腐った植物を見たときに、報われない思いを終わらせようと思った

――カップリングの「パキラ」についてもお聞かせください。こちらはASCAさんが作詞を担当されていますが、曲先ですか?

ASCA 実は初めて詞先で作りました。今まで自分で作詞する場合は、デモがあって、そこにパズルのように言葉を埋めていくという作業だったんですけど、今回は真っさらなところから書いてくださいと言われたんです。

――ご自身で詞先を提案されたわけではないんですね。

ASCA 打ち合わせのときに、「自分で詞を書きたいです」と言ったら、スタッフさんが「じゃあ詞先で書いてみるのはどうですか?」と提案してくれて、ずっとやってみたかったんですよね。曲が先にあると型にはめていかなきゃいけないところがあるんです。制約がない中で歌詞を書いてみたいというのは漠然と思っていたので、「いいんですか?ぜひやらせてください」ということで始まりました。

―― 自由だからこその難しさもありますよね。

ASCA めちゃめちゃ難しかったです。結局、1番の歌詞は自由に書けるんだけど、1番に合わせていかないといけないので、2番からの歌詞は制約が生まれる。そういう意味では、曲先で詞を書くということをたくさんやらせてもらってきてよかったなと思いましたし、それを生かすことができました。最初は自由だと思っていたけど、たとえば1行の中で五・七・五と決めたら、その文字数に沿って書いていくとか、自由なようで自由じゃなかったというのが自分の中で面白くて。何文字にするかは自分で決められる、言葉も無限にある、だからこそ何を当てはめていくかは時間がかかりました。

――作詞をする上で、なんとなく曲調は想定していたんですか。

ASCA 曲調は全く考えずに、まずは世界観を自分の中で固めていって。かつて経験してきた、解決しなかった絶望とか悲しみみたいなものを並べていこうというところで進めていきました。パキラというのは観葉植物で、枯れないと言われているんです。自分で育てたことはないんですが、いろんな人が育てていて、すごく育てやすいという情報だけは知っていました。過去に私は違う植物を育てていて、水をあげすぎて腐らせてしまったことがあるんです。手塩にかけて育てたのに、過保護にしたことで腐らせてしまった。その腐った植物を見たときに、私の報われない思いも、もう終わらせようと思ったんですよね。

――まさに恋愛のような。

ASCA そうなんです。植物が終わりのタイミングを教えてくれることがあるんだなと思って、いつか書きたいテーマだなというのはずっと自分の中にあったんです。それで詞先で書いてみませんかという提案に加えて、「ASCAさんの楽曲は最終的に希望をくれるけど、希望などない、絶望のまま終わってしまう歌詞を書いてほしい」という依頼もいただいて。自分が持っている絶望って何だろうと考えたときに、腐った植物を思い出して、それが元のネタとなり、肉付けをして作っていったのが「パキラ」です。

――トラックはどのように決めたのでしょうか。

ASCA 歌詞は絶望を歌っているけど、曲調はポップ。その対比があることで、より言葉が届いていくようにしたいというリクエストで、各作家さんに10曲くらいデモを作っていただいて、そこから私とスタッフさんで選びました。ただ、最終的に私が選んだデモは誰とも意見が合わなくて、私だけがこれを選んだんですよ(笑)。スタッフさんからは、「作詞家として、どんなメロディーに乗せたいか見えているものがあるのであれば、それを尊重するべきだ」と言ってもらいました。歌詞を書いている最中に、作詞のやりとりをさせてもらっていた音楽ディレクターの角田(崇徳)さんから、「もしも思いついたメロディーやフレーズがあったら、ボイスメモでもいいので送ってほしい」と言われたのですが全く思いつかなかったんです。でも、このデモを初めて聴いたときに「これかもしれない」という直感があって、このメロディーに自分の歌詞を乗せたいとシンプルに思えたんですよね。

――レコーディングはいかがでしたか。

ASCA 難しかったですね。自分で書いた歌詞って、いろんな感情がくどいぐらい入っていっちゃうんですよね。角田さんからも「自分で歌詞を書いているわけだから、もっと素直に自分の声を信じて歌うだけで、ちゃんと伝わるはず。表現を濃くしないで聴かせてほしい」と言ってもらって、ハッとしました。引き算という作業をしていく段階で難しさから抜け出して、入れたい表現は入れつつ、くどい部分はストレートに歌いつつという、いいあんばいを探ることができたと思います。

――レコーディングで感情が入り過ぎてしまうことは過去にもあったんですか。

ASCA めちゃくちゃありますね。ただレコーディング以上に指摘されるのはライブです。デビュー当時にリリースした曲を何回も何回も歌っていると、どんどん表現が濃くなっていって、濃くなりすぎたがゆえに、ずっとタイミングがずれているみたいな。感情を込め過ぎてタイム感についていけなくなることが結構あったんです。でも、ちゃんと周りの人が、「もうちょっとシンプルに届けていいんじゃないか」と指摘してくれるので、客観的な意見をちゃんとくれるチームでとてもありがたいです。