブで知り合った女性に惹かれていく様をロマンティックに綴っていきます。
SKRYU ビートを聴いた瞬間、クラブのギャルチューンだな、浮ついたことを歌ってみようと思ったんです。ただ、僕は直球の恋愛を歌ったことがないので、やっぱり何かに例えたい、エッジを利かせたいという発想で、カップリングをA面・B面の関係にして、表裏一体で重なり合いたいみたいな内容にしました。僕のメロディーラインはDJ PMXさんがディレクションしてくださったんですが、レンジを抑えてほしいという指示でした。すぐに僕は突き抜けたメロディーに行きがちなんですけど、この曲はファルセットも使っていないですし、レジェンドのビートに乗せてもらって、新たな挑戦となる1曲でした。
――DJ PMXさんの楽曲でも異色ですよね。
SKRYU これまでDJ PMXさんがフィーチャーしてこなかったタイプのナードなラッパーとやったらこうなった、みたいな(笑)。
